岡山・新見市の温泉施設で、60代女性従業員が2年近く売上金を着服。入浴料をレジを通さず懐に入れていた行為が防犯カメラにより発覚。管理者は示談を検討しており、被害届は提出されていない。施設の信頼と再発防止策が問われている。
レジ通さず着服
温泉施設の不正
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「まさか、あの温泉で…」
岡山県新見市の人々にとって、憩いと癒やしの場だった神郷温泉。
その裏で、信じられない不正が静かに行われていた――。
見出し | 要点 |
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着服が起きた場所は? | 新見市神郷温泉のフロント受付 |
発覚のきっかけは? | 防犯カメラによる不審な動きの確認 |
どんな手口だった? | レジを通さずに入浴料を直接着服 |
市と管理者の対応は? | 被害届は出さず示談を検討中 |
なぜ温泉施設で着服が起きたのか?
着服が発覚した経緯とは?
新見市が設置した「グリーンミュージアム神郷温泉」は、地域住民の憩いの場として長年親しまれてきた。しかし、2025年4月、施設の運営担当者がふと防犯カメラの映像を確認したところ、ある60代女性パート従業員の“異常な手の動き”が映し出されていた。レジを操作するふりをしながら、現金をポケットに入れるような動きが複数回記録されていたのだ。
市と指定管理者である「Tikiナビトラベル」が共同で調査を進めた結果、2023年7月から2025年4月までの約2年間にわたって、同従業員が入浴料の一部をレジを通さず着服していたことが明らかになった。まさに“信頼”の裏切りであった。
従業員の動機や背景は?
この女性従業員は、市の聴取に対して着服の事実を全面的に認めている。市の発表によれば、従業員は「金銭的に困っていた」と説明しているが、詳しい動機や家庭状況などの背景については明らかにされていない。
同施設では複数のパート従業員がローテーション勤務しており、管理の目が行き届きにくい時間帯や人員構成も重なっていたと考えられる。現金精算が多い公共施設ならではの“ゆるさ”が、長期的な着服を可能にしてしまった可能性もある。
他の自治体では?
実はこうしたケースは新見市に限らず、全国の温泉施設や道の駅などの“地域型指定管理施設”で多発している。類似事件の多くで共通しているのは、「指定管理者のチェック体制が甘い」「帳簿と現金の突き合わせが不十分」といった、管理上の構造的な欠陥である。
全国の温泉施設で起きた同様の着服事件
従業員の行動と管理側の盲点
施設のフロントでは、毎日のように入浴料を手渡しで受け取る。この手続きが現金主体であること、また、少額ずつの売上が多く記録される施設特性が、着服を“見えにくく”していた。
例えば一日数百円のズレがあっても「計算ミス」として処理されがちであり、帳簿と現金の照合も“ざっくりとした”日次集計で済まされていたという。カメラ映像によりようやく不審な行動に気づけたという現実は、施設の管理体制がいかに形式的だったかを物語っている。
さらに、被害額が明確にされていないこと自体が、市や管理者側の“内部調査の限界”を示唆しているとも言える。
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着服は「現金管理の甘さ」から生まれる
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少額なら発覚しづらい「積み重ね型の手口」
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指定管理施設では防止策が形骸化しやすい
市と指定管理者はどう対応したのか?
新見市はこの件を受けて、指定管理者である「Tikiナビトラベル」に対し詳細な報告と再発防止策の提出を求めた。市は「信頼回復に向けて速やかな対応が必要」としつつ、現時点では指定管理契約の即時解除などには踏み込んでいない。
一方、Tikiナビトラベルは着服を認めた従業員との間で示談を検討中としており、刑事告訴は行わない方針である。従業員本人が返済の意思を示していることを理由にしているが、施設の利用者や地域住民からは「曖昧な処理で済ませるのは納得できない」との声もある。
市と管理者双方にとって、今回の事件は「信用」を揺るがす出来事だった。実際、指定管理制度とは自治体が民間に運営を委託する仕組みであり、その信頼性が損なわれれば制度全体への不信にもつながる。したがって、今回の対応は今後の制度維持に大きく影響する試金石ともいえる。
責任の所在と説明責任は?
新見市の説明によれば、「指定管理者が業務の実施に責任を持つ立場」であり、今回のような金銭トラブルが発生した場合も、まずは指定管理者が適切に対応すべきとされる。ただし、公的施設である以上、市にも監督責任があることは明白だ。
指定管理者任せにせず、自治体が第三者的な立場で監査・報告を強化していく仕組みが必要とされる。再発防止策が形式的な文書だけで終わるようであれば、利用者の不安は残ったままだ。
市の対応が問われた過去の事例
2021年に岡山県内の別の温泉施設でも同様の着服事件が発覚し、その際には管理団体の代表が記者会見を開き謝罪、1年間の休業を余儀なくされた事例がある。
この時も市側の監査不足が批判され、後に外部監査制度が導入された。今回の神郷温泉の事例もまた、自治体の監査体制を問うケースとして類似している。
指定管理者制度における責任の流れ
【来館者が入浴料支払い】
↓
【フロントで従業員が受付】
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【レジ入力せず着服 → 防犯カメラに映像残る】
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【施設責任者が内部調査 → 市に報告】
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【市が指定管理者に再発防止要請】
↓
【刑事告訴は行わず示談協議へ】
見出し | 要点 |
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従業員の着服手口 | 入浴料をレジ入力せずに現金を抜き取る手法 |
発覚のきっかけ | 防犯カメラの映像確認で不審な動きが判明 |
市の対応 | 指定管理者に再発防止策を求め、契約継続へ |
指定管理者の動き | 従業員と示談を検討し、告訴は行わない方針 |
地域と信頼の再構築は可能か?
温泉施設の信頼は回復できるか?
今回の事件により、「神郷温泉=安心・安全の場所」という地域住民の認識は一時的に揺らいだ。中でも常連利用者や高齢者層からは、「これまで気にせず通っていたのに…」という不安の声が少なくない。
信頼回復には、単なる謝罪や示談では不十分である。重要なのは“今後の見える改善”であり、たとえば入浴料のキャッシュレス決済導入や帳簿の透明化、施設利用者へのアンケート公開など、可視化された対策が求められている。
温泉という公共空間に対して、「また安心して行ける」と感じてもらえるには、“制度面+感情面”の両軸で信頼を再構築する努力が必要だ。
透明性と仕組みの再設計とは?
市民が税金で支える公共施設において、運営体制がブラックボックス化することは、本質的なリスクである。今回の件も、“誰が、いつ、いくらを扱っているのか”という業務の見える化が不足していたことで、着服の温床となった。
指定管理制度自体を否定するのではなく、制度を活かしつつ「透明化の技術」と「外部からの視線」を取り入れることが肝要だ。例えば、毎月の売上報告を市のサイトで公表する試みや、利用者モニター制度など、参加型の監視構造も有効とされる。
このような再設計は一朝一夕ではできないが、危機を契機に組織や制度を“更新”していくことが、地域全体の信頼回復への第一歩となるだろう。
信頼とは何か、それを問い直す事件だった
昔、ある知人が言っていた。
「信頼ってやつは、積み上げるのに何年もかかるくせに、崩れるのは一瞬だ」と。
神郷温泉で起きたこの着服事件も、まさにそうだった。小さな町の静かな湯の香りの中で、人々は安心とぬくもりを買っていた。そんな場所で、レジを通さずに金を抜き取る行為は、単なる金銭の問題ではない。これは“空間ごと裏切った”ということだ。
だが、私たちはすぐに誰かを断罪し、過去を切り捨てようとする。「なぜやったのか」「どうして気づかなかったのか」「誰の責任か」と。
しかし本当は、こう問うべきではないだろうか。
――その構造を許してしまっていたのは、他でもない“私たち全員”ではなかったか?
便利さ、委託、民間活用。あらゆる正論の中で、「目を離すこと」への慣れが日常になっていた。
温泉施設だけではない。病院、学校、交通、すべての「公共」がこの問いの只中にある。
信頼とは、制度で作るものではない。見えないけれど、毎日どこかで誰かが“正しくあること”を信じることでしか成立しない。
だからこそ、問いは残る。
私たちはこれから、どんな信頼のかたちを築いていけるのか?
事件の全体像と今後の論点
見出し | 要点 |
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事件概要 | 温泉施設の従業員が入浴料を着服していた |
発覚の流れ | 防犯カメラの映像で不審な行動が明らかに |
管理側の対応 | 示談を検討しつつ、市は再発防止を要請 |
信頼再構築の鍵 | 可視化された管理と市民参加型の運営体制 |
❓FAQ
Q1. この温泉施設は現在も営業しているの?
A1. はい。神郷温泉は通常通り営業しており、事件後も施設の利用に制限はありません。
Q2. 従業員は逮捕されたの?
A2. 現時点では逮捕されていません。返済の意思があるため、刑事告訴はされていません。
Q3. 市の責任は問われないの?
A3. 市にも監督責任はあります。再発防止策の強化と報告義務の見直しが進められています。
Q4. 他の公共施設でもこうしたことが起きているの?
A4. はい、全国でも類似の着服事件が発生しています。特に現金管理のある施設では共通課題です。