島根県出雲市の保育園で、1歳の園児が駐車場内で車にはねられ死亡。JAFは死角の危険性と「かもしれない運転」の重要性を指摘する。小さな命を守るために、私たちは何を見落としているのか。制度・設計・意識改革の必要性を問う。
保育園駐車場
1歳児死亡
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なぜ1歳の園児がはねられたのか？
園児と死角の高さ
| 項目 | 高さ |
|---|---|
| 園児（1歳平均身長） | 約70〜80cm |
| カラーコーン（目印代用） | 約70cm |
| 運転席からの死角範囲 | 約1m以内に死角あり |
いつ・どこで起きた事故なのか？
2025年6月2日朝、島根県出雲市斐川町富村の保育園の駐車場で、1歳の男の子が前進発進した乗用車にはねられ死亡する事故が発生した。事故は午前7時55分ごろに起き、男児はその後病院に搬送され、午前9時24分に死亡が確認された。
逮捕されたのは、市内在住の38歳の女性介護士。送迎のために保育園を訪れていたとされるが、事故の詳細な経緯や前後関係は現在も警察が調査中である。
車の死角とはどれほど危険なのか？
JAF鳥取支部が公開した映像によれば、乗用車の前方には約70センチのカラーコーンが置かれていたにもかかわらず、運転席からは何も見えないように見える。つまり、この高さに園児がいたとしても、ドライバーには視認できない可能性があるという。
1歳児の平均的な身長は約70〜80センチ。まさに車の前方死角にすっぽりと隠れてしまうサイズだ。小さな子どもが「見えていなかったから事故になった」では済まされない現実がそこにある。
保護者や運転者は何を見落とすのか？
保育園という「子どもが多い場所」であるにもかかわらず、発進前に周囲を一周確認する「乗車前確認」が行われていなかった可能性がある。また、園児が突然動くという“予測できない行動”への意識が薄れていたのかもしれない。
死角を完全にゼロにすることは難しいが、「そこに誰かいるかもしれない」という意識を持って運転することが、唯一の防止策に近い。JAFが提唱する「かもしれない運転」は、まさにそのための思考法である。
JAF鳥取支部の鈴木悠一郎氏は、「カラーコーンの高さは、実際の園児の身長とほぼ一致するため、非常に有効な可視化手段となる」と語っている。ドライバーが自らの死角を認識し、乗車前に確認を徹底するだけでも、多くの事故は未然に防げると指摘している。
どのような対策が必要なのか？
JAFが提唱する具体的な対策とは？
JAFは運転前に車の周囲を一周する「乗車前確認」と、常に危険を想定する「かもしれない運転」の2点を提唱している。特に子どもが多く集まる保育園や学校周辺では、「見えないからこそ疑う」姿勢が事故を防ぐカギとなる。
また、子どもが車の周囲にいることを想定し、アクセルよりもブレーキを意識して準備しておくことが勧められている。
保育施設の環境は改善できるのか？
保育園の駐車場そのものにも問題がある。送迎時間帯には一斉に車が集中し、園児が自由に歩ける動線と車両の動線が混在している施設も少なくない。
施設によってはカラーコーンや柵で通路を仕切るなどの工夫がされているが、送迎の利便性ばかりが重視され、安全対策が後回しになっている例も見受けられる。
海外との比較／日本の盲点は？
オーストラリアやカナダでは、保育施設周辺に「ドライブスルー送迎ゾーン」が設けられ、保護者は車から降りずに職員が園児を受け取る方式を採用している。
日本では「対面・手渡し」が前提となっているが、死角や動線の重なりを防ぐシステム面での工夫が遅れているのが現状だ。
制度面での整備も喫緊の課題である。例えば、保育施設の設計段階から「車が園児の動線に入らない構造」にすること、ドライブレコーダーやアラートセンサーなどの技術導入の助成制度なども必要とされている。
事故の要因と対策
① 駐車場に車を停める
↓
② 周囲を確認せずに前進発進
↓
③ 死角内の園児に衝突
↓
④ 事故発生（死亡）
↓
⑤ JAF：乗車前確認＋かもしれない運転の徹底を提言
園児の目線からの世界
もし彼に声があったなら、こう言うかもしれない。
「見ててほしかった。ここにいるよって、誰かに気づいてほしかった。」
小さな命に“声”はなくても、沈黙の訴えはある。
私たちはこの悲劇をどう受け止めるか？
社会は、いつまで“想定外”という言葉で済ませるつもりだろうか。
目の前にいる子どもが「いるかもしれない」ことを前提に運転する覚悟が、なぜこれほどまでに軽んじられるのか。
JAFが繰り返し訴える「かもしれない運転」は、何も特別な技能を必要としない。ただ、想像力と責任感だけが求められる。
制度や設計の不備、施設運営側の怠慢、そして何よりドライバー自身の過信が、この事故を生んだ。
それを認めた上で、問い直すべきは「私たちが日常で見落としているもの」そのものである。
【FAQ】
Q1.「かもしれない運転」とは何ですか？
→ 目の前に人がいる“かもしれない”、飛び出してくる“かもしれない”と常に危険を予測して行動する運転のことです。
Q2. 車の死角はどこに多いのですか？
→ 一般的に前方1メートル以内・左右の下方・後方直下が死角です。身長70〜80cmの園児は見えなくなります。
Q3. 保育施設にできる対策はありますか？
→ 動線分離、送迎ゾーンの再設計、職員による誘導、カラーコーン設置などが有効です。
