低緯度オーロラとは?
山梨の空に赤い光
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夜の闇を照らす幻想的な現象が、まさか日本で目撃されるとは――。
2025年6月2日未明、山梨県北杜市の夜空に突如として現れた“赤いベール”が、全国の天文ファンを驚かせました。これは、専門家によると「非常に珍しい低緯度オーロラ」だと考えられており、自然の神秘と宇宙の息吹を私たちに改めて思い出させてくれる出来事となりました。
山梨で観測された“赤いベール”とは何か?
どこで、いつ起きたのか?
2025年6月2日午前0時20分ごろ、山梨県北杜市大泉町にて、写真家・池野那由太さんが撮影した1枚が注目を集めました。その写真には、満天の星空を横切るように、うっすらとした赤いベール状の光が映し出されていました。
現象はわずか10分ほどで消えてしまったといいますが、SNSや天文ファンの間で「これは低緯度オーロラでは?」との声が急速に広まり、専門機関も調査を開始しました。
なぜ「オーロラ」と判断されたのか?
この“赤いベール”は、一般的な緑色のカーテン状オーロラとは明らかに色味が異なり、縦に揺らめくのではなく、空全体を薄く覆うような広がり方をしていました。この特徴こそが「低緯度オーロラ」の典型的な現れ方であり、かつて日本で観測された記録と一致します。
通常のオーロラとの違いとは?
北極圏など高緯度地域で見られる一般的なオーロラは、酸素分子が高高度で放出する緑色や青白い光が主体です。一方、低緯度オーロラは、より高い高度での酸素励起によって“赤色”が強くなるとされ、見られる地域も限定的。日本国内での確認例は過去にも数件しか報告されていません。
オーロラの定義と過去事例
オーロラとは、太陽から放出された荷電粒子(太陽風)が地球の磁気圏と相互作用し、大気中の原子や分子と衝突することで光を放つ現象です。特に活動が活発な時期には、極地を超えて中緯度や稀に低緯度地域でも観測されることがあります。
実際に、過去には1989年のカナダでの大停電や、2003年の「ハロウィーン太陽嵐」の際にも、アメリカ南部や日本でもオーロラが確認された記録があります。今回の山梨での出現は、そうした歴史的現象と並ぶ希少なケースとなる可能性があります。
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赤いオーロラは「酸素原子の557.7nm放射」が主原因
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高度250km以上でしか発生しないため、地平線近くに見えることが多い
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SNSでは「赤い空は火災かと思った」との声も
一般的なオーロラと山梨の“赤いベール”
項目 | 一般的なオーロラ | 山梨で観測されたオーロラ |
---|---|---|
色 | 緑・青・紫 | 赤(暗赤色) |
見られる場所 | 北極圏・南極圏 | 中緯度〜低緯度(極めてまれ) |
継続時間 | 数時間〜一晩 | 約10分 |
発生高さ | 約100〜150km | 250km以上 |
原因 | 太陽風×磁気圏 | 大規模フレア+磁気嵐 |
なぜ山梨でオーロラが見えたのか?
原因は「5月31日の大規模フレア」
今回の“赤いベール”の発生は、2025年5月31日に起きた大規模な太陽フレア(MまたはXクラスと推定)による影響と見られています。
このフレアによって放出されたコロナ質量放出(CME)が6月1日〜2日に地球に到達し、地球の磁気圏を揺らすことで、低緯度にもオーロラ現象が波及しました。
情報通信研究機構(NICT)の久保副室長によれば、「このレベルの磁気嵐が日本列島中部に影響するのは極めて珍しく、記録に残すべき現象」と語っています。
太陽活動の「極大期」とは?
2024年から2026年にかけて、太陽活動は11年周期の“極大期”を迎えています。
この期間中はフレアやCMEの発生が増え、通信障害やGPS誤作動、そして低緯度オーロラのような珍しい現象が起こりやすくなります。
【太陽活動からオーロラ観測までの流れ】
太陽フレア発生
↓
コロナ質量放出(CME)
↓
地球磁気圏に到達(約1~2日後)
↓
磁気嵐が発生
↓
高緯度だけでなく中・低緯度にも影響
↓
赤い低緯度オーロラが観測されることも
多くの人にとって、「オーロラ=北欧やカナダ」というイメージが強いかもしれません。しかし、今回の山梨での観測が示したように、“宇宙の影響”は私たちのすぐそばにも届いているのです。
何気なく空を見上げたその瞬間に、思いがけない自然現象に出会えるかもしれない。そんな好奇心の火を絶やさず、今後の太陽活動の動向に注目してみてください。
オーロラ出現が意味するものとは?
赤の光は、遠い宇宙と私たちをつなぐ
低緯度の夜空を染めた赤い光――それは、ただの物理現象ではなかった。
ふだん私たちは、宇宙を「遠い存在」として扱いすぎていないか。人工衛星や火星探査のニュースが流れても、自分ごとにはなりにくい。しかし、空を見上げれば、宇宙は音もなく私たちの頭上に広がっている。
山梨の空に一瞬現れた赤いベールは、“宇宙の息吹”の一部だった。光速の世界と、私たちの1分1秒が、そこで繋がっていた。それを見上げた人だけが得られる感動がある。
だからこそ、今夜も少しだけ外に出て、星空を見てほしい。もしかしたら、あなたの空にも何かが訪れるかもしれないから。
見出し | 要点 |
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山梨の赤い光の正体 | 低緯度オーロラと考えられる自然現象 |
原因は太陽フレア | 5月31日のCMEが地球磁気圏に影響 |
今後も見える可能性 | 極大期のため2026年まで再発あり |
日常とのつながり | 宇宙現象が身近にあることを実感できる機会 |
❓FAQ
Q1. なぜ赤いオーロラなのですか?
A. 酸素原子が高高度(250km以上)で励起されると赤い光を放つためです。
Q2. 次はどこで見られる可能性がありますか?
A. 太陽活動が活発な時期は、本州中部・北日本などでも低緯度オーロラが発生する可能性があります。
Q3. 肉眼でも見えましたか?
A. 現地では肉眼ではうっすらとしか見えず、カメラでの長時間露出でより鮮明に記録されました。
Q4. 危険性はないのですか?
A. オーロラ自体は無害ですが、強い磁気嵐は通信機器やGPSに影響を及ぼす可能性があります。