日本電子書店連合が、性的描写を含む電子コミック広告の配信を全年齢向けサイトで停止。JAROへの苦情が急増し、2025年4月に業界11社が対応を決定。広告の倫理と表現の自由をめぐるバランスが今後の課題に。
電子コミック広告
が停止に
広告の下に記事の続きがあります。ペコリ
電子コミックの広告が、いま業界の倫理を問われている。
ゲーム攻略サイトやニュースページに表示される“過激な広告”に対して、ついに業界全体が動いた。
「子どもも見るのに、これは不適切ではないか？」という声が、社会を変えた瞬間とは――。
なぜ電子コミック広告が問題視されたのか？
どのような広告が問題となったのか？
電子コミックは近年、爆発的な市場拡大を見せているが、その一方で「広告の暴走」が深刻な社会問題となっていた。特に性的描写のある作品が、全年齢向けのWebサイトやアプリに無差別に表示される事例が相次いでいた。表示される内容には、明らかに未成年に不適切とされる描写（性行為・裸体・胸の強調など）が含まれ、「子どもが見る可能性がある場所に出すべきではない」という声が上がっていた。
実際、広告が表示されていたサイトには、ゲーム攻略情報、料理レシピ、教育関連のポータルなどが含まれ、明らかに「全年齢」が対象だった。利用者の中には親子連れも多く、SNSや口コミでも「目のやり場に困る」「一発で画面を閉じた」という反応が多数寄せられていた。
この状況に対し、2025年4月、日本電子書店連合がついに“配信停止”という大きな舵を切った。背景には、業界の信頼回復と、社会との摩擦を避けるという判断があった。
JAROの苦情内容とは？
問題を具体化させたのは、公益社団法人・日本広告審査機構（JARO）だった。JAROによると、2024年度にインターネット上での性的広告に関する苦情は604件。そのうち、電子コミック広告に関するものが206件であり、さらにその5割超が電子書店連合の加盟社に関係するものだった。
苦情の内容は「とても不愉快」「子どもが見る環境にふさわしくない」「性的な文言が多すぎる」といったもので、JAROはこれを「社会的に見過ごせない事例」として、加盟社に対応を要請。これを受け、業界側が動いた。
苦情の声
例えば、ある40代の母親は「小学生の娘がゲームの攻略サイトを見ていたら、“胸を揉まれる描写”の広告が出てきた。即座にPCを閉じたが、トラウマになっていないか心配」とコメントを寄せている。JAROにはこのような「親の危機感」からの投稿が相次ぎ、特に2025年初頭から急増していたという。
🔸 苦情の背景と拡散状況
JAROに寄せられた苦情の中には、広告の“文言”に問題があるという指摘も多かった。例えば「敏感な場所を触られて…」などの刺激的なセリフがバナー内に挿入されており、それが子どもや保護者の目に留まってしまう事態が問題視された。
一部の広告にはアニメ風の未成年キャラクターを思わせるビジュアルも含まれており、「年齢的に誤認させるような描写」がJAROのガイドライン違反に該当すると判断された可能性もある。
苦情内容の傾向（JARO分析より）
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子どもが見る時間帯に表示された
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セリフや画像が性的で不快
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ページの切り替えや動画再生前に強制表示された
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削除オプションが不明確
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広告主の責任表示が不十分
| 時期／状況 | 内容・対応の変化 |
|---|---|
| 対応前（〜2025年4月） | 各社で対応基準がバラバラ、全年齢サイトでも表示されていた |
| 対応後（4月30日以降） | 全加盟社で統一基準を策定し、全年齢サイトへの配信を停止 |
日本電子書店連合の対応はどう変わった？
配信停止の背景と意思決定
2025年4月30日、日本電子書店連合は「性的広告の配信停止」を正式決定した。この決定は、JAROからの厳しい指摘と、寄せられた多数の苦情を受けて緊急開催された会合でまとめられた。加盟11社が一堂に会し、「業界としての共通対応」を取ることで一致。広告の適正基準を統一し、即日で全年齢向けサイトから性的広告の配信を停止した。
意思決定が迅速だった背景には、「すでに限界を超えていた」ことへの危機意識があった。放置していれば、広告業界全体の信頼や、電子コミック業界自体への批判が加速する恐れがあった。広告収益よりも「ブランド価値と倫理性」を優先する姿勢が打ち出されたのは、ある意味で画期的な判断だった。
この動きにより、同年5月以降、JAROには同連合に関する苦情が1件も寄せられていないという。短期的には効果が現れている。
各社の対応とコメント内容
加盟社である「コミックシーモア」や「めちゃコミック」「Renta!」などもこの決定に同調し、それぞれ広告表示方針を変更した。広告主に対しては「全年齢向け媒体では、過度な描写や性的セリフは一切不可」とする基準を提示。特に未成年読者を想定する広告スペースに対しては、内容精査を強化した。
読売新聞の取材に対し、連合の広報担当者は「社会的な批判を受け、業界全体の課題として受け止めている。広告表現の適正化や健全な運用体制に向けて、連携し取り組んでいく」と回答した。
| ✅ 見出し | 要点（1文） |
|---|---|
| ▶ 対応の決定日 | 2025年4月30日、電子書店連合が即日対応を決定 |
| ▶ JAROの役割 | 苦情を受け、連合に指摘と対応要請を行った |
| ▶ 社会的影響 | 配信停止後、苦情が0件に激減 |
| ▶ 業界の意思統一 | 加盟社11社が共通基準で広告方針を変更 |
🔄 配信停止までの意思決定プロセス
① 苦情が急増（JAROへ604件中206件が電子コミック）
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② JAROが電子書店連合に指摘
↓
③ 4月30日：緊急会合を開催
↓
④ 加盟11社で広告配信基準を統一
↓
⑤ 同日中に「全年齢向けサイトへの配信停止」を決定・実行
今後の広告配信と課題は？
加盟外の広告主への対応は？
JAROによると、今回の措置で電子書店連合に関する苦情は“ゼロ”となった一方、非加盟社による広告や他ジャンル（医院・オンラインゲームなど）の性的広告については、依然として苦情が寄せられている。特に、ジャンルを偽装する形で性的要素を紛れ込ませる悪質な手法が問題になっている。
JAROはこうした広告主に対し、継続的に苦情を報告し改善を促すとしているが、強制力がない現状では限界がある。行政や大手広告プラットフォームの協力なくして、根本的な改善は難しいという指摘も出ている。
残された業界課題と規制の行方
倫理基準の明確化と同時に問われているのが、“表現の自由”とのバランスである。過度な規制は、クリエイターや読者側の萎縮につながりかねない。今回の決定は業界主導による“自主規制”であり、外圧ではなかった点が評価されている。
しかし、今後はより包括的な「広告表示ガイドライン」や、国際基準に近い運用ルールが求められる可能性が高い。電子書籍という“文化的領域”と広告という“商業領域”の境界線をどう保つか。問われているのは、単なる自粛ではなく、持続可能な広告倫理そのものである。「これはいったい誰に向けた広告なのか」――社会の疑問が、ついに現実を動かした。
子どもの目に触れる広告の“線引き”を、誰が決めるべきなのだろうか？
🧠 倫理と自由の「狭間」に立つ広告たち
広告というものは、どこまでも“正当”なようでいて、時に“暴力的”でもある。
それが伝えるべき情報以上のものを含んでしまったとき――私たちはどこで引き返せるのだろうか。
電子コミック広告の規制が始まった。だが、それは終わりではなく始まりだ。
「誰に見せるのか」「どこに表示するのか」…そんな当たり前の問いすら置き去りにされてきた現実が、ようやく正されようとしている。
これは“性”の問題でも、“広告技術”の問題でもない。
“想像力”の欠如と、“視線”の暴力が、社会の規範をゆがめてきた。
今、私たちは広告を見るとき、「誰かの視線になって」考える準備ができているだろうか？
| ✅ 見出し | 要点（1文） |
|---|---|
| ▶ 問題の核心 | 全年齢サイトに性的な広告が無制限に表示されていた |
| ▶ 連合の対応 | 2025年4月30日に広告配信を停止し、苦情が激減 |
| ▶ 課題の継続 | 非加盟社の広告や他ジャンルには依然苦情が発生中 |
| ▶ 今後の論点 | 広告の倫理と表現の自由のバランスが問われている |
❓FAQ｜電子コミック広告の規制は何が変わったのか？
Q1. なぜ電子コミックの広告が問題になったのですか？
A1.
性的な描写を含む広告が全年齢向けのサイトやアプリに表示され、子どもや保護者から「不快」「不適切」とする苦情がJAROに多く寄せられたことがきっかけです。広告の配信場所と内容のミスマッチが問題視されました。
Q2. どの電子書店が広告の配信停止を決めたのですか？
A2.
「コミックシーモア」「めちゃコミック」「Renta!」などを含む日本電子書店連合の11社です。2025年4月末に連合として統一基準を設け、全年齢サイトでの配信を停止しました。
Q3. 今後はすべての不適切な広告が消えるのですか？
A3.
今回の対応は連合加盟社に限定されており、それ以外の電子コミック広告や、医院・ゲーム分野の性的広告はまだ苦情が続いています。JAROは改善要請を継続していますが、法的強制力がないため完全な解決には至っていません。
