福岡県春日市で85歳女性から190万円をだまし取ったとして、17歳の女子高校生が受け子として逮捕された事件。電話で「株に失敗した息子」を装い、現金を受け取る手口の裏には、SNS経由の闇バイトが。未成年が犯罪に加担する背景と社会的課題を検証。
女子高校生が受け子に
190万円詐欺事件の真相
広告の下に記事の続きがあります。ペコリ
「おばあちゃんからお金を受け取って、他の場所に置く仕事だった」――そう話したのは、詐欺の受け子として逮捕された17歳の女子高校生。福岡県春日市で85歳の女性から190万円をだまし取ったオレオレ詐欺事件が波紋を広げている。高校生がなぜこの“仕事”に手を染めたのか、そして私たちは何を学び、どう防ぐべきなのか。若者と高齢者をつなぐ犯罪の実態に迫る。
事件はなぜ起きたのか?
どんな手口だったのか?
オレオレ詐欺は依然として巧妙さを増している。今回の事件では、福岡県春日市に住む85歳の女性に対して「息子になりすました人物」が電話をかけ、「株に失敗し、損失分を支払わないと犯罪者になる」と虚偽の説明をした。恐怖と焦燥に駆られた高齢女性は、190万円を用意して「法律事務所の職員」と名乗る人物に現金を手渡してしまった。
息子になりすまし、株損失と偽る電話
電話の主は息子の声を真似ていたとされ、「今すぐ対応しないと逮捕される」といった強い言葉で女性を追い詰めた。さらに「代理で職員が伺う」と続け、不安を増幅させる形で受け渡しの準備を促したという。
なぜ高校生が関与していたのか?
現金を受け取ったのは、なんと17歳の女子高校生だった。警察によると、高校生は春日市内の女性宅近くの路上で「法律事務所の職員」と偽って現金を受領したという。制服を着ていた可能性もあり、一見すると詐欺には見えにくい存在であったことも、犯罪を成立させる一因となった。
「いい仕事がある」と友人から誘われて
女子高校生は「友達に誘われた。おばあちゃんからお金を受け取って別の場所に置くだけの仕事だと説明された」と供述している。SNSやメッセージアプリを通じて拡散される「楽して稼げる」系の闇バイトが、未成年にまで浸透している実態がここに表れている。
実際に起きた被害と警察の対応
85歳の女性が190万円を手渡した直後、捜査員が現金受け取りの場面を押さえ、女子高校生はその場で逮捕された。共犯とみられる仲間や背後組織の存在も視野に入れ、警察は引き続き捜査を進めている。
女性宅近くで現金受け取り、現行犯逮捕
女性は事件後、「息子だと思い込んでしまった」と話しており、電話の内容がいかに巧妙だったかを物語っている。警察は詐欺防止の観点から、高齢者への注意喚起も強化する方針だという。
近年の“受け子”関与事件と今回の特徴
なぜ高校生は「仕事」だと信じたのか?
17歳という年齢からも分かるように、女子高校生は“金銭”の意味と“犯罪”の境界を正確に理解していなかった可能性が高い。供述では「いい仕事を見つけた。受け取って置くだけで報酬がもらえると聞いた」と述べており、背景には詐欺グループによる教育・洗脳的な誘導も疑われている。
特に注目すべきは、「高齢者からお金を受け取る=責任が軽い」という心理誘導が行われていた可能性だ。未成年であっても、刑事責任が問われる事例は増加しており、「未成年だから捕まらない」は通用しない時代となっている。
-
SNS型勧誘:DMやLINEでのバイト誘導が横行
-
責任回避の言い訳:「受け取るだけ」の心理操作
-
教育現場の遅れ:詐欺の現場知識が共有されていない
-
“他人の金”の感覚喪失:金銭感覚と道徳性の乖離
なぜ未成年が詐欺に巻き込まれるのか?
学生バイト感覚で“犯罪”に接触してしまう危うさ
現在、SNSやチャットアプリを通じて「簡単・即金・高収入」と謳う“バイト募集”が、10代の若者たちの目に日常的に入るようになっている。特に未成年層では、「対面で誰かに迷惑をかけないならいい」「人を殴ったりしなければ大丈夫」といった認識の甘さが、犯罪との心理的ハードルを著しく下げてしまう。
詐欺グループはこうした心理の隙を突き、直接的な犯罪意識を与えないように「受け取るだけ」「置くだけ」などの表現を巧みに用いる。被害者の高齢者を目の前にしないことで、罪の意識が薄れるよう誘導する手法も特徴的だ。
「誰も傷つけない」という誤解と無知の代償
女子高校生が語った「いい仕事を見つけた」という言葉には、違法性の理解不足と、無知ゆえの正当化が表れている。詐欺の“受け子”行為は、結果的に高齢者の財産を奪い、時には命にかかわる重大な犯罪である。だが彼女にとっては「対面で物を受け取る役目」だったという。
ここには、教育現場や家庭での「リスク教育」の不在も浮き彫りになる。SNS・闇バイト・なりすまし犯罪などの複合的なリスクに対して、十分な知識を持たないまま社会に接してしまう若者が後を絶たない。これは社会全体が抱える課題でもある。
「闇バイト募集DM」の実例(再現)
ーー「高校生でも大丈夫」「簡単な作業です」「翌日現金手渡し可能」
ーー「困ってる人を手伝う仕事です」「個人情報は不要」
こうした文言がX(旧Twitter)やInstagramのDMで送られてくるケースが多く、受信者の警戒心を削ぎ、あたかも“合法の一時バイト”かのような印象を与える。さらに、アカウントは日々使い捨てられており、摘発が難しいという背景もある。
【未成年が「受け子」になるまでの流れ】
SNSなどで「高収入バイト」DMを受信
↓
「受け取るだけ」「置くだけ」と説明される
↓
違法性を認識しないまま応募・連絡
↓
仲介役と会い、報酬や指示を受ける
↓
高齢者から現金を受け取り、指定場所に移動
↓
警察に逮捕されて初めて犯罪だったと気づく
善悪を知らぬまま、大人の嘘に巻き込まれる子どもたち
誰かの老いた母親が泣いた。
誰かの娘が「いい仕事を見つけた」と微笑んだ。
そして社会は、その間に目をそらした。
未成年が詐欺に加担した――という表面だけを切り取れば、それは「甘い認識」とか「親の教育の問題」などと片づけられてしまうだろう。けれど、そこに至るまでの過程を想像したとき、我々が見落としてきた“深い静寂”が浮かび上がる。
SNSで募られる「バイト」。
即金、簡単、保証なし。
その手軽さに、誰も警鐘を鳴らさない。
否、鳴らせないほどに、日常と混ざり合ってしまった。
“受け子”として動いた高校生が、なぜ罪の自覚もなく他人の人生を奪えたのか。
その背景には「関係性の崩壊」がある。
家族という回路が細くなり、学校もまた“仕組み”としての教育に終始する。
大人たちが整えた“自由”という名の空間のなかで、未成年たちは、孤独に選択を迫られているのだ。
それでも我々は問いかけねばならない。
これは「高校生が犯罪をした」だけの話なのか?
それとも「社会が見捨てた瞬間の記録」なのか?
見出し | 要点まとめ |
---|---|
女子高校生が詐欺の受け子で逮捕 | 17歳高校生が85歳女性から190万円を詐取 |
詐欺手口は「株で損をした息子」偽装 | 息子になりすまし、金銭要求の電話 |
女子高校生は「法律事務所の職員」を装う | 被害者宅近くで現金を直接受け取り |
背後に指示役が存在か | SNSを通じた「バイト」認識と供述も |
❓FAQ
Q1. なぜ女子高校生がオレオレ詐欺の“受け子”になったのですか?
A1. 高校生は「友人に誘われて“簡単なバイト”だと思った」と供述しており、SNSなどで募集された“闇バイト”に応募した可能性が高いです。
Q2. 詐欺の手口はどのようなものでしたか?
A2. 被害者の高齢女性に「息子」を名乗る人物が電話で“株で損失を出した”と嘘を言い、金を要求。その後、高校生が“法律事務所の職員”を装って現金を受け取りました。
Q3. 女子高校生は罪に問われるのですか?
A3. 未成年であっても詐欺の共犯と見なされ、逮捕されるケースが多く、少年法のもとで処分されます。ただし判断は年齢や関与度により異なります。
Q4. このような“受け子”に巻き込まれないためには?
A4. SNSや掲示板での「高額報酬バイト」には特に注意が必要です。仕事内容が曖昧な場合や“現金を受け取るだけ”という案件には関わらないよう、家庭や学校での指導が重要です。