警視庁は、占い師を装い「宝くじの当選番号が見える」と偽って高齢女性から740万円をだまし取ったとして、男女8人を逮捕。詐欺グループは占いサイトへ誘導し、鑑定料名目で振り込ませていたとされています。全国に広がる被害の実態と詐欺の手口とは?
「宝くじが当たる」
占い師を装い740万円搾取
広告の下に記事の続きがあります。ペコリ
「宝くじの当選番号が視える」と語る“占い師”が、何百回にもわたって70代女性から金を吸い取った――。
一見、非現実的なこの詐欺事件は、占いブームと高齢者の孤独を悪用した「デジタル霊感商法」とも言える形で進行していた。
警視庁が明らかにしたのは、鑑定料名目で740万円超を奪い取った男女8人の姿だった。
見出し | 要点 |
---|---|
詐欺の概要 | 占い師を装い「当選番号がわかる」と偽る |
被害者像 | 熊本県の70代女性、計350回以上の振込 |
詐欺額 | 合計で約740万円、全国で5000万円規模か |
事件の背景 | 占いサイト誘導とポイント購入型の詐取手口 |
なぜこの占い詐欺事件が注目されたのか?
どのような手口だったのか?
今回の事件で中心人物とされるのは、青木雄也容疑者(44)ら男女8人。
彼らは2024年5月〜2025年3月の約10か月間、熊本県に住む70代女性に対して繰り返しメッセージを送り、「あなたの運気は上昇中」「当選番号が視えています」などと語りかけた。
誘導された先は、占い鑑定を受けるための会員制サイト。
そこでは「当選番号の霊視鑑定にはポイントが必要」と表示されており、ポイント購入の名目で銀行口座への振込が要求された。
しかもその回数は350回を超え、総額は約740万円。
わずか数分のメールやメッセージのやりとりが、巨額の詐取行為へとつながっていた。
被害者はどのように騙された?
被害者の70代女性は、「お金が返ってくる」「一発逆転できる」と本気で信じていたという。
この心理は、高齢者特有の「孤立」と「経済不安」を突いた典型的な感情詐欺のパターンでもある。
相手は一方的に鑑定メッセージを送りつけ、返事をしなくても「運気が急上昇中です」などと断定調で続ける手法を使った。
返信すると、そこから「さらに深い鑑定が必要」とされ、追加のポイントが求められる――。
いわば“終わりなき霊視”というサイクルが構築されていた。
詐欺の構造比較
この事件の背景には、ネットを通じた「占い依存構造」が存在していた。
スマートフォンを通じて24時間どこでも“相談できる”という環境が、依存を加速させた可能性がある。
また、警視庁によると同様の手口は他地域でも確認されており、被害総額は全国で5000万円以上に上ると見られている。
複数の占い師を名乗る人物が、被害者をローテーション方式で繰り返しだまし続けていたという。
詐欺加速要因
-
高齢者のスマホ利用率増加
-
占いサービスの匿名性
-
経済的孤立による心理依存
-
複数犯による組織的分業
なぜ被害がここまで拡大してしまったのか?
詐欺が拡大した心理的要因とは?
青木容疑者らが仕掛けた“占い詐欺”は、一見すると非現実的な内容ながら、現実には極めて強力な心理操作が組み込まれていた。
とくに高齢の被害者は「誰かに頼りたい」「不安を打ち消したい」という思いから、鑑定メッセージに引き込まれやすく、相手の言葉を無条件に信じてしまう傾向がある。
詐欺側はそこに「当選番号がわかる」という未来の希望をぶつけ、現実の苦しみを一瞬でも忘れさせる。
これが“逃避願望”と呼ばれる心理を突く詐欺構造だ。
詐欺システムの構造はどうなっていたのか?
詐欺の仕組みは、いわゆる「マルチ詐欺型占いサイト」の典型で、以下の流れで被害が進んでいたとみられる。
【詐欺の進行構造】
-
「運気が上昇中です」などのメールを送信
↓ -
占いサイトへのリンクを案内
↓ -
サイト内で「鑑定にはポイントが必要」と表示
↓ -
ポイント購入の名目で口座へ現金を振込
↓ -
「さらに運気を高める鑑定が必要」と繰り返す
↓ -
総額740万円超、全国では5000万円規模へ拡大
見出し | 要点 |
---|---|
被害の拡大背景 | 孤独と経済不安に付け込む構造 |
システム的な巧妙さ | 鑑定が無限に継続される仕組み |
占い依存の罠 | 高齢者特有の心理を狙い撃ち |
組織的な詐欺 | 全国で5000万円以上の被害 |
この事件は「まさか自分は騙されない」と思っている人ほど、危険なポイントを見落としやすい。
被害者が弱かったわけではない。
巧妙な心理設計と、“希望を武器にした罠”が、どこまでも人の善意と願いを吸い取ったのだ。
私たちはこの事件から何を学ぶべきか?
「信じたい心」が狙われる時代へ
詐欺とは、金銭を奪う行為であると同時に、「心の脆さ」を食い物にする暴力だ。
この事件に見るのは、単なる占いサイトの悪用ではない。
“幸運を信じたい”という感情そのものを収益化する、デジタル時代の新型霊感商法とも言える構造だった。
「当選番号」という幻想が売られた社会で
いつからだろう、「当選番号が見える」と言われて、誰も笑わなくなったのは。
それはもう現実ではない。けれど、現実がつらすぎるから、人は幻想に逃げ込む。
この詐欺は、金ではなく「希望」を売っていた。絶望から人を救ってくれる何か――
そんな幻想にすがるのは、弱さではなく、“人間らしさ”だ。
だとしたら、この社会が問われている。なぜそこまで孤独なのか。なぜ一人で、740万円も払わされるまで誰にも相談できなかったのか。
犯人だけが悪いのではない。そうさせた仕組みを、私たちはどこまで見抜けているのか?
見出し | 要点 |
---|---|
事件の核心 | 占いを装い宝くじ詐欺、350回で740万円 |
手口の特徴 | 運気・当選を強調、ポイント制サイト誘導 |
被害者の心理 | 孤独・不安に付け込む長期的な詐欺構造 |
私たちの教訓 | “信じたい心”が狙われる時代、相談環境の整備が急務 |