かつてはコロナ禍でも強さを見せたカレー店が、今「静かな撤退」に追い込まれています。2024年度は倒産が13件と過去最多を記録。コメ価格の高騰や人件費増が経営を圧迫し、インバウンド需要の追い風も及ばず。外食の定番に異変が起きています。
カレー店の倒産
過去最多
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スパイスの香りが漂う街角のカレー店。だがその灯が、次々と消えている。帝国データバンクによれば、2024年度に全国で倒産したカレー店は13件にのぼり、過去最多を記録した。コロナ禍を生き延びた多くの店舗が、価格高騰と競争激化により静かに姿を消しているのだ。見えにくい現場の実態を追った。
見出し | 要点 |
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2024年度倒産件数 | 全国13件で過去最多、前年比+5件 |
主因:原材料費と競争 | 米やスパイス価格の上昇に加え、ブーム終息後の客足減 |
廃業・閉店含めると | 統計未計上の小規模店が多数、実数はさらに多い可能性 |
今後の焦点 | 食材価格の安定と業態転換(デリバリー・通販型など) |
なぜカレー店の倒産が相次いでいるのか?
コロナ禍を乗り越えた外食業態としての強み
2020年以降、カレー店は比較的堅調な外食業態とされてきた。テイクアウトとの親和性が高く、店内飲食制限下でも売上を維持する店舗が多かった。しかし、ブームの“反動”は確実に忍び寄っていた。中食・外食ニーズの多様化が進み、競合店も一気に増加した。
ブームの反動と競争再燃
特に都市部ではインド系・スパイス系・日本風の混在により「選択肢が多すぎる」状況が生まれ、価格競争が激化した。低価格ランチを求める需要に応えきれず、客単価と原価率のバランスを崩した店舗が淘汰されていく構図となった。
原材料費・光熱費・人件費の多重苦
カレーに欠かせない米、野菜、肉類の価格は、2020年比で1.3倍~1.4倍に上昇。加えて電気・ガス代の上昇も直撃し、小規模店ほど打撃が大きかった。たとえば都内某所の店舗では、2024年度のカレーライス1食あたりのコストが365円に達したという(以前は約270円)。
米・野菜・牛肉の価格上昇(5年で1.3~1.4倍)
コメの国際相場上昇に加え、国内産米も天候不順・需給ギャップで高止まり。これが原価をじわじわと押し上げ、特に「大盛無料」などのサービス型店舗で経営圧迫を生んでいる。
年度 | 倒産件数と背景 |
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2020年度 | 3件(コロナ初期、業態維持) |
2021年度 | 4件(休業・補助金で支援維持) |
2022年度 | 5件(再開後の客足鈍化) |
2023年度 | 8件(原材料費上昇開始) |
2024年度 | 13件(過去最多/米・スパイス高騰+競争再燃) |
統計には現れない“静かな閉店”も多数存在する。特に家族経営や一人店主のカレー専門店では、資金繰り悪化による自主廃業が相次いでおり、実態は公表されている数字以上に深刻だ。
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保健所届け出の取り下げでカウント外になる例
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家賃高騰と後継者不在による撤退
カレー業界の未来はどこに向かうのか?
インバウンド需要の増加と新店舗展開
2024年以降、外国人観光客による「ジャパニーズカレー」人気が再燃している。都内の有名店には長蛇の列ができ、海外へのフランチャイズ展開も進む。一方で、それは大手に限られた戦略だ。
高止まりするスパイスと米価格のリスク
コロナ禍以降の国際物流不安は一段落したものの、スパイス(クミン・カルダモン・ターメリックなど)の価格は依然として高止まりしている。輸入依存が高いこの構造は、円安や気候変動の影響を直接受けやすい。
チェーン店と個人店の戦略差
全国チェーンはフードコートやテイクアウト専門店舗にシフトし、固定費を抑える戦略を採用。一方で個人店は「味」で勝負するが、広報・広告力の差が大きい。結果として、大手と中小の生存率に格差が広がっている。
ロードサイド vs デリバリー型 vs 通販型
地方ではロードサイド店舗が生き残る一方、都市部ではデリバリー型や通販への移行が加速。特にレトルト・冷凍商品の拡充が進み、Amazonなどを活用した販路が新しい生存戦略として浮上している。
地方では空き店舗が増加し、家賃は安価だが人材確保が困難。一方都市部は人はいるがコストが高い。この「二重構造」により、立地と業態の最適化が難しくなっている。
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都市部:人件費+家賃の二重負担
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地方:売上確保よりも人手不足が致命打に
✅倒産に至る因果
需要減少
↓
原価高騰
↓
利益圧迫
↓
販促費・人件費削減
↓
客足離れ・人手不足
↓
閉店・倒産
前半のまとめ | 後半の注目ポイント |
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カレー店倒産は2024年度で最多を記録 | 原材料費と競争激化が主因 |
小規模店の廃業が多数存在 | スパイス・米価格の高止まりが業界全体に影響 |
個人店は集客面で不利 | フードコートや冷凍通販型への業態変化が進行中 |
今後の存続戦略に注目 | チェーンと個人店の格差が広がるなか、地方生き残りも鍵に |
カレーという文化が直面する課題とは?
経営と食文化のバランス
カレーは日常食として親しまれる一方、価格競争が激しく、文化としての位置づけを守るには困難が伴う。量産型と個性派の棲み分けが今後のカギとなる。
価格維持と品質のジレンマ
値上げをしたいが、客離れが怖い——この矛盾を解消できないまま、味を落とすか経費を削るかの二択に迫られる店舗が増えている。結果として「安くてうまいカレー」の幻想だけが残る。
地方の味と都市圏の再定義
地方のスパイスカレーやジビエとの融合など、独自性を打ち出す動きもあるが、採算性との両立には課題が多い。
あなたが最後にカレーを食べたのはいつですか?
もしかすると、それは“貴重な一杯”だったのかもしれません。
日常の中にある「消えていく食」を意識することで、見えない社会の断面が浮かび上がってきます。
カレーが消えていく。
それは経営問題ではなく、“時代”の問題なのかもしれない。かつて「庶民の味方」だったカレーは、いまや「維持できない価格と手間」を象徴する存在へと変化している。
もし、スパイスや米が安くならなかったら?
もし、静かに消えたあの店が、SNSでバズっていたら?カレーは料理である前に、文化であり、時代の鏡だ。
そしていま、私たちは問われている。
「この味を、次の時代へ残す気があるか」と。
見出し | 要点 |
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過去最多の倒産 | 2024年度、13件で最多記録。原因は原価高騰と競争再燃 |
実態は統計以上に深刻 | 廃業・閉店を含めれば数十店舗が消滅と推定 |
今後の打開策 | デリバリー・通販型や空き店舗活用、観光需要の取り込みなど |
食文化としての再定義 | カレー=安価ではなく、価値ある一杯として再評価の必要性 |
✅FAQ
Q1:なぜカレー店はコメ価格の影響を強く受けるのか?
A1:カレーライスとして提供される以上、米の仕入価格が原価に大きく影響するため。
Q2:2025年度の倒産予測は?
A2:すでに2件発生しており、2024年度並みの高水準が続く可能性あり(TDB推計)。
Q3:スパイス価格は今後下がる見通しは?
A3:インド・スリランカの収穫状況次第だが、2025年上期は高止まりの見通し。
Q4:家庭で安く作るにはどうすれば?
A4:冷凍保存活用・野菜代替(玉ねぎ→長ねぎ)・業務用ルゥの利用で節約可能。