富山県で確認されたカメムシの数が平年の6倍を超え、過去最多を記録。コメの品質に影響を与える「斑点米」の発生が懸念され、県とJAは草刈りや防除の徹底を呼びかけています。高温傾向が続く見通しの中、農家の対応が急務となっています。
富山で平年の6倍
カメムシ急増中!
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カメムシが平年の6倍発生 富山のコメに“斑点米”の危機
今年、富山県ではイネの天敵「カメムシ」が平年の6倍も確認され、過去最多を記録しました。黒い斑点がつく「斑点米」の原因となるこの害虫の急増により、コメの品質低下が深刻に懸念されています。高温が続くとさらなる発生も予想される中、県とJAは草刈りや除草の徹底を農家に呼びかけました。
見出し | 要点 |
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発生数の異常 | 平年比6倍、過去最多を記録 |
影響の拡大 | コメの斑点米化で等級下落懸念 |
主な要因 | 高温傾向・雑草増加・越冬個体数 |
対応策 | 草刈り・水管理・農薬タイミングの徹底 |
なぜ富山でカメムシが過去最多となったのか?
2025年春、富山県内で観測されたカメムシの個体数が、過去に類を見ない数値を示した。県農林水産技術センターの発表によれば、今年5月時点で確認されたカメムシの発生数は、平年の約6倍に達し、1998年以降の統計で最多となった。特に、主食用米に被害をもたらす「クモヘリカメムシ」や「アカスジカスミカメ」の個体が顕著に増えている。
この急激な増加は、単なる偶発的な現象ではない。複数の気象・環境要因が複合的に影響しており、その背後には近年の異常気象が見え隠れしている。2024年冬の気温が平年よりも高く推移したことで、越冬するカメムシの生存率が大幅に上がったとみられる。さらに、春先からの気温上昇が例年よりも早まり、カメムシの活動開始が早まったことも一因だ。
県の予報資料では、今後3か月も高温傾向が続くとされ、カメムシのさらなる繁殖拡大が予測されている。これにより、6月以降の出穂期にかけて吸汁被害が多発し、コメの品質が下がる懸念が現実味を帯びている。
カメムシ発生数の推移(富山県)
年度 | 平均発生数(個/調査地点) | 特記事項 |
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2020年 | 約15個 | 通常年 |
2021年 | 約18個 | やや高めの年 |
2024年 | 約24個 | 多発年(前年) |
2025年 | 約88個 | 過去最多・6倍超え |
どのような環境変化が影響しているのか?
環境変化の最大の要因は、冬季の暖冬と春先の高温にある。富山では1〜2月の平均気温が平年より1.8℃高く、積雪日数も例年より少なかった。このため、カメムシの越冬個体が多く生き残り、例年より早く繁殖活動に移行した。
また、暖冬によって雑草の成長も早まり、田んぼやあぜ道などにカメムシの餌場が豊富に確保された。とりわけ、キク科やイネ科の雑草が繁茂する場所では、密度の高い個体群が形成されやすくなっており、初期段階から広範囲で高密度な群れが確認された。
富山県内では過去にも2010年や2016年にカメムシの増加によるコメ被害が報告されているが、今年はそれらを大きく上回る規模となっている。農家からは「田んぼを歩くだけでカメムシが数十匹飛び出してくる」という声も上がっており、すでに防除作業を強化している地域もある。
被害を及ぼす主なカメムシ種(富山県)
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クモヘリカメムシ
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アカスジカスミカメ
品質への影響と農家への対応は?
カメムシが稲穂に被害を与えることで、米粒に黒い斑点ができる「斑点米(はんてんまい)」が発生する。この斑点は食味に直接影響しないものの、見た目の悪化から等級が下がり、価格も大きく下落する。特に1等米から3等米へと格付けが落ちると、農家の収入は数割単位で減ることもある。
富山県では、すでに一部の農家が「昨年よりも被害が早い段階で広がっている」として、防除の時期を前倒しするなどの対応に動き出している。県も早期の草刈りや水管理、適切な農薬の散布タイミングを促すなど、技術指導に注力している。
農協関係者によると「今後の天候によっては、さらに事態が悪化する可能性もある。情報共有と連携が鍵になる」として、地域単位での対策強化が呼びかけられている。
【カメムシ大量発生への対応の流れ】
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【異常検知】
→ 県の調査で過去最多のカメムシ捕獲数 -
【影響懸念】
→ 品質低下(斑点米)による等級下落のリスク -
【呼びかけ】
→ 県・JAが草刈りと除草の徹底を促進 -
【農家の行動】
→ 畦の草刈り強化、防除スケジュール見直し -
【今後の焦点】
→ 高温予測によりさらなる増加の可能性→継続対策が不可欠
見出し | 要点 |
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斑点米の懸念 | 米の等級が落ち収益に影響 |
農家の初動 | 防除時期の前倒し実施中 |
県の支援策 | 草刈り・水管理・技術指導 |
今後の焦点 | 天候と地域連携が鍵となる |
今回の事例は、単に虫害の問題にとどまらない。気候変動の現実的な影響として、「見えにくい連鎖」が農業の現場を直撃している点に注目したい。私たちが食卓で目にする“おいしいお米”が、自然とどうつながっているのか――その接点にこのニュースがある。
なぜ“気象と農業”の関係はこれほどまでに深いのか?
見えない害、見過ごされた予兆
カメムシの増加――この小さな出来事に、日本の農業の脆弱さが、皮膚の下から浮かび上がってくる。富山の田んぼで何が起きているのか。気象がわずかに傾いたとき、何が崩れ、何が続くのか。斑点米という名の“しるし”が、農家の年収を5割削り、ブランド米の信頼を一瞬で揺るがす。
冷害でもなく、台風でもない。「少し暖かかった冬」が、春を歪め、虫の声を増幅し、稲の命を吸い上げる。気候と経済と食卓が、あまりに静かにつながっている。もし私たちが「今年もお米の味が落ちた」とつぶやくなら、その背後には無数の羽音がある。その声は、聞こえないフリをしてはならない。
見出し | 要点 |
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発生原因 | 暖冬・高温・雑草増加により個体数爆発 |
被害内容 | コメに斑点が生じ等級が下がる危険性 |
農家の対応 | 防除前倒し・草刈り・農薬管理を徹底 |
今後の課題 | 気象と農業の連動対策が不可欠に |
【FAQ(よくある質問)】
Q1. カメムシによる被害は、すぐに味に影響しますか?
A. 味には直接影響しませんが、見た目の斑点により米の等級が下がる可能性があります。
Q2. 県はどのような対応を取っていますか?
A. 草刈りや水管理、農薬の使用時期の指導などを徹底しています。
Q3. 他県にも影響はあるのでしょうか?
A. 現時点では富山が顕著ですが、北陸や中部の一部でも注意が必要です。
Q4. 消費者ができる支援はありますか?
A. 斑点米の味に変わりはないため、理解をもって購入を続けることも一つの支援です。