脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営していたMPH株式会社が解散を決議。旧会社の債務問題が影響し、給与遅延や店舗休業を経て、特別清算を申請する方針を明らかにしました。会員対応の新業態「どこでもミュゼ」にも課題が残る中、今後の清算手続きと顧客保護が注目されます。
ミュゼ運営の
MPHが解散決議
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全国167店舗を展開していた大手脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の運営企業であるMPH株式会社が、突如として“解散”を決議した。今後は、通常清算または特別清算のいずれかの法的手続きに移行すると発表された。顧客対応・店舗運営・従業員の雇用など多くの波紋が広がる中、この決断に至った背景には、見過ごされた旧債務と経営の綻びがあった──。
MPHの解散決議と背景とは?
どのような経緯で解散が決まったのか?
MPH株式会社は、2024年9月に「株式会社ミュゼプラチナム」から新設分割により設立された法人であり、脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の全国167店舗を引き継いで運営していた。だがその後、売上金の差押えや給与の遅延などが相次ぎ、事業の継続性が危ぶまれていた。
2025年6月2日、同社は株主総会を開催し、解散を正式に決議。あわせて、通常清算または東京地裁における特別清算の申請を視野に入れると発表した。代表清算人には弁護士の武藤元氏(フォルム綜合法律事務所)が選任され、今後の手続きが本格化する。
MPHと旧ミュゼプラチナムの関係性は?
MPHは新設分割によって誕生したが、旧会社側に残された負債──特に日本年金機構への社会保険料滞納──が整理されていなかった。この影響で、年金機構からMPHの売掛金が差押えられ、資金が枯渇。本来引き継がれるはずの“正常な運営資産”が機能しなくなった。
このように、新会社と旧会社の資産・負債の切り分けが曖昧なままスタートしたことが、結果的にMPHの経営危機に直結したと見られている。
特別清算制度の特徴
特別清算は、解散した会社が選択できる法的整理の一形態で、債権者の合意を前提とした柔軟な清算方法である。破産に比べて手続きは簡易で、費用面の負担も軽減されることから、グループ会社や子会社の処理で利用されることが多い。
MPHは全国167の直営店舗を展開し、女性向け脱毛業界において圧倒的な知名度と店舗網を誇っていた。しかし、旧会社から引き継がれた債務の構造不備により、見かけ上の規模とは裏腹に、内実は危機的だった。特に、2023年以降の顧客離れや価格競争の激化も影響し、資金繰りは次第に悪化していった。
その結果、2025年3月末には全店舗の休業に追い込まれ、残されたのは、解決の見えない債務と、保証のない顧客契約だった。
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167店舗はすべて直営
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旧ミュゼの債務整理は未完了
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経営内紛がサービス提供に深刻な影響
✅通常清算と特別清算の違い
項目 | 通常清算 | 特別清算 |
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利用条件 | 株主総会での解散決議 | 解散+裁判所への申立て |
債権者との関係 | 企業が主導で債務整理 | 債権者との調整が法的手続きに含まれる |
手続きの複雑さ | 簡素だが任意性が強い | 破産よりは簡易だが裁判所が関与 |
主な利用場面 | 赤字でも資産整理可能なケース | 子会社清算・訴訟リスク回避型処理に多用 |
MPHはなぜ清算を選ばざるを得なかったのか?
売掛金差押えと年金機構の動きが決定打に
MPHが解散に至った最大の要因は、「社会保険料の滞納に基づく売掛金の差押え」にある。旧ミュゼプラチナム時代に生じた年金機構への未納金が、制度上新会社であるMPHにも影響を及ぼした形だ。とくに2025年に入り、売上金が日本年金機構に差し押さえられたことで運転資金が枯渇し、従業員給与の支払いが困難に陥った。
このように、表面上は新設会社であっても、実質的には旧債務の影響から逃れられず、法的整理を選択せざるを得ない状態に追い込まれていった。
雇用や店舗維持の継続はなぜ困難だったのか?
給与遅配やシフト未設定が2025年3月から相次ぎ、店舗は事実上“機能停止”。加えて一部従業員から労働組合を通じた法的申し立てもあり、人的資源の管理は完全に破綻していた。
全国167店舗に及ぶ施設維持費や光熱費も継続支出が発生しており、休業中であっても数千万円単位の資金が必要だった。これにより、清算を含む抜本的な構造整理以外に選択肢は残されていなかったといえる。
MPHは2025年3月まで新規顧客契約を継続していたため、突然の解散は数万人規模の“契約未履行”を生んだ形となった。さらに、清算に移行すれば返金やサービス再開は事実上困難になる可能性が高く、業界内でも「日本最大級の返金難民発生」との懸念が広がっている。
この件は、エステ業界におけるサブスク型サービスの脆弱性や、親会社からの分割・債務承継リスクを象徴する事例ともなり、他企業に波及する可能性がある。
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差押えは約3.8億円規模(推定)
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給与遅配は関東・関西中心に約2ヶ月
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各地で一斉休業状態に突入
✅清算に至る経緯
発端:旧ミュゼからの分割(2024年9月)
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年金機構への未納債務が発覚(2024年末)
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2025年初:売掛金の差押え実施(東京)
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給与支払い停止・シフト未設定(全国)
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店舗休業・サービス停止(3月末)
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解散決議→清算方針表明(6月2日)
顧客や契約者はどう対応すればよいのか?
返金対応は?引き継ぎは?現時点の状況
MPHの清算決定により、契約済みの脱毛コース・クーポンの扱いが最大の焦点となっている。公式サイトでは「系列会社での対応を検討中」としているものの、詳細は示されておらず、多くの顧客が不安を抱えたままの状態だ。
また、すでにコースを完了していない顧客の中には、数十万円の返金を求める声も上がっており、国民生活センターなどへの相談件数も急増している。
今後の顧客対応の見通しと課題
現時点では、MPHから事務連絡が行き届いておらず、契約書や領収証を紛失している顧客への補償方法などが明示されていない。このまま特別清算に移行した場合、債権者への弁済順位の都合上、「顧客返金は困難になる」との見方も出ている。
そのため、返金を希望する場合は、早期に法的相談を受けたり、集団申立てを行うなど、個人単位ではなく“集団的交渉”が重要になる。
「サロンが潰れることを前提に契約した人などいない」という当然の感情があるだろう。今回の件は、顧客側が不利になるサロンビジネスモデルの欠陥を浮き彫りにした。将来的には、店舗の継続性を担保する仕組み──たとえば「保証型サブスク」「信託契約との連動」などが求められる可能性もある。
人は美しさを求めるが、それがどこに支えられているかまでは考えない。光のように差し込むキャンペーン、眩い店内、巧みな価格設計──その裏で、制度と債務の綻びが静かに崩壊を始めていた。
“綺麗になりたい”という思いが、破産法の条文に飲み込まれる。その皮肉こそが、消費社会の本質ではないか。ミュゼの解散は単なる経営破綻ではない。「見えないリスク」に無防備な構造への警告である。
✅【FAQ(よくある質問)】
Q1. MPH株式会社はどんな会社だったのですか?
A1. MPH株式会社は、2024年に旧ミュゼプラチナムから新設分割され、「ミュゼプラチナム」ブランドの脱毛サロン事業を引き継いだ運営会社です。
Q2. なぜ給与未払いが発生したのですか?
A2. 旧会社の社会保険料滞納により日本年金機構が売掛金を差押え、現金収入が止まり、結果的に給与の支払いが困難になったためです。
Q3. 今後のサービスはどうなりますか?
A3. 既存のサロンはすべて休業中で、グループとしては「どこでもミュゼ」という業務委託型サービスの展開を試みていますが、既存契約の対応状況は調査中です。
Q4. 破産手続きと特別清算は何が違うのですか?
A4. 特別清算は破産に比べ手続きが簡易で費用も少なく、すでに解散した企業が清算を目的として行う法的手続きです。