長崎大学で出題ミス
2名を追加合格へ
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長崎大学は6月6日、2025年度の入試(前期日程)の物理で出題ミスがあったと発表し、追加で2人を合格とした。問題には選択肢が複数正解となる誤りがあり、外部からの指摘で発覚したという。88人に加点修正のうえ再判定が行われ、合格に至らなかった受験生にも大学側が支援措置を講じるとした。選抜制度の透明性と信頼が問われている。
見出し | 要点 |
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何が起きた? | 長崎大学の物理試験で選択肢ミスが発覚 |
きっかけは? | 外部からの指摘により5月末に判明 |
どう対応した? | 88人に加点し、2人を追加合格に |
大学の姿勢は? | 謝罪会見を開き再発防止策を表明 |
なぜ長崎大学の物理試験で出題ミスが起きたのか?
どんな問題だったのか?
問題は物理の「波動」に関する設問で、平面波のベクトルの向きを問う内容だった。「向きが同じベクトルを選びなさい」という指示に対し、受験生は複数の図示されたベクトルの中から、正しいものを1つ選ぶ形式になっていた。
しかし、選択肢のうち2つのベクトルが同じ向きを示しており、「正解が2つ存在する」という重大な設計ミスが判明した。
なぜ2つの正答が存在したのか?
本来、入試問題の選択肢は1つしか正答が存在しないように設計される。だが今回、ベクトルの描画において物理的定義の理解不足と、図面校閲の見落としが重なり、結果として「ウ」と「イ」の2つの選択肢が正解になっていた。
作問者とは別の確認者もいたにもかかわらず、3回行われた点検工程ではこの矛盾が見過ごされたという。
具体的な選択肢の誤り(ウとイ)
問題には5つの選択肢があり、そのうち「ウ」と「イ」が実質的に同じ方向のベクトルを示していた。設問が「向きが同じベクトルを選びなさい」としていたため、両方を選べる状況だったが、解答欄は1つのみの択一方式だった。
大学の初動対応はどうだったか?
5月25日に外部からの問い合わせで出題ミスが指摘され、大学はすぐに専門教員による検証を実施。その結果、設問に誤りがあることを認め、該当者全員の答案を再採点した。
受験生723人中、88人に対して加点処理を行い、合否の再判定を実施。最終的に2人が追加で合格基準に達した。
今回のミスは、単なる「図の書き方の誤解」ではなく、大学の出題・点検体制全体の設計不備を示すものだった。問題作成者だけでなく、点検票に明記された「択一問題は正解が1つであることの確認」さえも、形骸化していたことが判明した。
点検プロセスは3回にわたり実施されていたが、いずれの段階でも「複数正答の危険性」を検出できなかった。教育機関としての信頼回復には、単なる謝罪ではなく「構造の見直し」が不可欠である。
見落としが起きた構造的要因
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チェック項目が機械的に処理されていた
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「図示されたベクトルの向き」に関する物理的厳密さが共有されていなかった
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点検担当間の役割と責任の曖昧さ
項目 | 通常の出題体制 | 今回の長崎大学の事例 |
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正解の一意性確認 | 択一問題では必ず1つ | 2つの正答が存在した |
点検回数 | 通常3回程度 | 今回も3回実施 |
点検精度 | 専門教員・複数名が関与 | 構文ミスを誰も指摘せず |
発覚時期 | 試験前 or 試験直後 | 約3か月後、外部指摘で発覚 |
なぜ外部からの指摘でしか発覚しなかったのか?
内部点検ではなぜ見逃されたのか?
長崎大学は「点検票」を用い、問題ごとに3回のチェックを義務づけていた。点検票には「択一問題に複数の正答がないか」も記載されていたが、いずれの確認者も今回の誤りを指摘できなかった。
要因として、次のような構造的問題が浮かび上がっている:
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チェックが“書類上の手続き”と化していた
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ベクトルの物理的意味に対する認識が形式的だった
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問題の意図と選択肢の整合を「図解」でなく「言葉」で処理していた
問い合わせの内容と影響
5月25日、物理の専門家を名乗る人物から大学に「この設問には複数正答がある」との指摘があった。大学は検証の末、設問の誤りを認定。
そこから過去の答案を洗い直し、物理選択者723人中88人に加点、再判定の結果、2人を新たに合格と認めた。
大学の対応と謝罪会見
6月6日に記者会見が開かれ、森口勇理事が「構造的欠陥を認識している」と述べた。再発防止に向け「対策検討委員会」を設置し、作問・点検・決定の各工程の分断性と責任不明瞭性を洗い出すとした。
【出題ミス発覚の流れ】
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2月:前期日程で入試実施(物理含む)
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出題時点では問題なしと判断
↓ -
5月25日:外部から「誤りの可能性」の指摘
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大学が再検証、2つの正答があると確認
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723人の答案を再採点 → 88人に加点
↓ -
合否再判定 → 2人が追加で合格
↓ -
6月6日:大学が記者会見、謝罪・再発防止へ
見出し | 要点 |
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チェック体制の不備 | 3回の点検でも誤りを見逃した構造的問題 |
指摘者の役割 | 外部からの問い合わせでようやく発覚 |
大学の対応 | 合否を再判定し、追加合格を決定 |
信頼回復への道 | 体制見直しと対策委員会の発足を宣言 |
読者が最も気になるのは、「自分や子どもが受験者だったら?」という観点だろう。長崎大学は追加合格者に「学生生活の支援」や「4月に入学していれば不要だった費用の補償」を表明している。
しかし、他大学の受験を選んだ場合や、志望変更を余儀なくされたケースへの配慮は十分か。こうした対応は、今後の大学全体の信用にも直結する。
出題ミスは誰の責任で、何を変えるべきか?
個人か、組織か
大学は「作問者とは別の担当者3人が点検」と説明するが、結果として全員が誤りを見逃していた。これは明らかに“組織的責任”だ。
点検票の存在や工程の「多重化」が、逆に「誰かが見ているはず」という心理的油断を招いていた可能性も高い。
再発防止のために何を変えるか
森口理事が述べたように、作問・点検・判定の連携不足を解消するには、「責任の明確化」「工程ごとの専門性再確認」「クロスレビュー導入」が必要だ。
特に図や図示物を含む設問では、「意味」だけでなく「視覚的解釈」の確認を義務化すべきだ。
選抜とは誰を選ぶ制度なのか
過失とは、必ずしも「気づかなかったこと」ではない。
むしろ「気づけるはずだった構造を放置したこと」である。
人が判断を下すとき、その背景には無数の“見ない自由”が潜んでいる。今回の長崎大学の件は、「誤りの指摘がなかったら、そのまま正答として処理されていた」ことこそが最も危うい。
これは大学の問題ではなく、社会の問題だ。なぜなら、我々の多くも「形式上の安心」に依存しているからだ。
教育とは「正しさ」を伝える営みである以上、その正しさが内部から保証できない体制は、教育機関の根幹を揺るがす。
見出し | 要点 |
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出題ミスの発覚経緯 | 外部からの指摘で発覚、大学が再検証 |
誤りの内容 | ベクトル問題で正答が2つ存在していた |
大学の対応 | 88人に加点し、2人を追加合格に |
今後の課題 | 点検体制の再構築と組織的責任の明確化 |
FAQ
Q1. 今回のミスは誰の責任?
A1. 作問者だけでなく、点検体制を含む大学側の組織的責任。
Q2. 追加合格者はどうなる?
A2. 入学希望の意志があれば支援・補償が行われる。
Q3. 他大学を選んだ場合の補償は?
A3. 現時点では明言されておらず、個別対応が予想される。
Q4. 今後同様のミスは防げる?
A4. 再発防止策として対策委員会が設置され、点検工程の見直しが進行中。