2025年は台風1号の発生が例年より大幅に遅れています。主因とされるのがマッデン・ジュリアン振動(MJO)の弱まり。6月に入り南海上では雲の発達も見られますが、今後の台風シーズン入りは不透明。気象変動の背景と今後の備え方を詳しく解説します。
台風1号なぜ遅い?
2025年異例の気象パターン
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例年ならすでに発生していてもおかしくない「台風1号」が、2025年はまだ姿を見せていません。台風シーズンの入りが遅れている今年は、何が違うのでしょうか? 気象現象「マッデン・ジュリアン振動(MJO)」の弱さや海洋状況の変化が影響しているとの見方も。この記事では、台風シーズンの見通しと今後のリスクを、専門家の分析を交えて掘り下げます。
台風シーズンに入るのか?今年の異常傾向とは?
2025年の台風シーズンは、すでにそのスタートの「遅さ」が話題になっています。例年であれば、5月中に1号が発生してもおかしくない中、今年は6月に入っても発生の報告がありません。これは、日本列島の気象リスクが後ろ倒しになる可能性を示唆しているとも言えます。
特に今年の5月は、台風の発生を助ける要因のひとつとされる「マッデン・ジュリアン振動(MJO)」の活動が非常に弱く、一時的にその兆候すら観測されなかったとされます。MJOとは、インド洋から太平洋に向けて移動する巨大な積乱雲の活動で、熱帯低気圧の発生や、台風の形成に影響を与えると考えられている気象現象です。
このMJOが5月には「不在」と言える状態であったことが、熱帯域の対流活動の停滞を招き、南の海上の雲の形成も抑えられていたことが、台風1号の発生の遅れと密接に関係していると見られています。
なぜ今年は雲の発達が遅れているのか?
2025年の特徴として、熱帯海域の状態が「一様に穏やかだった」ことが挙げられます。雲のもとになる上昇気流が形成されず、対流活動も低調だったため、台風の種となる熱帯低気圧も発生しにくい状態でした。
しかし、6月3日ごろから状況は一変。南シナ海やフィリピンの東側付近でMJOの活動が突如として活発化し、それに伴って雲の発達も急激に進みました。これは、熱帯由来の暖湿気(暖かく湿った空気)が本州付近に流れ込み、梅雨前線の活動を活発化させる要因ともなっています。
このような「静から動」への急激な変化は、今後の気象を読む上でも注目すべきポイントです。急激な変化の裏には、エネルギーが蓄積されたまま突発的な台風が発生するリスクが潜んでいるからです。
過去に同様の傾向が見られた年のケース
たとえば2016年も、6月下旬まで台風が発生しない年でしたが、7月以降に立て続けに台風が日本列島に接近・上陸する事態となりました。遅れてスタートした年は、そのぶんシーズン後半の活動が活発になる傾向もあります。
台風が発生しない今のうちに、備えを万全にしておくことが肝心です。特に梅雨と重なって雨のリスクが高まる本州では、排水溝や側溝の掃除など「水はけの確保」が大きな意味を持ちます。
また、台風の発生が遅れていても「数が減る」とは限りません。日本気象協会の見通しでは、8月〜10月の台風接近数は平年並みかやや多いとの予測も出ています。
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台風が遅れても、ピーク時に集中するリスクあり
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MJOの強弱による「急変」がある年は注意が必要
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早めの対策が、被害の軽減につながる
年度 | 台風1号の発生日 | 傾向 | その年の総接近数 |
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2023年 | 4月9日 | 平年より早い | 14個 |
2024年 | 5月26日 | 平年並み | 12個 |
2025年 | 未発生(6月8日現在) | 大幅に遅い | 不明(予測では8〜10月に集中) |
台風の発生が遅れると、どんなリスクが高まるのか?
台風がなかなか発生しない年は、一見すると「災害が少なくて済む」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。実際には、エネルギーが海上に蓄積され、ひとたび条件が整えば「短期間に複数の台風が発生する」事態が起こるリスクもあります。
特に、2025年はMJOの復活とともに、熱帯海域の対流活動が一気に活発化する兆候が見え始めています。これにより、7月以降に“ラッシュ”のように台風が発生・接近する可能性もあるのです。
さらに、遅れて発生した台風は、強度の高いものが多い傾向があり、上陸の可能性だけでなく、大雨や暴風の影響範囲が広がる懸念もあります。実際、過去の統計でも、台風1号が6月以降にずれ込んだ年は「7〜9月の接近数」が増える傾向にあります。
どのタイミングで注意が必要になるのか?
今後の注目ポイントは、「梅雨明け直後の7月下旬」と「秋雨前線と重なる9月」です。これらの時期に、MJOが西から太平洋へ強く移動してくると、台風の発生・接近ラッシュに直結します。
加えて、2025年はラニーニャ現象が発生する可能性が示唆されており、これが現実化すれば、日本列島付近の海水温が高くなり、台風の発達が促進されやすくなります。
2018年の「台風ラッシュ」との比較
2018年は台風の発生が6月にずれ込みましたが、その後の7月〜9月にかけては合計14個が日本に接近。そのうちのいくつかは西日本豪雨や北海道の停電など、甚大な被害をもたらしました。
今後1〜2週間の気象衛星データやMJO指数の動向は、今年の台風シーズン全体の予兆を示すカギとなります。特に気象庁が週単位で発表している「全球モデル予測(GSM)」や、熱帯域の海面水温の偏差を追うことが有効です。
また、2025年のように“静かな始まり”を迎えた年こそ、防災の見直しには最適なタイミングと言えます。自治体や個人で、ハザードマップの確認や備蓄品の点検を行うべき時期が来ています。
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台風が少ない前半こそ、防災見直しのチャンス
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雲が急発達した6月前半は要注意
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7月下旬〜9月にかけての急変リスクに備える
「2025年 台風シーズンの読み方」フロー図
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5月までMJO弱い
↓ -
台風発生せず、雲の発達も乏しい
↓(6月初旬) -
フィリピン東側で急に対流活性化
↓ -
台風1号が発生(予測)
↓ -
7月以降:連続発生リスク+強い台風
↓ -
8月〜9月:ラニーニャ影響で接近数増の可能性
↓ -
→ 防災見直しの適期は「今」
見出し | 要点 |
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台風発生はまだ | 6月8日時点で1号未発生の異例 |
MJOが再活性化 | フィリピン付近で雲の発達が急加速中 |
今後の警戒時期 | 7月下旬〜9月にかけて注意が必要 |
防災対策の見直し | 早めの準備が後のリスク低減につながる |
今年の台風傾向をどう読み解くべきか?
2025年の台風は「静かな始まり」となる一方で、その後の反動的な増加・接近ラッシュの懸念が強く残されています。とくに今年は「MJO→台風→ラニーニャ」の連鎖が同時進行で進む可能性があり、気象リスクが年後半に集中しやすい年です。
こうした年に求められるのは、静かな間にどれだけ準備ができるか。情報の先取りと、生活・仕事の中での優先順位づけが問われます。2025年の台風は、“待っていれば去っていく”ものではなく、“待っていれば襲ってくる”存在なのかもしれません。
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「台風が来ない=安心」ではなく、「静けさ=嵐の前」と考える必要がある
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対策のタイミングは「発生前」でなければ意味がない
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気象の“予兆”をどう読み解くかが、生存戦略になる時代
静けさの中の揺らぎ――台風が来ないという不安
災害は、音もなくやってくる。誰もがスマホを見つめる日常のなかで、遠い海のエネルギーが渦を巻き、やがて街を飲み込む。その始まりは、「まだ何も起きていない」という安心感に隠れている。
今年は台風1号が来ない。だがその静けさこそが、もっとも危うい“揺らぎ”かもしれない。予測はできても、準備を怠る人間には、自然はいつも容赦ない。
“観測する目”を持つこと、それが都市に生きる我々に課せられた、静かな義務である。
FAQ
Q1:台風1号が遅れると、1年を通して台風が少なくなりますか?
A1:必ずしもそうとは限りません。発生が遅れても、7月〜10月に集中する傾向があります。
Q2:ラニーニャ現象と台風の関係は?
A2:ラニーニャが発生すると、日本付近の海水温が上昇し、台風の発達が促進されることがあります。
Q3:防災の見直しはいつするべきですか?
A3:「今」が最適です。台風の発生が遅れている今こそ、備蓄や避難経路確認などの準備がしやすい時期です。
見出し | 要点 |
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台風1号の遅れ | MJO不活性で異例の静けさ |
雲の急発達 | 6月に入り東南アジアで急変 |
後半の警戒時期 | 7月後半〜9月に集中する恐れ |
備えの重要性 | 静かな今こそ準備のチャンス |