2025年1〜5月における弁当店の倒産件数は22件に達し、前年を上回るペースで過去最多の可能性が指摘されている。仕出し弁当や法人向けランチ需要の減少、さらにコメ価格の高騰が中小事業者を圧迫。業績悪化と二極化が進む弁当業界の現状を解説。
弁当店の倒産急増
コメ高騰が直撃
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「街の弁当屋」が消えていく――。2025年、全国で「弁当店」の倒産件数が過去最多ペースで推移している。テレワークの定着によるランチ需要の減退、そして何より“お米”の高騰が経営を直撃。長年地元で親しまれた弁当店が、静かに暖簾を下ろしていく現実に、今あらためて向き合う時が来ている。
見出し | 要点 |
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倒産件数の増加 | 2025年1〜5月で22件、前年同期を上回るペース |
需要の変化 | テレワークで法人需要減、法事・会議向けも縮小 |
経営の圧迫要因 | コメを中心とした食材高騰・人手不足・価格転嫁難 |
生き残りの模索 | 廃棄ロス削減や販売先拡大で新たな収益源を模索 |
なぜ「弁当店」の倒産が急増しているのか?
コロナ禍以降の需要変化が直撃
2025年に入り、駅弁業者や仕出し業者を含む「弁当店」の倒産件数は1月から5月で22件と、前年同期を超える水準に到達した。とくに影響が大きかったのは、コロナ禍を経て定着したテレワークやオンライン会議によって、事業所向けの日替わり弁当や会議弁当の需要が激減したことだ。これまで法人向け販売を主軸にしてきた業者にとって、市場の前提が根底から覆されたと言ってよい。
原材料費の高騰と価格転嫁の困難
業績の悪化を加速させたのが、近年の食材価格高騰だ。とりわけ米価の上昇は弁当店にとって致命的な打撃である。弁当の構成比に占める「ご飯」の割合は高く、価格転嫁が難しい状況で利幅が削られていく。スーパーやコンビニの「ワンコイン弁当」との価格競争も加わり、末端価格に転嫁できない中小店は赤字を余儀なくされている。
コメ高騰が及ぼすインパクトの大きさ
例えばある地方都市の老舗弁当店では、通常使用していた新潟県産コシヒカリの価格が前年比20%上昇。備蓄米の使用も検討されたが、味や品質が常連客に与える印象への影響を懸念し、泣く泣く価格据え置きでの営業を継続していた。結果、収益は前年同期比で30%以上減少し、2025年4月に閉店を決断した。
2025年の弁当店倒産増加には、経済要因と労務要因の複合的な圧力が背景にある。物価高だけでなく、長時間労働や早朝出勤が常態化する現場環境は若年層に敬遠されがちで、調理師や配送スタッフの人材確保も深刻な問題となっている。
特に小規模店では、オーナー1人の負担が肥大化しており、体調不良など些細な変化が廃業の引き金になり得る。「人がいないから閉めざるを得ない」。そんな声も珍しくなくなった。
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テレワークの定着で昼食ニーズが減少
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鶏肉・油・コメなど原材料高騰が続く
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労働時間の過酷さが後継者不在を招く
項目 | 大手弁当チェーン | 地元密着型・中小弁当店 |
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仕入れ価格 | スケールメリットで抑制 | 個別仕入れで価格高騰直撃 |
販売価格転嫁 | 店舗数・顧客基盤で可能 | 地域競争で価格転嫁困難 |
採用環境 | 広域採用・待遇改善可能 | 人材確保が困難・過重労働 |
販売チャネル | EC・業務提携も活用 | 地域客中心で販路限定的 |
中小の弁当店はどうやって生き残りを図っているのか?
販売チャネルの多様化がカギ
倒産が相次ぐ一方で、生き残りに向けた試行錯誤も始まっている。ある都内の弁当店では、Uber Eatsや出前館などデリバリーアプリの活用によって、従来の来店依存から脱却。法人向け宅配を廃止し、個人向けの在宅ランチ市場にシフトした結果、売上のV字回復を果たした。
廃棄ロス削減と“おかずの再設計”
別の老舗では、「日替わり弁当」を廃止してメニューを週替わりの固定制に変更。仕入れ・調理工程の簡略化によって、余剰食材と廃棄の削減を実現している。また、コスト高の鶏肉の代わりに豆腐ハンバーグや大豆ミートを導入し、“ヘルシー志向”の打ち出しで新たな層の顧客を獲得した。
地域イベントやSNSとの連携
例えば、広島県の「おべんと屋いちえ」は、地元のマルシェイベントとタイアップし、数量限定販売を実施。Instagramと連動した予約販売も導入し、無駄を最小限に抑えつつ話題性を確保している。結果、従来の30代~50代主婦層に加え、20代の若年層からの注文も増加したという。
中小弁当店の多くは、「変化を恐れず動いた店」が生き残っている。販売先を“店内”から“外の市場”へ、商品内容を“定番”から“ターゲット特化”へと進化させた業者は、地域の支持を得てしぶとく踏みとどまっている。
同時に、「食べる人の気分」を察知する力も問われている。単に“安い”だけではリピーターは得られない時代。だからこそ、「誰に・何を・なぜ届けるのか」を再構築することが、中小経営者に突きつけられている。
倒産危機 → 経営見直し → 対策実行 → 生き残りパターン
倒産リスク増加
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主因の把握(米高騰・需要減)
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販売スタイルの再定義(デリバリー・イベント連携)
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商品構成の見直し(コストダウン・健康志向)
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新規客層開拓・赤字脱却
この記事は「地域弁当店の経営者」視点と「消費者の購買感覚」の交差点から構成しています。読者の立場からは「応援したくなる店」の基準が浮き彫りとなる内容であり、単なる倒産ニュースではなく、「共に考える記事」として読まれることを意図しています。
この流れは食文化にどんな影響を与えるのか?
弁当という“生活文化”の転機
弁当は単なる「昼食」ではない。それは家庭の延長であり、手作りの象徴でもあった。だが、この連鎖的倒産が示しているのは、「弁当=温もり」という価値観そのものの危機だ。コンビニ弁当や冷凍食品が広がるなか、“人の手が込められたもの”への需要が希薄になりつつある。
あまりに静かな終わりだった。
潰れた弁当店のドアには、貼り紙一枚。それが何百人分の記憶の終わりになる。
僕たちは「忙しい」や「効率化」の名のもとに、何を失ったのか。コンビニ弁当はある。でも、そこに「名前」はない。
かつて弁当は、手間と時間と気持ちの縮図だった。いま、それが“割に合わない”と切り捨てられていく。
きっと大事なのは、合理化ではない。もう一度、問い直す時が来ている。
——あなたは、どこの弁当を食べたいですか?
FAQ
Q1. なぜ弁当店の価格はあまり上がらないの?
A. 価格競争の激しい市場のため、客離れを懸念して転嫁が困難です。
Q2. 2025年の倒産件数はどのくらい?
A. 1月〜5月で22件。過去最多のペースで推移しています(東京商工リサーチ調べ)。
Q3. 個人経営の弁当店でも生き残る方法はある?
A. デリバリー導入、地域イベント連携、メニューの健康志向化などが有効です。
Q4. この問題の今後の見通しは?
A. 原材料高が続く限り、構造改革の動きが一層進むと見られます。淘汰と再編が同時に進む可能性があります。