史上最多45度の優勝を誇る元横綱・白鵬翔氏が、日本相撲協会を退職することを発表。記者会見では「相撲に愛され、相撲を愛した25年でした」と語り、相撲界への深い感謝を示した。今後は“世界SUMOグランドスラム”創設などを通じ、相撲文化の国際的発信を目指す。相撲界にとって何を意味するのか――。
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大相撲史に燦然と名を刻む元横綱・白鵬翔氏が、日本相撲協会からの退職を発表した。現役時代に前人未到の優勝45回を成し遂げた彼は、引退後も親方として後進を指導してきたが、新たな夢の実現に向けて相撲協会の「外」からの貢献を決意。「相撲に愛され、相撲を愛した25年」と語った言葉には、競技人生への深い感謝と次世代への強い意志が込められていた。
なぜ白鵬翔氏は相撲協会を離れる決断をしたのか?
新たな夢への移行と、外からの貢献という選択
6月9日、東京都内で行われた記者会見で、元横綱・白鵬翔氏が日本相撲協会からの退職を正式に発表した。白鵬氏は「自らの判断で退職を決めた」と述べ、今後は相撲の振興に“協会の外側”から携わる意向を表明。「新たな夢」として掲げたのは、少年相撲大会「白鵬杯」の拡張と、国際的相撲大会「世界SUMOグランドスラム」の創設だ。
協会内での指導者としての軌跡と、その終焉
白鵬氏は2021年秋場所後に現役を引退し、年寄「間垣」を襲名。2022年には「宮城野」を継承し部屋を主宰したが、元幕内・北青鵬の暴力問題により降格処分を受け、宮城野部屋は閉鎖されることとなった。以後、弟子とともに伊勢ケ浜部屋へ転籍し、部屋付き親方として活動を続けていた。しかし、その状況に区切りをつける形で、6月9日付で退職届を提出し、正式に受理された。
相撲への恩返しと「未来への責任」
白鵬氏は会見で、「相撲に愛され、相撲を愛した25年」と総括しながら、「今後は国内外問わず、相撲の価値と魅力を新たな形で伝えていく」と語った。その背景には、自身の出身地モンゴルとの国際交流や、相撲のグローバル化という信念がある。引退後も相撲界に恩返ししたいという彼の姿勢は、「協会を離れる=終わり」ではなく、「外からの貢献=新たな始まり」という決断に現れている。
白鵬杯から“世界SUMOグランドスラム”へ──構想の全貌とは?
白鵬杯が築いた国際的基盤
2009年から毎年開催されてきた「白鵬杯」は、国内外から少年力士が集まる国際色豊かな大会として定着してきた。白鵬翔氏が中心となり、相撲の魅力を未来へと繋ぐ「登竜門」として機能している。今年の大会には10カ国以上からの参加があり、白鵬氏が目指す“相撲の世界化”の実験場とも言える存在だ。
SUMOグランドスラム構想とは何か?
退職会見で明かされた「SUMOグランドスラム構想」は、世界各地で相撲大会を開くという野心的なプロジェクトだ。例えば、パリやロサンゼルス、ウランバートルといった都市を巡回する国際大会を想定しており、相撲を柔道や剣道のような“世界武道”へと昇華させようというビジョンがある。
伝統の枠を超えるグローバル展開の課題
しかし、伝統に支えられた相撲文化を世界にどう届けるかは簡単ではない。体重無差別・精神修行・しきたりなど、日本独自の価値観をどう翻訳するかが鍵となる。また、審判制度や番付システムなどの形式的調整も不可避となるだろう。だが白鵬氏は「形ではなく魂を伝えたい」と述べ、相撲の精神性に重きを置いたアプローチを重視している。
白鵬氏は今後、モンゴルだけでなくアジア、ヨーロッパ、北米の教育機関や自治体とも連携し、相撲の文化的価値を伝えるプロジェクトを模索中だ。実際にウランバートル市やフランス柔道連盟とも対話を開始しており、相撲を“競技”ではなく“文化資産”として捉える動きが加速している。
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「礼に始まり礼に終わる」精神の国際化が目標
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土俵・化粧まわし・呼出しなどの保存的要素も展示化へ
【相撲の国際化ステップ:白鵬構想フロー】
白鵬翔という存在が、相撲界に遺した“問い”とは?
絶対王者としての功績と影
白鵬翔は、記録上でも精神的にも“史上最強”の横綱だった。しかし、時に土俵で見せる闘志や振る舞いは物議を醸し、伝統と革新のあいだで常に議論の的であった。彼が引退・退職を選んだ今、私たちは「相撲とは何か」を問い直す時期に来ているのかもしれない。
相撲の未来を誰が引き継ぐのか
白鵬のように“相撲を変えようとした力士”が去った今、その精神を継ぐ者は誰か。照ノ富士が病と闘いながら横綱を務める中、若手の活躍が待望されている。だが同時に、相撲の“型”や“価値観”そのものを問い直す視点が今後必要になる。
問いかけとしての白鵬退職
白鵬の退職は、制度改革・国際戦略・師弟関係といった複数の観点を呼び起こす。「個人の実力」と「制度の限界」が交錯する場としての相撲協会のあり方も含め、単なる“人事”では終わらない含意がある。
白鵬翔という人物は「横綱の象徴」であると同時に、「常に揺さぶる者」でもあった。既成の美徳と異文化の衝突、勝利への執念と品格への視線──そのすべてが、私たちに“日本文化とグローバル化”の折衷を考えさせる鏡だったのかもしれない。
私たちは、白鵬を“壊した”のではないか。
伝統を守る名のもとに、異物を排除し、才能を管理しようとする社会。だが、文化とは常に変化するものであり、その最前線に立つ者は孤独を受け入れなければならない。白鵬翔という巨大な才能が、協会という構造の中で自由に育たなかったのだとすれば、それは制度の敗北だ。
彼が外に出たことは、敗北ではない。むしろ“問いを突きつけ続ける”という、相撲への最後の愛かもしれない。
✅FAQ
Q1:白鵬氏の退職は協会側の圧力によるものですか?
A1:本人は「自らの決断」と明言しており、強制的なものではないとされています(メディア報道より)。
Q2:白鵬杯やSUMOグランドスラムの詳細な日程は?
A2:現時点では未発表ですが、2026年以降の構想として準備段階に入っています(調査中)。
Q3:白鵬氏の今後の職業・立場は?
A3:相撲振興財団の設立が検討されており、実業家としても活動する可能性があります。
Q4:伊勢ヶ浜部屋にいた弟子たちはどうなりますか?
A4:すでに伊勢ヶ浜部屋に所属したまま訓練を継続しており、指導体制も継続中です。
今回の退職には、制度的な問題や不祥事の影響も少なからずあったが、白鵬氏自身が「後ろ向きな理由ではない」と明言したことが印象的だ。逆境を転機に変えるその意志は、指導者としての限界を感じた結果ではなく、新たな可能性に挑戦するための自発的な一歩だろう。
また、少年相撲大会「白鵬杯」はこれまでに15回開催されており、既に国際色を帯びた大会として注目を集めている。これを起点に“世界相撲”という新しい市場を築く構想は、相撲の未来を左右する布石になるかもしれない。
協会内と外部での貢献のちがい
項目 | 協会内での活動 | 協会外での活動 |
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役割 | 親方・指導者 | 国際普及・相撲文化の発信者 |
対象 | 弟子・協会員 | 国内外の相撲ファン・次世代 |
制約 | 協会方針に準拠 | 独自方針で自由な展開 |
発信力 | 国内中心 | グローバルな影響力 |