東京・銀座にある「スウォッチグループ」本社ビルで、エレベーターの支柱が傾く事故が発生。かごは本来の位置からズレて停止し、現場は一時騒然となった。けが人は出なかったものの、安全性への不安が広がる中、警視庁が原因を調査中。
銀座スウォッチビル
支柱傾斜事故
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東京・銀座でエレベーター支柱が傾く事故 けが人なしも不安の声
何が起きたのか?
▍事故はいつ、どこで発生したのか?
2025年6月9日午後2時ごろ、東京・銀座7丁目の「スウォッチグループジャパン」本社ビルで、エレベーターに関する緊急通報が入りました。「大きな音がして、エレベーターが倒れそうだ」との119番通報により、警察と消防が駆けつけました。
現場は高級腕時計ブランドが入居する近代的なビルで、ショッピング客も多い繁華街の中心。ビルの外装から一部露出するガラス製の外付け型エレベーターが停止し、明らかに構造に異常が見られたため、安全確保のため立ち入りが制限されました。
通報から間もなく、かごが建物の2階と3階の中間で停止し、乗降口から大きく外れた位置にあることが確認され、支柱全体が傾いていたことがわかりました。
▍現場の様子や通報内容は?
通報者は近隣の買い物客とみられ、現場付近には大きな衝撃音が響いたとの証言も出ています。周囲には観光客や通行人も多く、騒然とした雰囲気に包まれました。
一部の目撃者は、「かごが壁に寄りかかっているようだった」「乗っていなくて本当によかった」と不安を口にしました。エレベーター内部には人はおらず、けが人も出なかったことが確認されていますが、建物利用者への心理的な影響は大きいものでした。
ガラス張りの外装に加えて、通りからもかごの様子が一目で確認できる構造であったため、報道映像でも「かごが支柱ごと傾斜している異常状態」がはっきりと映し出されました。
▍ガラス製エレベーターの構造とは?
このエレベーターは、油圧式で下から押し上げるタイプの構造であり、ガラスで囲われた外付け型。通常は3階から1階へと静かに上下する設計ですが、事故当時は「3階から下降中に突然停止した」とスウォッチ側が説明しています。
外観の美しさと静音性から高級施設に多く導入される一方で、構造点検や油圧装置の負荷管理には高度な技術が必要とされます。今回の事故では、支柱自体が傾いたことで、内部のかごが正規位置からずれてしまい、停止せざるを得ない状況に陥りました。
このような油圧式の外付けエレベーターは、地下ピットや上部モーターを持たない設計が多く、視覚的に開放感を与える反面、構造支持の“縦支柱”に集中荷重がかかる特徴があります。
特に商業施設で頻繁に上下するタイプは、点検周期が短く設定されており、摩耗やねじれ・軸力の変化が事故のリスク要因となります。スウォッチビルでは、5月16日に最終点検が行われ、「異常なし」と記録されていたことも公表されており、原因解明が焦点です。
油圧式エレベーターの構造的留意点
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支柱一本構造の場合、偏荷重に脆弱
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落下ではなく「斜め滑走」するリスク
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オイル漏れやシリンダー圧異常も停止原因となる
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外付け型は建物本体との“構造連携”が薄いことも
項目 | 通常のエレベーター | 銀座スウォッチビルの構造 |
---|---|---|
動作方式 | ロープ式(上部モーター駆動) | 油圧式(下部から押し上げ) |
支柱の配置 | 建物内部に格納 | 外付けガラス柱1本支持 |
安全停止装置 | 多重ブレーキ+緊急着床 | 圧力感知式の緊急バルブ |
景観・デザイン | 内装一体型・閉鎖構造 | ガラス張り・通行人からも見える |
今回のような事故の発生例 | 稀(点検強化済) | 過去に国内でも数件類似事故あり |
なぜ支柱が傾いたのか?その原因は特定されたのか?
▍直前点検では異常なし、にもかかわらず…
スウォッチグループによると、事故のおよそ3週間前にあたる5月16日に、エレベーターの定期点検が実施されていました。この点検では「構造・駆動部・安全装置いずれも異常なし」と記録されており、事故当日はその直後の通常運転中でした。
そのため、警視庁と東京消防庁は、経年劣化や見落とされた構造的な損傷、さらには設置基礎の破損や地盤変動の可能性も視野に入れて調査を進めています。特に支柱が「根元から」斜めになっていたという証言が複数あり、地中アンカーの不具合や、外的振動の影響が疑われています。
▍支柱そのものの“ねじれ”や偏荷重の蓄積か?
警視庁の初動調査では、支柱の傾斜角は3度〜5度ほどだったと推定されています。一見すると小さな数値ですが、エレベーターの重量と乗員の安全を支える構造にとっては致命的なズレです。
油圧式エレベーターの支柱は、片持ち構造に近いかたちで上下の力を受けるため、設置当初からのわずかな傾斜が長期間にわたって応力として蓄積され、経年劣化やボルトゆるみと共鳴しながら“ねじれ”を誘発した可能性もあります。
▍今後の調査とビル側の対応
現在、警視庁と消防は構造技術者と協力し、支柱基礎部の解体調査と油圧システムの分解検査を進めています。事故原因が構造欠陥であれば、全国の類似型エレベーターにも波及する可能性があり、国交省が情報収集に乗り出す事態にも発展しています。
スウォッチ側は、当該エレベーターの運用を無期限停止とし、専門業者による再設計とリプレースの検討に入るとしています。
🔁エレベーター支柱傾斜の原因
[最終点検(正常)]
↓
[通常運転中に異音と傾斜発生]
↓
[外観確認:支柱傾斜+かご停止]
↓
[初動調査:根元支持部の不整合]
↓
[推定原因]
├─ 経年劣化/荷重偏在
├─ 支柱ゆるみ/設置不備
└─ 地盤変動の影響(調査中)
項目 | 要点 |
---|---|
点検状況 | 5月16日の定期点検では異常なしと記録 |
支柱傾斜の兆候 | 地上からも確認できる角度にまで傾斜 |
原因仮説 | 支柱基礎の損傷/設置不備/地盤の微変動など |
今後の対応 | 運転停止+原因究明+国交省も注視へ |
建物やエレベーターの異常は、外観だけで判断しにくく、今回のような「事前点検をクリアしていた事故」は利用者にとって大きな不安要素となります。
この事件は、単に“構造トラブル”という工学的問題だけでなく、「点検システムの限界」や「美観重視によるリスク管理の後回し」といった、現代都市構造の盲点を突く警鐘でもあるのです。
都市の“美観重視”が安全を置き去りにしていないか?
▍“ガラスエレベーターの幻想”と構造現実の乖離
都市の中心部、特に銀座のような高級商業地では、景観と先進性が重視されるあまり、構造安全性よりも「見た目」の設計が優先されがちです。今回のエレベーターも、ガラス製の外観が建築物のシンボルとなっていた一方で、「支柱1本による支持」「外壁との連結部なし」といったリスクをはらんでいました。
▍構造美とリスク管理は両立できるのか?
今回の件で問われているのは、見た目の設計美ではなく、それを“安全に成り立たせる仕組み”があったかどうかです。建築基準法の中でも、視覚的演出より構造安全が最優先されるのが原則ですが、設計段階で「ビジュアル優先」の風潮が支配していた可能性もあると専門家は指摘しています。
エレベーターは上下動に伴い人命を預かる機器であり、「設備の顔」であると同時に「命綱」でもあります。構造美と安全管理の両立は、都市設計の根幹にあるべきです。
「点検済」=「安心」という先入観が、いかに危ういかを今回の事故は浮き彫りにしました。読者自身がビル設備に頼る日常の中で、「なにを基準に信頼するのか?」という視点転換が求められています。
見た目の美しさは、時に人の目を曇らせる。
だが構造は、嘘をつかない。
支柱が傾いた瞬間、私たちの“信頼”もまた音を立てて崩れた。ガラスの向こうに透けていたのは、設計思想の不在だったのかもしれない。
都市は飾られる。だが、本当に支えるのは、目に見えない鋼材と理念である。
📌FAQ
Q1:けが人は本当にいなかったの?
A1:はい。事故当時、エレベーター内には誰もおらず、けが人は確認されていません。
Q2:スウォッチビルの営業は続いている?
A2:一部立ち入り制限はありますが、ビル自体の営業は続いています(エレベーターは停止中)。
Q3:今後同じタイプのエレベーターも止まる?
A3:現時点では停止措置は取られていませんが、国交省が類似構造の調査を検討中です。
Q4:地震の影響はあったの?
A4:当日、震度を伴う地震の記録はありませんが、過去の地震による累積変形が原因の可能性も調査中です。
項目 | 内容 |
---|---|
事故発生日時 | 2025年6月9日午後2時頃 |
事故内容 | 外付けガラスエレベーターの支柱傾斜・停止 |
原因(推定) | 支柱設置不備・荷重蓄積・地盤変動など |
対応状況 | 運用停止/警視庁・消防・専門機関が調査中 |