「くず」「消えろ」と暴言を繰り返し、児童に体罰まで――長野の小学校教諭が不適切な言動で減給処分に。教育現場の密室性や全国で増える類似事例、教育委員会の対応と再発防止策の課題についても詳しく整理しています。
児童に暴言、体罰
小学校教諭を減給処分
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長野県の小学校で、36歳の女性教諭が児童に対して「くず」「死ね」「消えろ」といった暴言を繰り返し、頭や頬を叩く体罰も行っていたことが明らかになりました。県教育委員会は12日付でこの教諭を減給処分とし、教育現場への信頼失墜に強い懸念を示しています。日常的な指導の中で、なぜこのような行為が起きたのか。そして私たちは何を教訓とすべきなのか――事件の全容を追います。
なぜこの教諭の処分が問題になったのか?
どんな言動や体罰が行われたのか?
2025年6月、長野県教育委員会は中信地区の小学校に勤務する36歳の女性教諭に対して、減給の懲戒処分を下しました。報告によれば、この教諭は授業中の教室で、児童5人に対して指で頭や頬を複数回叩くなどの体罰を繰り返していたとされています。
さらに重大だったのは、その言動です。6人の児童に対し、「くず」「死ね」「消えろ」といった人格を否定する暴言を複数回にわたって他の児童の前で口にしていたことが確認されました。これらの言葉は一時的な感情ではなく、ある程度繰り返されていたものであり、日常的な指導の中で常態化していたとみられています。
なぜ教諭はこのような行為に及んだのか?
教諭本人の説明によれば、対象となった児童は授業中に騒ぐなどの問題行動を取っており、その都度、口頭での指導は試みていたということです。しかし、「他の児童の学習の妨げになる」との理由から、ついには手を出したり、人格を傷つける発言に至ったと語っています。
この供述からは、「教室内の秩序を保つため」という名目が読み取れますが、たとえ背景に困難な指導環境があったとしても、暴力的な行動や言葉での指導が正当化されることはありません。
他の児童の前でも行われた言動
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授業中、教室内で怒鳴るように「死ね」と発言
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注意された児童の頬を叩き、その後「おまえはくずだ」と罵倒
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別の児童が注意されている場面で、他の児童も萎縮する雰囲気があったとの証言も
見えない傷と教育の信頼性
体罰や暴言は、受けた子どもの身体だけでなく心に長く残る傷をもたらします。特に教育の場では、教員が絶対的な存在となるため、言葉の重みが格段に増します。
この教諭のように「秩序維持のため」「指導の一環」として加えられる暴言や体罰は、結果的に児童の自己肯定感を破壊し、教室内に萎縮と不信の空気を広げてしまいます。教育とは、学力だけでなく人間関係や尊重の価値を学ぶ場所であるはずです。
子どもが受ける可能性のある心的影響
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自己否定感の定着
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教室や登校への恐怖
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他の大人に対する不信感
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感情表現の抑制・トラウマ化
通常の指導と処分対象行為の違い
項目 | 通常の指導 | 今回の処分対象行為 |
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口頭での注意 | 児童の行動に対し冷静に伝える | 「死ね」「くず」など人格否定の言葉 |
行動の制止 | 教材や体を使わずに声で制御 |
指で頬・頭を叩くなどの身体的体罰 |
教室内の雰囲気 | 全体の学習を尊重した対応 | 他児童が見ている前での強圧的態度 |
教育現場で同様の問題は他にもあるのか?
全国で繰り返される「言葉の暴力」と体罰
今回のような教諭による暴言・体罰の問題は、決して長野県内だけの話ではありません。文部科学省が発表した令和5年度の統計によれば、全国の小中学校で確認された体罰の事例はおよそ1,800件にものぼります。
特に、「死ね」「バカ」などの暴言や無視といった心理的虐待に該当する行為は増加傾向にあり、保護者や地域社会からの相談件数も急増しています。
また、教職員のメンタル不調や人員不足により、「冷静な対応ができない状況」が常態化している学校も少なくありません。こうした背景が、暴言や体罰というかたちで露呈してしまうのです。
近年の類似事例(全国)
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東京都内の中学校:教諭が授業中に児童を机ごと蹴る(2024年)
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福岡県:担任が児童を無視し続け、不登校に(2023年)
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北海道:複数児童への暴言・暴力で懲戒免職(2022年)
教育委員会や学校がとるべき再発防止策は?
このような問題の再発を防ぐために、教育委員会や学校現場には以下のような取り組みが求められています。
1つ目は、定期的な教職員研修の徹底です。特に「感情のコントロール」「子どもの権利意識」などを重視した研修カリキュラムが急務となっています。
2つ目は、通報・相談体制の整備です。児童や保護者が安心して相談できる第三者機関の設置や、内部告発を受け止めるホットラインの活用も重要です。
3つ目は、チームで指導にあたる意識改革。1人の担任に負担が集中する体制から、複数の目で子どもを見守る仕組みへの転換が期待されます。
不適切指導の発生と教育委員会の対応
問題行為の発生
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授業中に暴言・体罰が複数回確認される
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児童・保護者・他教員からの報告
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校内調査→教育委員会による事実認定
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懲戒処分(減給)を決定
↓
教委が公表→再発防止策を検討中
見出し | 要点 |
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全国的な実態 | 年間1,800件を超える体罰・暴言事例 |
背景要因 | 教職員の精神的負担や教育体制の硬直 |
必要な対策 | 研修・相談体制・チーム指導体制の強化 |
社会の役割 | 教育現場の監視と支援、風通しの良さの確保 |
なぜ学校の「密室性」が問題を深刻化させるのか?
学校という場は、外部からの目が届きにくい「閉鎖的な空間」になりがちです。特に教室内での教員と児童のやり取りは、外部の監視が少なく、問題が起きても気づきにくいという構造的な問題があります。
また、保護者が子どもの訴えを「わがまま」や「誤解」として軽視する傾向もあり、早期の発見や支援を妨げる要因にもなっています。学校外の声や視点を、もっと教室内に届ける工夫が求められています。
「傷つける言葉」の代償
言葉は人を育てる力を持つ。
しかし同時に、人の心を簡単に壊すこともできる。
「死ね」と言われた子どもが、その言葉を一生忘れないように。
言葉を吐いた側もまた、自分の手で信頼を投げ捨てることになる。
教育の現場は、言葉の重みを最も知るべき場所だ。
だからこそ、暴言を「つい言ってしまった」では済ませてはならない。
「叱る」と「傷つける」の違いを見誤った瞬間、教育は暴力へと変わる。
❓FAQ|よくある質問
Q1. この教諭は懲戒免職にはならなかったの?
A. 今回は「減給処分」にとどまっています。重大性はあるものの、懲戒免職に至るまでの証拠や繰り返しの度合いなどの判断が影響したと見られます。
Q2. 子どもたちのケアはされているの?
A. 県教委は「必要に応じてスクールカウンセラー等が対応」としていますが、具体的な支援内容は公表されていません。
Q3. 他の教員はこの問題に気づかなかったの?
A. 校内調査の結果、同僚の教員からの報告もあったとされており、学校内でも問題視されていた可能性があります。
Q4. 保護者はどう動いたの?
A. 複数の保護者から県教委への相談があり、これが正式な調査開始のきっかけになったと報じられています。
項目 | 内容 |
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処分内容 | 36歳女性教諭に減給処分(6月12日付) |
問題の本質 | 授業中に児童へ暴言・体罰を繰り返す |
社会的波紋 | 教育現場への信頼失墜・類似事例の存在 |
再発防止策 | 教員研修・相談体制・複数指導体制の強化 |