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三重県内の動物病院で診療を行っていた獣医師が、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染した疑いで死亡していたことが明らかとなった。感染源は治療中のネコと見られ、マダニによる直接感染ではない可能性も指摘されている。日本獣医師会は全国の獣医師に対し、動物診療時の防護徹底を呼びかけている。
なぜ獣医師が感染したのか?
接触による感染例の可能性
SFTSは、主にマダニに刺されることで感染するウイルス性疾患であるが、近年では感染動物から人間への感染例も報告されている。今回死亡した獣医師は、SFTSに感染していたネコの治療にあたっており、マダニに刺された痕跡は見つかっていない。これは、感染ネコからの体液や飛沫による感染であった可能性を示唆している。
獣医師会の注意喚起と背景
日本獣医師会は6月12日、全国の獣医師会に対して注意喚起のメールを送付し、診療時にはマスクやフェイスシールド、手袋、長袖着衣の着用といった感染防止策の徹底を要請した。特に黄疸や高熱などSFTSの典型的な症状が見られる動物に対しては、隔離診療の徹底も推奨されている。
感染動物の致死率と拡大リスク
SFTSはヒトにおいても致死率が高く、最大で30%とされている。ネコにおいてはさらに深刻で、約6割が死亡に至るとされる。感染しているネコが外部に放たれた場合、他の動物や人間への感染拡大リスクもあるため、感染動物の取り扱いは慎重を要する。
感染ネコに見られる典型的症状とは?
黄疸、出血、発熱…見逃せない兆候
感染ネコには、黄疸や発熱、血便などの重篤な症状が現れるケースが多い。治療には抗生物質や点滴などの支持療法が用いられるが、明確な特効薬は存在せず、多くが死に至ることもある。
人間に感染するケースはどれくらいあるのか?
マダニ以外の感染経路に注意
過去には飼い主が感染した事例も報告されており、ネコやイヌの体液、飛沫を通じた感染が成立することが分かっている。ペットに異常があれば、直接触れず獣医師に相談することが望ましい。
SFTS感染症における動物病院の現場リスク
SFTSに感染したネコが動物病院に搬送されるケースは、春から夏にかけて増加する傾向がある。今回のように、院内で獣医師が感染する例は非常に稀ではあるが、感染リスクはゼロではない。獣医療の最前線で働く人々にとって、日常的な感染症対策の有無が命運を分けることもある。
一方で、飼い主側もSFTSに関する知識が乏しい場合が多く、症状の出たペットを通常通り抱きかかえたり、自宅で看病を続けたりしてしまうケースもある。人獣共通感染症としての周知が急務である。
項目 | 内容 |
---|---|
感染経路 | マダニによる吸血/ネコやイヌとの接触・飛沫 |
感染時期 | 春〜秋に多発(特に5〜9月) |
致死率(ヒト) | 約12〜30%(国内平均) |
致死率(ネコ) | 約60%で高リスク |
感染拡大をどう防ぐべきか?
SFTSに対応した診療マニュアルの整備が急務
日本国内では近年SFTSによる死亡事例が増加しており、特に動物診療に関わる医療従事者のリスクが問題視されている。今回の獣医師死亡を受けて、動物病院における感染予防策の再点検が求められている。
現状、感染動物に対する防護指針は存在しているものの、現場によって実施レベルには差がある。標準化されたトリアージマニュアルや、陽性動物の取り扱い手順書などの整備が求められている。
飼い主への教育と連携体制
もう一つの盲点は、飼い主への情報提供である。ネコがSFTSに感染しても外見上の違いが分かりづらく、「食欲がない」「ぐったりしている」程度の変化しか見られないこともある。そのため、地域獣医師会と連携したチラシ配布や、SNS・LINEを使った警告発信が重要だ。
【SFTS感染の主な経路と重症化までの流れ】
感染個体発見
↓
SFTSを疑う症状(黄疸・高熱・血便)あり
↓
防護装備着用 → 隔離診療ルームへ誘導
↓
PCR検査 or 症状判断で確定
↓
陽性判明時 → 保健所と連携・飼い主説明
↓
関係者・接触職員の健康観察・報告体制へ
見出し | 要点 |
---|---|
獣医師の感染対策 | マスク・ゴーグル・手袋の常時使用が必須 |
飼い主への啓発 | ネコの異常行動=即受診+直接接触は避ける |
院内対策 | 感染疑い個体の隔離導線と診察ルーム分離 |
地域体制 | 保健所・獣医師会・動物保護団体の協力体制強化 |
動物と関わる人はどのような注意が必要か?
獣医師・動物病院関係者への警鐘
今回のSFTS死亡事例は、感染経路がマダニによる直接的な咬傷ではなく「感染したネコとの接触」であったとみられており、獣医師や動物看護師、ペットの飼い主にとって警戒すべき新たな局面を突きつけている。
日本獣医師会は、6月12日付で全国の獣医師会に向けて「診療時の個人防護具の使用」や「感染動物との接触時間の最小化」などを含む注意喚起を発出した。実際、SFTSはネコを介して人にうつるケースが過去にも報告されており、致死率の高さからも感染拡大の抑止が急務となっている。
飼い主がすべき対策とは?
SFTSは動物病院だけでなく、家庭にいる飼いネコ・イヌが媒介となる可能性がある。特に外出するネコはマダニと接触しやすく、黄疸や嘔吐といった異常があれば早急に診察が必要だ。
飼い主ができる対策としては以下が挙げられる:
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草むらへの立ち入りを避ける
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マダニ予防の薬を定期的に投与する
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発熱・下血・黄疸などの兆候に注意し、異常時は即診察
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診察後は自宅での隔離・ケアの徹底
獣医師会が強調する予防策
三重県獣医師会をはじめ、獣医師団体はSFTSの人獣共通感染リスクを重く受け止めている。
とくに感染動物と密接に関わる機会が多い獣医療従事者に対しては、次の3点を徹底すべきと指摘している。
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①PPE(個人防護具)の標準装着
┗ 手袋・マスク・ゴーグル・防護服の使用を徹底する -
②隔離室での診察対応の導入
┗ 感染が疑われる動物は専用エリアで管理する -
③診療後の洗浄と消毒の励行
┗ 診察終了後の消毒作業を義務化し、院内感染を防ぐ
SFTSウイルスは、感染した動物の体液や分泌物に多く含まれており、「咬傷」や「くしゃみ・よだれ・排泄物」などからヒトへと感染する。
とくにネコはウイルスの増殖量が多く、無防備な接触をすると人間側がウイルスに曝露されるリスクが高まる。飼育者や診療者が「ネコだから安全」と油断するのではなく、ウイルスの特性そのものを理解し、飛沫感染・接触感染の危険性を正確に認識すべきである。
優しさの裏側にあるもの
他者を救うために、誰かが命を落とす——この出来事は、医療従事者の宿命をあらためて問いかけてくる。
獣医師は、言葉を持たない命に寄り添い、ただの“仕事”ではなく“誓い”としてケアを引き受ける。
けれどそのやさしさの裏側には、感染という目に見えないリスクが忍び寄る。
「ネコを助けた手が、命を縮めるかもしれない」
そんな矛盾を前に、我々はどう行動すべきか。やさしさを守るには、冷静な備えと、正しい知識が必要だ。
“救うための距離感”を、社会全体が考え直す時期に来ている。
❓FAQ(よくある質問)
Q1. SFTSはどこで感染するのですか?
A. 草むらや山林などに生息するマダニを通じて感染しますが、感染した動物との接触でも感染の可能性があります。
Q2. ペットから感染する危険はありますか?
A. はい。特にネコやイヌが感染していた場合、咬傷や体液からヒトにうつることがあります。
Q3. 予防のためにできることは何ですか?
A. 動物のマダニ予防薬の使用、草むらへの立ち入り制限、診察時の防護具着用などが推奨されます。