南風原町体育協会の50代職員が、運営費975万円を借金返済目的で私的流用。記録のない出金が108回確認され、管理体制の甘さが露呈した。協会側は事務局長の許可義務が形骸化していた点を認め、制度見直しに言及。全額返済の意思が親族より示されている。
体育協会職員975万円流用
親族告発で発覚
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沖縄県南風原町の体育協会に所属する50代の男性職員が、協会の口座から975万円を不正に引き出し、私的に使用していたことが明らかになった。わずか3か月間で108回もの出金を繰り返していたという。申告の場には親族が同伴しており、協会は警察への相談を含めた対応に乗り出している。
なぜ南風原町の体育協会で不正流用が起きたのか?
口座から108回の出金、その異常性と内部管理のずさんさ
南風原町体育協会の関係者によると、この50代男性職員は協会口座から約975万円を出金しており、その回数は3か月で108回にのぼる。1回あたりの金額は平均約9万円となり、いずれもATMで引き出された形跡があるという。
協会では、この職員が管理業務を長年にわたって担っていたが、定期的な監査や外部チェック体制はほとんど機能していなかったとされる。町の担当者は「職員に対する信頼が前提だった」と述べたが、それが逆に、チェック体制の緩さを許す温床となっていた。
「自分から申告」にも残る違和感、親族の同席が意味するもの
不正が発覚したのは2024年6月。男性職員は親族に付き添われ、協会側に「お金を使ってしまった」と自ら申告。申告のタイミングやその態度から、精神的に追い詰められた状態だったと推察されている。
ただし、協会内部では「発覚を恐れて事前に申告したのでは」との声も出ている。実際、6月以降に予定されていた町主催のイベント資金にズレが見られたことから、協会が内部で調査を進めていた最中だったという。
本件をめぐる協会側の記録管理にも問題があった。引き出しの痕跡は帳簿上に記載されていたものの、用途の記載がすべて「イベント準備費」「会議費」など曖昧な名目にとどまっていた。加えて、ATMの利用時間も早朝や深夜など不自然な時間帯が多く、担当者の裁量で処理されていた可能性が高い。
さらに、町と協会の間には明確な監督指針が存在せず、資金管理についてのチェック機能が形式的な報告のみに頼っていた実態が明るみに出た。町側は「今後、定期監査や出納検査の強化を図る」としているが、制度的な空白は今後の再発防止にも大きく影響する見通しだ。
不正会計事件における自治体別対応の違い
町と警察の対応はどう進んでいるか?
協会の対応と町の責任、制度の緩さが浮上
不正発覚を受けて、南風原町体育協会は当該職員を自宅待機処分とし、町と連携して事実関係の確認を進めている。記者会見では、協会顧問を務める赤嶺正之町長が「町民に深くお詫びしたい」と頭を下げ、管理体制の甘さを認めた。
教育委員会事務局長の桃原忍氏も、「本来は出金の際に許可と報告が必要だったが、多忙を理由に本人に一任してしまっていた」と説明。町と協会の連絡体制も曖昧で、教育委員会内の一部職員にしか報告義務がなかった点が浮き彫りとなった。
刑事責任と返済、協会の今後の方向性は?
協会は今後、被害届を与那原署に提出する方針だ。親族側は不動産売却などによって全額返済の意向を示しているが、刑事責任の所在についてはまだ明言されていない。
町側では、「申告があったからといって責任が消えるわけではない。刑事的な判断は警察と協議する」としており、協会としての懲戒処分や再発防止の制度設計も同時に検討している。
警察との初期連絡に際して、協会は被害届の提出と合わせて「協会が公的性質を有する任意団体であること」「口座の管理が事実上、町の支援金と一体で運営されていたこと」などを説明したという。この点が、刑事事件としての立件可否や量刑判断において争点となる可能性がある。
一方で、町側は今後、同様の委託団体や補助金管理団体についても実態調査を進める予定。予算規模に関わらず、事務処理の簡略化が不正の温床となっていた現状を見直し、「報告義務」から「監査義務」への制度変更も視野に入れている。
【協会資金の私的流用が発覚するまで】
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職員が協会口座から現金を複数回出金(4月〜6月に108回)
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協会が資金残高に異変を感じ、内部確認を開始
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資金用途の領収証が不在であることが判明
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6月11日、職員が親族同伴で申告
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協会が町と連携し、記者会見を実施
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被害届提出の方針を発表、返済計画に言及
前半のまとめ | 後半の注目ポイント |
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職員が協会口座から975万円を私的流用 | 被害届提出と返済意向、制度見直しへ |
3か月で108回の出金、内部チェックが不在 | 管理責任の所在と監査制度の欠如が浮上 |
親族に付き添われ自発的に申告 | 警察との連携と今後の処分判断が焦点 |
信頼が制度に負けた日
信頼で回していた——。そう言えば聞こえはいいが、それは制度を諦めたということでもある。
108回、わずか3か月で金を引き出す。それを誰も止めなかった組織。町の名前を冠した協会であっても、現金が無記録で出入りする。行政の隙間にある“公的な顔をした私的な空間”が、今回の舞台だった。
この国では、報告よりも慣例が優先される。書面よりも口頭が尊重され、疑うことは“失礼”になる。だが、不正はいつも、そこから始まる。
全額返済されるかどうかではない。誰が止めるべきだったか、その問いだけが、町の制度を揺らしている。
❓FAQ
Q:この協会は公的団体ですか?
A:南風原町体育協会は任意団体であり、町からの補助金などで運営されています。
Q:職員はどのような立場でしたか?
A:2021年に常勤採用された協会職員で、消耗品の購入や経理補助を担っていました。
Q:引き出しには許可が必要だったのですか?
A:出金には事務局長の許可と事後報告が必要とされていましたが、実際は任せきりの状態でした。
Q:被害届はいつ提出されますか?
A:協会は現在、与那原署に提出予定としていますが、正式な日程は明らかにされていません。
Q:損害は返済される見込みですか?
A:職員の親族が不動産を処分するなどして、全額返済を希望しているとされています。
項目 | 内容 |
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事件の概要 | 体育協会の職員が約975万円を私的流用。3か月で108回出金 |
発覚の経緯 | 職員が親族同伴で自発的に申告。協会が記者会見で公表 |
管理体制の問題 | 出金許可の形骸化、事後報告義務の機能不全 |
町と協会の対応 | 自宅待機処分、被害届提出準備、制度見直しの意向 |
今後の焦点 | 刑事責任の所在、全額返済の実現性、町の制度改革 |