ネットで購入した「高揚する成分」入りクッキーを摂取した男子大学生が、異常行動を起こして建物から飛び降り救急搬送された。事件は山梨県で発生し、県警は違法成分の有無を調査。検出はされなかったが、商品の安全性や販売経路への疑問が広がる。合法域の“グレー食品”の規制や消費行動にも影響が及びかねない。背景と制度の整理を行う。
高揚する成分入りクッキー
異常行動の大学生救急搬送
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ネット購入の“成分入りクッキー”で異常行動 男子大学生が飛び降り救急搬送
ネットで購入した“高揚作用のある成分”を含むクッキーを食べた男子大学生が、異常行動の末に建物から飛び降り、救急搬送された。事故は山梨県甲府市内の集合住宅で発生し、命に別状はないものの、全身に打撲を負った。県警は違法薬物の使用はなかったとしつつも、クッキーに含まれていた成分の入手経路と販売方法を調査している。
なぜクッキー摂取で飛び降りたのか?
摂取後に異常行動、錯乱状態に
事故は2025年5月中旬、甲府市内の集合住宅で起きた。被害に遭った男子大学生は、事前にネットで購入していた「高揚作用のある成分入り」とされるクッキーを食べた直後、意識がもうろうとし、叫び声を上げながら部屋から飛び出したという。
通報を受けて駆け付けた消防によって、全身打撲の状態で救急搬送されたが、幸いにも命に別状はないとされている。搬送時には会話ができず、医療機関内でようやく意識を回復したとされる。
山梨県警が薬物検査、違法成分は不検出
事件後、山梨県警は被害者の体内と残されていたクッキーを検査。一般的な違法薬物(大麻、MDMA、LSD、合成カンナビノイドなど)の反応は確認されなかったとされる。
しかし、同時に「一般的な薬物検査では特定できない化合物や模造成分が含まれていた可能性がある」との見方もあり、詳しい成分鑑定が進められている。いわゆる“脱法グミ”や“成分非開示系スイーツ”のように、表示と実態が乖離する販売品の一種と見られている。
どこで買えたのか? 拡散の経路と仕組み
調査関係者によれば、大学生がこのクッキーを購入したのは国内の大手通販サイトではなく、SNSで紹介された匿名販売サイトだったという。サイトは暗号通貨での決済を受け付け、発送元も海外倉庫を名乗っていたとされる。
購入に際しては、「リラックス作用」「眠気解消」「集中力向上」などの表現が多用されていた一方で、成分表記は不十分だったとの証言もある。
クッキーのような食品型をとることで警戒を下げ、「市販されていないのに市販風に見せる」販売スタイルが拡大している。こうした実態は、販売側がSNSやチャットアプリを通じて個人間流通を行う“疑似合法グッズ”市場と重なっている。
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クッキーは個包装・ラベルなしだったとの証言もある
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商品ページは既に削除済みで、販売者の追跡は困難との情報
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関係者の間では「新種の合法ドラッグの可能性もある」と警戒が広がっている
違法薬物との違い、合法系スイーツの特徴
分類 | 違法薬物(例:大麻) | 合法風スイーツ(今回の例) |
---|---|---|
成分の明記 | なし/偽装あり | 曖昧/不完全 |
検出可能性 | 検査で判明 | 不検出も多い |
入手経路 | 闇サイト/密輸 | SNS紹介/個人間取引 |
法規制 | 麻薬取締法で禁止 | 規制外or対象外 |
摂取リスク | 明確に高い | 不明確で想定外の症状 |
ネット購入の菓子に何が含まれていたのか?
「高揚する成分」とは何だったのか
今回問題となったクッキーには、摂取後に「テンションが上がる」「気分が高揚する」などの異常な作用が出たとされる。警察や行政の調査によれば、違法薬物として規制対象となっている成分は検出されなかったが、精神作用を引き起こす可能性のある化合物が含まれていた可能性があるとされる。
問題のクッキーは国内の大手通販サイトではなく、海外発送対応の個人輸入系サイトを通じて購入されたとみられる。健康食品やCBD商品と同様の分類で販売されていたが、含有成分の詳細な表記や日本国内での食品衛生法に基づく認可は確認されていなかった。
製品ラベルに記載されていた成分名の中には、いわゆる「ハーブ系化合物」や「ナチュラルエナジー」など曖昧な用語が含まれており、購入者自身が内容物の性質を十分に把握していなかった可能性がある。
通販商品に対する法的規制の限界
こうした商品に対しては、現在の日本の法制度では即時の規制が難しいケースもある。たとえば、明確に麻薬取締法や薬機法に該当しない物質であっても、摂取後に身体や精神に変調をもたらす場合には、「指定薬物」として厚生労働省が追加指定する手続きが必要となる。しかし、それには時間を要し、すでに市場に出回った製品の流通を抑えるには後手に回る傾向がある。
また、販売元が海外にある場合、日本の行政機関が販売停止や製品回収を直接命じることはできない。そのため、購入者の自己責任が重視されるが、そもそも商品の中身や影響を適切に把握すること自体が困難な構造になっている。
問題が発覚した後も、SNSでは同様の製品が「テンションが上がるお菓子」「眠れない夜に効く」などの宣伝文句とともに拡散されており、実質的な購入抑止には至っていない。
制度と行動のズレはどこにあったのか
上記の事例が示すように、「明確に違法でなくても危険」というグレーゾーン商品に対する対応は後手に回っている。これは制度側と市場のスピード感のずれ、そして個人の行動選択におけるリスク認知の甘さの両面から説明できる。
制度的な問題点は以下の3つに集約される:
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① 指定薬物制度の遅延性
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② 海外販売業者に対する執行力の不足
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③ 消費者保護策が「注意喚起」に留まっている現状
一方で、ユーザー側の行動にも課題が残る。今回の大学生のように、SNSなどでの口コミや「高揚する」「リラックスできる」といった評判をもとに購入を判断する層に対しては、商品選択の段階でのリテラシー強化が求められている。
ネット購入菓子による事故の構造
違法ではない製品 → 精神作用が出る可能性 → 消費者はSNSなどで入手
↓
行政の規制が間に合わない
↓
事故発生 → 検査でも明確な違法成分なし
↓
販売経路・成分表記の不明瞭さが問題視
↓
制度上の規制難・消費者保護の限界
見出し | 要点 |
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前半のまとめ | 男子大学生が「高揚感を得られる」とされるクッキーをネットで購入し摂取後に異常行動を起こした |
後半の注目ポイント | 商品には違法成分は検出されなかったが、身体・精神に影響が及んだ背景と行政対応に注目が集まっている |
いま多くの若者が「薬物ではない」「違法ではない」とうたわれた製品に、SNSや通販経由で手を伸ばしている。
だが、身体に入るものは、表示より“反応”が真実だ。
問題は、違法性ではなく“影響力”の段階に移っている。
制度側はどう対応しているのか?
警察は薬物事件として扱ったのか?
山梨県警は、摂取した食品に違法薬物成分が含まれていないかを中心に捜査を進めたが、尿検査などの結果から覚醒剤・大麻などの違法成分は検出されなかった。
現時点では、刑事事件としての立件には至っておらず、「合法だが影響の強い食品」として取り扱われている可能性がある。
行政対応も、薬機法や食品衛生法の観点から「表示の正確性」「販売の安全性」への調査に留まっている。
販売規制や再発防止策はどうなるか?
厚生労働省や消費者庁は、過去にも「いわゆる脱法ハーブ」や「快感サプリメント」に関して、健康被害や精神疾患リスクが報告されたケースを元に、販売停止命令や成分の指定を進めてきた。
今回のような「一見合法」「表示は無害」な食品については、地方自治体と連携したモニタリング強化や、ネット販売規制の強化が議論される可能性がある。
合法の甘さに潜む、無自覚な加速
若者が何かにすがりたくなるのは、過剰な刺激を求めているからではない。
むしろ“ちょうどいい無感覚”を求めているのかもしれない。
目の前に出されたクッキーが、ただの菓子だったのか、それとも感覚の逃避装置だったのか。
「合法」という言葉がもたらす錯覚が、ここまで深く浸透していたことに、社会の盲点がある。
飛び降りたのは彼だけではない。
他の誰かの精神も、すでに落ちていた可能性があるのだ。
❓ FAQ
Q:このクッキーには違法薬物は含まれていましたか?
A:山梨県警の検査では、覚醒剤・大麻などの違法成分は検出されなかったとされています。
Q:製品名や販売業者は公開されていますか?
A:現時点では製品名や販売元の情報は公表されておらず、調査中とされています。
Q:今後同様の事故を防ぐための制度改正はありますか?
A:厚労省や消費者庁によるネット通販品の監視強化や、成分規制の強化が検討される可能性があります。
Q:健康被害の可能性はありますか?
A:違法ではなくとも、精神や身体に影響を及ぼす「グレー成分」が含まれているケースがあり、注意が必要です。
区分 | 内容 |
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事件概要 | ネットで購入した「高揚感を得られる」クッキーを食べた男子大学生が異常行動の末に建物から飛び降り |
成分の確認 | 違法薬物は検出されず、合法成分の可能性があるが、身体・精神への影響が出た |
社会的な論点 | 表示の合法性と実際の作用にギャップがある商品流通の現状と、若者層の精神的危機 |
制度的対応 | 今後、ネット販売監視・表示規制・成分指定の強化が焦点となる可能性 |