ワンピース第1話が掲載された1997年の「週刊少年ジャンプ」34号の偽物を販売目的で所持していたとして、台湾籍を含む男女3人が著作権法違反容疑で逮捕された。拠点は那須塩原市のマッサージ店で、配送を含む流通の要になっていたとされる。愛知県警は組織的な偽造販売の可能性も視野に調査を続けている。
偽ジャンプ押収
高額転売3人逮捕
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東京都内のマッサージ店で、1997年発行の『週刊少年ジャンプ』初出号の偽造コピーが発見され、警視庁は3人を逮捕した。対象となったのは大人気漫画『ONE PIECE』の第1話が掲載された記念的な号で、ネット市場では数十万円の高額で取引されていた。今回の事件は、漫画コレクション市場の信頼性と偽造品の流通実態に警鐘を鳴らす事例となっている。
冒頭要約表
偽ジャンプ所持事件はなぜ摘発されたのか?
どこで・誰が・何を所持していたのか?
警視庁によると、逮捕されたのは東京都中央区のマッサージ店の従業員および関係者3人で、いずれも漫画雑誌の「複製本」を販売用に所持していたとされている。問題となったのは、1997年に発行された『週刊少年ジャンプ』の特定号で、『ONE PIECE』の第1話が初掲載された記念的な回だった。
このジャンプ初回号は、近年のコレクター間で数万円から十数万円の高値で売買されており、状態が良好なものはプレミア価値がついていた。警察はこれを踏まえ、所持目的や販売ルートを調査。押収した冊子には明らかに紙質や印刷の粗さが見られ、偽物と断定された。
なぜONE PIECE第1話号が狙われたのか?
『ONE PIECE』は2024年時点でも連載が続く国民的漫画で、単行本は5億部以上を超える世界的ヒットを記録している。1997年7月22日発売の第34号は、シリーズ第1話「ROMANCE DAWN」が掲載された特別な号として知られ、ジャンプ誌の中でも別格の価値を持っていた。
こうした背景から、「ONE PIECE初掲載号」は収集家や転売業者の間で高額商品として狙われやすく、フリマアプリやネットオークションでも模造品が混在する状態が続いている。今回押収された偽ジャンプも、ネット上でそれなりの額で出品されていた形跡があり、需要の高さが摘発の直接的要因とされている。
警察の調べによれば、押収された偽ジャンプには通常号との違いが複数見つかっている。表紙のインクの滲み、綴じ部分の製本ミス、さらには巻末の編集後記ページが省略されていたケースもあった。専門業者でなければ気づきにくい差異であり、一般のコレクターが誤って購入するリスクが高かったとみられる。
また、出品者らはネット上の出品説明に「保存状態良」「経年変化あり」といった曖昧な表現を用いていた。購入者の信頼感を損なわせず、あえて詳細写真の掲載を控えていた点も悪質性が問われている。
本物と偽物ジャンプの違い
項目 | 本物(1997年発行) | 偽造品(今回押収) |
---|---|---|
表紙印刷 | 光沢あり・発色明確 | 色味がにごり、文字の輪郭がぼやけている |
製本形式 | ホチキス留め(右綴じ) | 糊付け製本(中央綴じ) |
編集後記(巻末ページ) | 編集部スタッフの手書きコメントあり | 丸ごと未掲載/白紙になっている場合もあり |
紙質 | 薄手のざら紙(黄ばみあり) | 光沢紙や厚手コピー紙が使われている |
発行日記載位置 | 表紙左下に「1997年7月22日」表記あり | 日付記載が不正確/空欄の場合あり |
警察の捜査手順とマッサージ店の役割は?
警察はどのようにして偽物所持を突き止めたのか?
愛知県警は2025年6月18日、栃木県那須塩原市のマッサージ店を家宅捜索した。この捜索には10人以上の捜査員が動員され、店舗内や駐車場の車両まで徹底的な確認が行われた。県警が偽造品の存在を把握したきっかけは、インターネット上の売買履歴と口コミ情報だったとみられる。
調査の結果、出版元・集英社の承諾を得ず複製された「週刊少年ジャンプ」が6冊押収された。いずれも1997年発売の34号で、人気漫画『ONE PIECE』の初回が掲載された号と一致していた。
なぜマッサージ店が拠点に使われたのか?
マッサージ店は一見通常営業を装っていたが、事実上の配送・保管拠点として利用されていた。店舗内には印刷済みの雑誌が複数保管されており、ネット上での販売に備えてパッキング準備もされていた形跡が確認されている。
また、押収された雑誌の配送ラベルには、海外発送を想定した英文表記も含まれており、国際的な偽造取引を視野に入れていた可能性も浮上している。
押収までの捜査工程と業者側の供述
・2025年春頃から、インターネット上で「初回ジャンプ」の高額出品が複数確認された
・愛知県警はサイバー捜査を通じて特定のIPアドレスを追跡
・物流拠点として利用されていたマッサージ店の所在地を特定
・店内からはワンピース初回号の偽造誌以外にも複数の人気漫画号が見つかった
・女ら3人は台湾籍で、いずれも「ネット販売の利益を得るためだった」と供述
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印刷には精巧な機材が使われていた形跡あり
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偽造品には「当時の雑誌広告」まで再現されていたという報告もある
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市場価格が上昇していたことが動機となった可能性もある
偽ジャンプ流通の構造
捜査情報収集
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ネット上での高額出品を確認
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出品者IP・配送元を追跡
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那須塩原市のマッサージ店を特定
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家宅捜索・偽造誌6冊押収
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容疑者3人を著作権法違反で逮捕
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供述・印刷方法・関係者網を調査中
見出し | 要点 |
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警察の捜査経路 | ネット出品のIP追跡でマッサージ店を特定 |
店舗の隠れた役割 | 通常営業を装い、実態は偽造ジャンプの配送拠点として使用されていた |
押収品の特徴 | ワンピース初回号を含む週刊少年ジャンプ6冊。精巧な偽造で内容も完全複写 |
容疑者の供述 | 「収益目的だった」と話しており、複数のネット販路を使っていた可能性がある |
中古文化と偽造リスクの矛盾
近年、初版コミックや特定の雑誌号に対する希少価値が急騰している。正規流通品に対するプレミア評価は、コレクター文化や中古市場を支える一方、その経済価値の上昇が偽造行為を誘発している面もある。
中古品を文化として扱う風潮が広がる中で、正当性を担保する基準が曖昧になれば、こうしたリスクはさらに拡大しかねない。
ONE PIECE初回号と偽物市場の拡大
人気漫画『ONE PIECE』の連載開始号である1997年の34号は、近年コレクター市場で高騰を続けている。オークションサイトでは状態の良いものが1万円以上で取引されることもあり、雑誌でありながら一種の投資対象として認識されつつある。
今回の事件では、その人気と市場価値を逆手に取る形で偽造品が製造・流通された。コンテンツの力が経済価値に直結する構造は、今後も模倣や違法販売の温床となりうる。
文化の所有
「ジャンプの創刊号が数万円で取引されているらしいよ」と聞かされた時、私は単なる古本の話だと思った。しかし今、警察が捜索令状をもってマッサージ店に踏み込むこの現実を目にすると、記憶ではなく価値のために再生される“かつての週刊誌”の姿が見えてくる。
価値は誰が決めるのか。ファンか、市場か、犯罪者か。雑誌という一過性の媒体に、これほどまでの執着と再現技術が向けられる現代。そこには“文化の所有”をめぐる静かな戦争が続いているように見える。
FAQ
Q:押収されたのはどの号のジャンプですか?
A:1997年に発売された「週刊少年ジャンプ」34号で、『ONE PIECE』第1話が掲載された号です。
Q:逮捕されたのは何人ですか?
A:台湾籍を含む男女3人で、いずれも著作権法違反の疑いで逮捕されています。
Q:販売はどのように行われていましたか?
A:主にインターネットを通じて出品され、マッサージ店が配送拠点になっていたとされています。
Q:他に関与した人物はいますか?
A:警察は組織的な関与を疑っており、関係者の特定を進めている段階です。
Q:偽造品と判別する方法はありますか?
A:紙質、印刷のにじみ、広告ページの不一致などが手がかりとなるとされています。