熊本県八代市で、酒気帯び運転により検挙された50代の男性職員に対し、停職6か月の懲戒処分が科されました。基準値の約3倍のアルコールが検出された背景には「前夜の飲酒」があり、市は全職員への再発防止指導を徹底するとしています。通勤時の飲酒判断と管理体制が問われています。
八代市職員が飲酒運転
基準値3倍「残り酒」検出
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「残り酒」で基準値3倍の飲酒運転 八代市職員を懲戒処分
熊本県八代市の職員が酒気帯び運転で摘発され、市は6月20日付でこの職員に対して停職6か月の懲戒処分を下した。男性職員は前夜の飲酒を認めており、市は再発防止と職員への徹底指導を進める方針。
なぜ朝の検問で酒気帯びが発覚したのか?
摘発時の状況とアルコール検出量
問題となったのは、2025年6月8日の朝。八代市の50代男性職員が、出勤途中に市内の国道3号を軽乗用車で走行中、検問中の警察に停止を求められた。呼気を調べたところ、基準値の約3倍にあたるアルコールが検出された。
警察はその場で酒気帯び運転と判断し、道路交通法違反の疑いで摘発した。検問時間は午前7時半前後とされ、業務開始前の移動での出来事だった。
飲酒の時間帯と本人の供述
市の調査によると、男性職員は「前日の深夜1時ごろまで缶チューハイや焼酎を自宅で飲んでいた」と説明している。これにより、飲酒終了から約6時間後にも関わらず、体内には依然として高濃度のアルコールが残っていたことが分かる。
こうした「残り酒」による酒気帯び状態は、本人に自覚がない場合も多く、朝の出勤時に無意識でハンドルを握る危険性が社会的にも問題視されている。
市の処分方針と再発防止の課題
この事案を受け、八代市は当該職員を2025年6月20日付で「停職6か月」の懲戒処分とした。中村博生市長は「危機感を持って重く受け止めている」とし、飲酒運転の再発防止を徹底する姿勢を示した。
市長はまた、「市民の信頼を損なう行為であり、飲酒運転の影響の重大さを全職員に再認識させる」と強調している。
一方で、今回のケースは明確な「出勤前」であった点が処分に影響したとみられる。市民の生活を支える立場にある公務員による違反行為だけに、処分の厳格さや今後の再発防止策に注目が集まっている。
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八代市の飲酒運転防止指針は2022年に改訂されていたが、遵守状況は不明
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年間を通じた交通安全講習の義務化が検討されている
飲酒運転職員の事例(熊本県内)
なぜ“残り酒”でも厳罰なのか?制度と検出の仕組みは?
「残り酒」でもアウトとなる理由は?
今回のケースでは、当日午前1時ごろまで飲酒していたとされる中で、午前7時半に呼気検査で基準値の約3倍が検出された。職員は「自宅で缶チューハイや焼酎を飲んだ」と供述しているが、飲酒の終了から6時間以上経過しても基準値を大幅に上回る濃度が残っていた点が注目される。
この背景には、体質や飲酒量、アルコールの種類、摂取スピードによって分解時間が大きく異なることがある。一般的にアルコールは1時間に体重1kgあたり0.1g程度しか分解されず、深酒や複数種の酒類摂取をした場合、翌朝にも「酔い」が残ることは珍しくない。
制度上「酒気帯び」とは何を指すのか?
日本の道路交通法では、「酒気帯び運転」は呼気1リットル中0.15mg以上のアルコールが検出された場合に適用される。今回のように「基準値の3倍」に相当する場合、検出量は0.45mg/L前後であり、明らかに違反となる水準である。
八代市は職員の供述や警察の検査結果を踏まえて、飲酒運転の意図の有無にかかわらず、厳正な懲戒処分が必要と判断。20日付で停職6か月の懲戒処分を下した。
「前夜の飲酒」がもたらす法的リスクと市職員の立場
飲酒を翌日まで引きずる「残り酒」は、本人が酔っていないと感じていても処分の対象となる。特に地方自治体職員は、地域の模範としての立場があるため、市長も「危機感を持って重く受け止める」とのコメントを出した。
今後、職員向けに以下のような対策が講じられる見通しとなっている。
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飲酒後の翌朝運転に関するリスク啓発研修の実施
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自己判定に頼らない呼気測定の導入検討
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上司による出勤時点での確認強化
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職員倫理綱領への明記と再周知
職員の飲酒から停職処分までの流れ
飲酒(6月8日午前1時ごろまで)
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通勤途中に検問(同日7:30頃)
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呼気検査で基準値の約3倍を検出
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警察により酒気帯び運転で摘発
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八代市が内部調査・本人聴取
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6月20日付で「停職6か月」の懲戒処分
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市長が再発防止の徹底とコメント発表
「まさか残っていたとは思わなかった」──その過信が事故を生む。今回の八代市職員のケースでは、明確な飲酒運転の意図がなかったとしても、結果的に規範違反となった。制度の壁は、個人の感覚を許さない。市役所の一角で交付される文書の裏で、信頼を削るアルコールの残滓がじわじわと制度を侵食する。
“残り酒”の罠に落ちた公務員──制度が許した隙間とは
「残り酒」という言い訳が通用する時代は、とっくに終わっていた。
それでも、制度の中で働く人間たちは、どこかで「自分は対象外だ」と信じている節がある。今回の八代市職員の飲酒運転は、その幻想の上に積み上げられた慢心の結果といえる。午前1時まで飲酒し、6時間後に運転すれば検出される可能性が高いことは、もはや常識に近い。それでもなお運転を選んだのは、「見逃されるだろう」という社会的錯覚か、それとも組織の緩みによる自浄作用の欠如か。
自治体の中核を担う50代の課長補佐級という立場でありながら、このような事案を起こしたことの影響は、市民の信頼だけでなく、同僚職員の士気にも確実に影を落とす。たとえ再発防止策を掲げたとしても、それは組織の外向きの姿勢でしかない。内側では、「あの人が停職6か月なら、俺は大丈夫だろう」という新たな油断を生むだけかもしれない。
行政という組織が本当に変わるためには、懲戒処分の厳罰化だけでは不十分だ。行動の根本にある意識、つまり「なぜ許されないのか」を言葉ではなく実感として持つ必要がある。それを持たせるのは、同じ組織の仲間たちであり、毎日の仕事の中で交わすまなざしだ。
組織が腐るのは、一人のミスが原因ではない。見て見ぬふりをした「全員の黙認」が本当の崩壊のはじまりである。
❓FAQ
Q:八代市の職員が摘発されたのはいつですか?
A:2025年6月8日午前7時半ごろ、国道3号線で警察の検問により摘発されました。
Q:呼気検査で検出されたアルコール濃度はどの程度でしたか?
A:基準値の約3倍にあたるアルコール分が検出されたとされています。
Q:当日の飲酒状況はどのように説明されていますか?
A:職員は市の調査に対し、当日午前1時ごろまで自宅で缶チューハイや焼酎を飲んでいたと話しています。
Q:八代市はこの件についてどのように対応しましたか?
A:市は当該職員を6か月の停職処分とし、中村博生市長が「危機感を持って重く受け止める」とコメントを出しました。
Q:この処分はどのような制度に基づいて行われましたか?
A:地方公務員法に基づく懲戒処分として、飲酒運転が確認された場合の規定に従って停職処分が適用されました。