米原市の醒井養鱒場で、魚類の特定疾病「レッドマウス病」が確認され、約1万尾のイワナが死亡しました。感染拡大を防ぐため、残る約34万尾も殺処分されました。2015年の石川県以来、国内では10年ぶり2例目。魚類のみが感染対象で、人体への影響はないとされています。県は再発防止に向けて、出荷停止や施設の消毒などの対策を進めています。
国内2例目レッドマウス病
イワナ34万尾 殺処分
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イワナ1万尾が死亡 養鱒場で「レッドマウス病」が確認された影響とは?
滋賀県米原市の醒井養鱒場で、特定疾病「レッドマウス病」が発生し、約1万尾のイワナが死亡した。県は養殖場内のイワナ約34万尾すべてを殺処分し、感染拡大の防止に動いた。国内では2015年以来、10年ぶり2例目の発生となる。魚に感染するが、人体への影響はないとされている。
レッドマウス病の発見経緯と被害規模は?
1万尾が突然死 水槽内で広がった異変
滋賀県によると、醒井養鱒場では5月下旬ごろからイワナの大量死が確認され、検査の結果「レッドマウス病」が陽性と判定された。症状としては口の周辺が赤く変色し、魚体にも異常が見られることが特徴とされる。
この疾病は、エルシニア・ラクティという細菌が原因で、感染した魚は食欲不振や運動異常を起こして死に至る。死亡したイワナは約1万尾に及び、感染が拡大する懸念があったという。
出荷済みの200尾に異常なしと報告
県の調査では、発見前の5月10日以前に200尾が市場に出荷されていたが、これらから発症例は確認されていない。レッドマウス病は魚類のみに感染するため、仮に人が触れても人体には影響がないとされている。
一方で、養殖業への経済的損害は大きく、県は防疫措置として養鱒場内の約34万尾すべてを殺処分した。この判断により、以後の拡大は防止されたと見られている。
発生原因と防疫体制に対する県の説明
県の説明によると、感染経路は「外部からの持ち込み」の可能性があるが、明確な感染源は調査中としている。醒井養鱒場では通常から水温や衛生管理に注意を払っており、外部侵入を防ぐ体制は敷かれていた。
ただ、レッドマウス病は一度施設内に持ち込まれると急速に広がるため、今回の事例では殺処分を含む即時対応が必要だったという。
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国内確認は2015年石川県に次いで2例目
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法定の特定疾病であり、国の防疫支援対象
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水温変化・外来魚由来の感染の可能性も調査中
養殖業界への影響と再発防止策は?
養殖業者への出荷制限と経済的損失
醒井養鱒場はイワナやニジマスの養殖を行う県の代表的施設であり、今回の殺処分によって今季の出荷は全面停止となった。これにより、観光施設や料理店に供給していたイワナの取引にも影響が出ている。
出荷再開には、防疫措置の完了に加え、感染リスクの再評価と国の検査基準への適合が求められる。県内の他施設への波及は確認されていないが、関係機関には注意喚起が出されている。
再発防止に向けたモニタリングと隔離措置
滋賀県は、醒井養鱒場に対し、出入り口の消毒強化や水系ごとの魚群隔離措置を講じるよう指導。今後は、外来魚の侵入経路の遮断や病原菌の持ち込み経路を想定したモニタリング強化も進めるとしている。
また、国や他府県と連携し、レッドマウス病に対する早期発見マニュアルの見直しも検討している。特定疾病に指定されているため、防疫にかかる経費については国が支援する枠組みとなっている。
専門家による警告と制度的課題の整理
魚病専門家の指摘では、今回の感染拡大は「迅速な対応で被害最小化につながった」と評価される一方、「全国の小規模施設での検査体制は未整備のまま」という構造的課題もあるという。
特にレッドマウス病は症状が出るまでの潜伏期間が長く、養殖初期段階での感染を見逃すと後手に回る危険がある。そのため、養殖許可の更新時に定期検査を義務づける制度改正も検討され始めている。
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養殖業者への補償制度は国・県の連携で対応予定
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診断遅れのリスクを踏まえた検査網の再構築が急務
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魚種を越えた感染例は現在「確認されていない」
感染確認から殺処分までの流れ
感染兆候(5月下旬)
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県の緊急調査(水槽・死魚の検査)
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レッドマウス病陽性を確認(6月上旬)
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養殖施設内の全魚種を対象に防疫措置決定
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約34万尾のイワナを殺処分(6月中旬)
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出荷済み魚の追跡と安全確認
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防疫完了と報告(調査継続中)
前半のまとめ | 後半の注目点 |
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醒井養鱒場でレッドマウス病が確認され、約1万尾が死亡した | 養殖魚34万尾を殺処分し、感染拡大を防止 |
国内では10年ぶり2例目の発生で、魚類への指定疾病 | 経済損失が拡大するなか、検査体制の見直しが進行中 |
人体には無害とされ、出荷済みの魚には異常なし | 国・県による補償と再発防止策が課題に浮上 |
本当に防げたのか。それとも、もっと早く気づけたのではなかったか──。
レッドマウス病は「魚だけの病気」とされているが、被害を受けたのは水槽の中だけではなかった。生き物を扱う現場において、「兆し」を読み取る力が、制度の網の目からこぼれ落ちてはいなかったか。この問いは、全国の養殖業者にも向けられている。
静かなる淘汰と、養殖という幻想
「殺処分34万尾」と聞いたとき、誰がその重みを想像できるだろうか。数字は簡潔だが、その裏には生きた時間がある。
制度は合理でできている。だが、魚が死ぬ理由は合理だけでは語れない。レッドマウス病──耳慣れない名前の病原菌は、沈黙のうちに水槽を侵し、そして一斉に命を絶たせる。
防げなかった理由は「制度の遅さ」だったのか。「気づかなかった現場」なのか。それとも、そんな問いすら立てられない仕組みに慣れすぎていたのか。
いま必要なのは、もう一度「なぜ」を問うこと。目の前の死に、向き合える制度を立て直すことだ。
❓FAQ
Q:レッドマウス病とはどのような病気ですか?
A:エルシニア・ラクティという細菌によって発症する魚類の感染症で、口周辺の出血や食欲不振などを引き起こします。
Q:人間に感染する危険性はありますか?
A:人体には感染しないとされており、出荷済み魚についても異常は確認されていません。
Q:醒井養鱒場では何尾が殺処分されましたか?
A:約34万尾のイワナが殺処分対象となりました。
Q:レッドマウス病の発生は国内で何例目ですか?
A:2015年の石川県に続き、今回が2例目の確認です。
Q:養殖業者への補償制度はありますか?
A:レッドマウス病は国の特定疾病に指定されており、国・県による防疫費用の支援が可能とされています。