マダニが媒介するSFTSウイルスに、茨城県内で室内飼いのネコが感染した。発症後すぐに死亡し、県が調査を進めた結果、ペット感染として関東初の事例となった。動物から人への感染リスクもあり、県は飼い主に対して手袋の着用やブラッシングなどの衛生対応と感染予防策を求めている。
飼いネコがSFTSで死亡
茨城でマダニ発確認
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茨城県で飼いネコがSFTSウイルスに感染し死亡した。マダニによる感染とされ、関東では初の確認例となる。動物から人への感染可能性もある中、県は飼育環境の見直しと予防対策を呼びかけている。
なぜ感染が起きたのか?
脱走とダニ付着の経緯
茨城県内でSFTSウイルスに感染したのは、室内で飼育されていた1歳の雌ネコだった。4月下旬、ネコは一時的に屋外へ脱走し、帰宅時には耳に多数のマダニが付着していた。ダニは動物病院で除去されたが、当時は感染の兆候は見られなかったとされる。
今回のように一時的な屋外活動でも、ウイルスを保有するマダニに接触することで感染する可能性があるとされている。室内飼育であっても、脱走や外出を完全に遮断できていない場合はリスクが残る。
発症と検査の経過
ネコは5月9日に再び動物病院を受診し、高熱や嘔吐などの急性症状を示していた。翌日には黄疸も確認され、同12日に容体が悪化し死亡した。動物病院がその日中にSFTSを疑い、県へ通報したことで検体が提出され、県衛生研究所にて検査が行われた。
5月15日にSFTSウイルス陽性が確認され、県は関東初のペット感染として公表した。飼い主および医療関係者への感染は確認されていない。県は人への波及を防ぐため、マダニへの接触機会を最小限に抑えるよう呼びかけている。
感染リスクと予防の基本対策
SFTSウイルスはマダニにかまれることで感染するが、感染動物の体液・排泄物との接触を介した人への感染例も報告されている。厚生労働省の資料によれば、ヒトへの致死率は27%とされ、早期の予防行動が重要視されている。
動物との接触時には手袋の着用や消毒を徹底することが望ましい。また、ペットが屋外に出たあとはブラッシングでダニの有無を確認し、粘着テープでの除去も推奨されている。取りきれない場合には速やかな通院が求められる。
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感染予防薬の定期投与は獣医師と相談のうえ継続
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口移しでの餌やりは避け、衛生手袋を使用
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散歩後の身体チェックと耳・首まわりの確認
SFTS感染確認の地域推移と制度対応
どのような影響と反応が出ている?
関東初確認への波紋
これまでSFTS感染は西日本を中心に報告されてきたが、近年は中部地方へと拡大し、今回の茨城県での確認により関東圏にも及んだことが明らかとなった。都道府県単位での感染確認は、防疫体制や動物診療の指針見直しに直結する。
県は、獣医師会を通じてペットの症状に応じた検体提供を求めており、既に検査を始めていた。今回の事例を含めて計8匹(ネコ5匹、イヌ2匹)を対象に検査し、陽性が確認されたのはこの1件のみだった。
飼い主と動物病院の対応
ネコは室内飼いであったが、屋外への一時脱走が感染機会となった。動物病院側は耳のダニを除去後も、異常が出た段階で早期に再受診と通報を行った。短期間で死亡に至ったが、発症から通報、検査までの対応は迅速だったとされる。
また、飼い主と医療従事者への二次感染は現在のところ確認されておらず、対応時の防護措置も一定の効果を示した。県は今回の事例を通して、今後の情報共有と啓発の必要性を改めて示している。
動物由来感染症への関心と広がる啓発
SFTSをはじめとした動物由来感染症に関する情報は、飼い主の中でも認知が進みつつある。だが、都市部や室内飼育の家庭では「うちの子は大丈夫」と考える傾向もあり、情報の届き方に差があるとされる。
今回のように関東圏の家庭内飼育動物でも感染した事例が公表されたことで、SNSなどを通じて情報拡散が急速に広がった。県は感染症情報センターのホームページ上でも注意喚起を強化し、地域ごとのリスク意識の差を埋める取り組みを進めている。
発症から確認、公表までの流れ
① 屋外脱走
↓
② ダニ付着・帰宅
↓
③ 高熱・嘔吐
↓
④ 動物病院受診
↓
⑤ 県に通報
↓
⑥ 検体提出
↓
⑦ SFTS陽性判明
↓
⑧ 県が感染を公表
感染症の届出制度の下で、県は今回の事例を公表した。だが、動物の屋外活動を完全に管理することは現実的に難しい面もある。防げなかった脱走が、制度の範囲外にあったことを私たちはどう受け止めるべきか。予防体制の設計次第で、今後のリスクは変わり得る。
今後の課題と制度的論点
SFTSは動物由来感染症でありながら、地域によってその対策や制度の整備状況に差がある。特にペットの飼育実態や予防薬の普及率にはばらつきがあり、今後は制度的な底上げと義務化の検討が焦点となる。
また、発症後の通報体制と検体検査までのプロセスをどこまで迅速・確実に行えるかは、自治体ごとの保健衛生政策に依存している。今回の茨城県の対応が一例となり、他地域でも対応見直しが加速する可能性がある。
脱走と感染、その責任は誰にあるのか
SFTSウイルスは、姿の見えない制度の境界を浮かび上がらせる。屋外活動の一瞬を見逃したことで、命を落とす危険が生まれる世界に、私たちはすでに生きているのだ。予防薬や室内飼育という行動だけでは、制度の隙間を埋めきれない。どの範囲までが「管理」で、どの瞬間からが「責任」なのか――その境界を見直す時期に来ている。
❓ FAQ
Q1:SFTSに感染したネコの飼い主は感染していますか?
A:茨城県によると、今回の事例では飼い主および獣医師への感染は確認されていません。
Q2:ペットがSFTSに感染した場合、届出義務はありますか?
A:ペットへの感染自体に届出義務はありませんが、獣医師は疑い例を自治体へ報告することが推奨されています。
Q3:感染を防ぐにはどうすればよいですか?
A:屋外活動の制限、予防薬の定期投与、散歩後のダニチェックなどが有効とされています。
Q4:マダニはどこに多く生息していますか?
A:草むらや山林、河川敷などに多く生息し、ペットが立ち寄ると付着するリスクがあります。
Q5:人から人へのSFTS感染もあるのですか?
A:2024年には体液を通じた医療従事者への感染事例が国内で報告されています。