茨城県は欧州に渡航歴のある県内在住の40代男性がライム病に感染したと発表。発生届は6月18日に保健所に提出され、県内での感染確認は約8年ぶりとなる。県はマダニ媒介感染症への予防対策を改めて呼びかけており、野山での活動時には肌の露出を避け、虫除け剤の使用を推奨している。
ライム病感染を発表
茨城県内で約8年ぶり
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茨城県は6月24日、県内在住の40代男性がマダニが媒介する感染症「ライム病」に感染したと発表した。県内での感染確認は2017年以来約8年ぶりとなる。男性は5月に欧州を訪れており、帰国後に紅斑などの症状を呈し、医療機関を受診していた。発症経緯や届出の流れを踏まえ、県はマダニ対策の徹底を呼びかけている。
なぜ茨城でライム病が確認されたのか?
感染者の行動歴と発症の経緯
茨城県によると、感染が確認されたのは県内在住の40代男性である。男性は2025年5月下旬に欧州を訪れており、6月9日に倦怠感を覚え、翌10日には右太ももに紅斑と呼ばれる皮膚の発赤が出現した。これを受けて同日から県内の医療機関を受診し、診察と検査が進められた。
検体は、国立健康危機管理研究機構に送られ、遺伝子検査の結果、ライム病の原因菌「ライム病ボレリア」の陽性が確認された。男性はその後回復しており、現在はすでに健康を取り戻しているという。
感染源と制度上の報告対応
ライム病は、細菌を保有するマダニ(欧州ではシュルツェマダニ)に咬まれることで感染する。感染経路として、県は欧州滞在中のマダニ咬傷による発症とみている。日本国内ではマダニによるライム病感染例は主に北海道で見られるが、茨城県での確認は2017年以来のこととなる。
医療機関は感染症法に基づき、つくば保健所に対して6月18日に発生届を提出。県感染症対策室は、制度上の報告体制が適切に機能したとしつつ、今後の注意喚起と再発防止に取り組む方針を示している。
届出制度と感染予防への対応
県は、今回のライム病確認を受けて、医療機関が迅速に発生届を提出したことを評価し、制度上の対応が適切であったと説明した。一方で、感染経路の大半が海外であることから、渡航者に対する健康観察とリスク周知の強化も必要だとしている。
また、県内では5月にもマダニを媒介とする別の感染症「SFTS」が確認されており、マダニの活動が活発になる季節を迎える中、野外活動時の服装や虫除けの使用を改めて呼びかけている。
北海道との感染傾向の違い
どのような影響と対応が示されているか?
県の対応と注意喚起
茨城県感染症対策室は、今回のライム病確認に加え、同年5月にはマダニを媒介とする「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の発症例も報告されていることを踏まえ、県民に対して注意喚起を強化している。
特にマダニの活動が活発化する初夏から秋にかけて、野外での活動時には長袖や長ズボンなど肌の露出を抑える服装と、虫よけ剤の使用を組み合わせるよう促している。また、咬まれた場合は症状の有無にかかわらず、早めの医療機関受診が推奨されている。
マダニ媒介感染症への制度的懸念
感染症法に基づく発生届制度は、感染の有無と発症時期を可視化する役割を担っているが、ライム病やSFTSのように海外または動物由来の感染が多い疾患では、届出だけでは実態把握が難しいケースもある。
県はこの点について、渡航歴がある患者への聞き取り調査や、動物・昆虫との接触情報の収集などを組み合わせた対応体制を維持する方針を示しており、同時に保健所と医療機関との連携強化にも注力するとしている。
複数の感染症対応と制度限界
ライム病が国外由来の感染症であるのに対し、SFTSは国内でもマダニにより動物から人へ感染する事例が確認されている。県内で5月に確認されたSFTSの感染源は飼いネコであり、人獣共通感染症への警戒も高まっている。
これらの感染症は、人から人への感染リスクはないものの、媒介動物や自然環境の変化によって発症リスクが分散・拡大するため、予防対策と広報制度の違いが顕著である。特に動物由来感染症ではペットや野生動物への視点も欠かせない。
保健所は発生届を受理し、制度に沿って通知と監視体制を整えていた。だが渡航歴や動物との接触歴まで即座に把握するのは容易ではない。制度が想定する情報の範囲と、現場で必要とされる判断とが一致しないこともある。その状況下で、感染リスクの兆候を誰が先に気づけたのかという問いが残る。
感染報告と発表までの制度的流れ
① 5月下旬
└ 男性が欧州へ渡航し、現地でマダニに接触した可能性
↓(帰国後の健康異常)
② 6月9日
└ 倦怠感を自覚し、体調不良を訴える
③ 6月10日
└ 太ももに紅斑を確認し、医療機関を受診
↓(診察と検体提出)
④ 医療機関が検体を国立健康危機管理研究機構へ提出
└ 遺伝子検査を実施
↓(陽性判明)
⑤ 6月18日
└ 医療機関が感染症法に基づき、つくば保健所へ発生届を提出
⑥ 6月24日
└ 茨城県が感染確認を発表し、感染者の回復を説明
届出制度がすくいきれない感染兆候の分岐点
感染症法に基づく届出制度は、個別の発症確認には有効だが、媒介動物や海外感染例への迅速な反応には限界がある。今回のような渡航後発症例や動物由来の感染症が重なる時期に、制度の枠組みでは拾いきれない情報が多くなる。感染症対策は制度内だけでなく、現場の観察力や生活者との連携にも支えられている。その視点が今の制度にどれだけ反映されているだろうか。
❓ FAQ
Q1:茨城県でライム病が確認されたのはいつですか?
A:2025年6月24日に、茨城県が感染確認を公表しました。
Q2:感染者はどこでライム病に感染したとされていますか?
A:5月下旬に欧州に滞在しており、現地でマダニに咬まれたことが感染の原因と推定されています。
Q3:ライム病の発生届はどの制度に基づいて行われますか?
A:感染症法に基づき、医療機関が保健所へ発生届を提出する制度となっています。
Q4:SFTSとの制度的な違いは何ですか?
A:SFTSは動物から人への感染が報告されており、動物監視も含めた対応が必要です。一方、ライム病は渡航歴のある人への届出対応が中心となります。
Q5:県が呼びかけている感染予防の具体策は何ですか?
A:野山に入る際は長袖・長ズボンの着用を推奨し、虫除け剤の使用も予防対策の一つとされています。