高速料金のしくみを逆手に取った通行が繰り返されていた。阪神高速が把握したのは累積された異常記録。逮捕された男は「壊れていた」と否認しているが、故意性は明白だったのか。不正と確認ミスの交差点に、交通運用の限界が浮かぶ。
阪神高速で不正通行300回
25歳男を逮捕
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阪神高速のETC専用レーンで、およそ300回にも及ぶ未払い通過が繰り返されていた。警察はこの疑いで堺市の内装業の男を逮捕。高速道路のしくみの隙を突いた行動に、捜査関係者も驚きを隠せなかった。バーの開放時間帯を狙った通過の積み重ねが、半年以上見過ごされていたという。
どのように繰り返されていたのか?
ETC専用レーンのすり抜けとその頻度
堺市西区の内装業・容疑者(25)は、阪神高速堺線の堺本線料金所に設けられたETC専用レーンを、2024年8月ごろから今年4月にかけて何度も通過していた。ETC機器が反応しない時間帯に、ゲートバーが一時的に開いたままとなるケースを狙い、通行料金を支払わずに進入していたという。1回ごとの金額は数百円から1000円程度と見られるが、回数が累積し、300回近い未収が推計されている。
料金所側の対応と通報
料金所のしくみとしては、一定条件下でバーが手動操作に切り替わることがある。そのタイミングを繰り返し悪用されていたとされる。2025年3月、阪神高速会社が異常な通行記録に気づき、警察へ相談。監視カメラの画像を基に捜査が進み、容疑者が浮上した。これにより過去の未収も芋づる式に再調査されることとなった。
見逃される条件と操作の繰り返し
容疑者が通過していた時間帯は、深夜や早朝が中心だったとみられている。ETCシステムが混雑回避などの理由で一時的に停止された際、バーが開放状態になっていたことを狙った形跡がある。機器にエラーが生じても、自動検知では違反として即座に通報されない点が、繰り返しを可能にした一因とされる。
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ETC開放時間帯の特定は困難とされている
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警報は一定回数の累積がないと作動しないしくみ
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深夜帯の監視体制が常時ではなかった
他高速道路との不正通行の違い
比較項目 | 今回の事例(堺線) | 他の事例(湾岸線/東名など) |
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使用レーン | ETC専用レーン(バーが一時開放される時間帯) | ETCバーを物理的に突破、または改造車で通過 |
特徴的な動作 | 機器が開くタイミングに合わせてすり抜け | ナンバープレート隠蔽・電波妨害など機器改造あり |
運用側の盲点 | バーの一時開放が記録上見逃されていた | 高度な技術使用のため早期発覚しやすい |
なぜ見逃されていたのか?
料金所設備と確認体制の弱さ
阪神高速の堺本線料金所では、時間帯によってETCレーンのゲートが開いたままとなる状況が発生していた。主に深夜や機器の自動復旧中に多く見られ、すべての通過が監視システムに即座に記録されるわけではなかったという。異常通過を検知するしくみは存在するが、短期間では“機器トラブル”として処理される場合もあり、通報に至らなかった。
料金所職員の配置は時間帯で変動しており、現場の目視だけに依存する場面もあった。カメラは作動していたものの、通行車両のナンバー照合が不一致になるまで、不正の蓄積は見過ごされていたという。
通行者の虚偽申告と反応
容疑者は、ETCレーンだけでなく有人レーンでも通行していた。係員に「今金がない」と伝え、後払いを装って通過する手口を用いていたことが確認されている。これらは計6回立件されており、その一部は防犯カメラの音声記録にも残っていた。
警察が問いただしたところ、容疑者は「ETCが壊れていた」「払うつもりはあったが、忘れていただけ」と供述。容疑を否認しているものの、300回以上の通行記録と複数の画像証拠から、一貫した故意性が疑われている。
技術的限界と人員配置の盲点
今回の不正通行を可能にした背景には、ETCシステム側の自動識別機能の“ゆるさ”があった。阪神高速によると、1回ごとの通過では警報が作動せず、累積記録が基準を超えて初めて異常と判断されるしくみだった。さらに、深夜帯の人員配置は最小限となっており、現場での逐一確認が現実的ではなかったとされる。
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不正を即時に止める措置がなかった
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機器の異常処理に手作業が残っていた
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運用側も“意図的な回避”には想定が甘かった
見出し | 要点 |
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不正通行の回数 | 約300回が未払いのまま通行されていた |
使用された時間帯 | 深夜やETC復旧時などバーが開いていた時間を狙っていた |
職員の対応 | 一部は「現金がない」と申告してそのまま通行していた |
システムのしくみ | 通過の累積でしか異常を検知せず、即座の停止措置がなかった |
【不正通行の流れと運用側の対応工程】
① 通過バーが開放された状態が発生
↓
② ETCレーンで未検知のまま通行
↓
③ 機器上はトラブル処理に分類される
↓
④ 異常記録が累積して社内検知
↓
⑤ 阪神高速が警察に通報し、調査開始
↓
⑥ 監視画像で容疑者を特定し、逮捕に至る
ETCの動作や確認の扱いは、利用者の良心に委ねられる場面も多い。技術やしくみによって守られることを信じていたとしても、その信頼が裏目に出ることがある。バーが開いたままであったとして、それを通過していいのか、誰に問えばよかったのか。高速道路という場では、選択をする間も与えられていないことが多い。
料金運用の限界としくみの盲点
高速道路の通行料金は、機械的な認証と利用者の信頼に支えられてきた。その信頼を逆手に取るような通過の繰り返しは、検知されるまでの長い時間を内包していた。バーが開いていたから通ったという理屈と、それを防げなかった確認の甘さ。その両方が、交通のしくみとしての脆さを露呈していた。不払いが300回重なってからしか止まらなかったのは、判断軸が整備に追いついていなかったからでもある。見逃され続けた経路は、しくみの形ばかりを信じた末の限界を示していた。
❓FAQ
Q1. ETCレーンのバーはなぜ開いたままになっていたのですか?
A1. 一部時間帯において機器の復旧処理中やトラブル対処中に、バーが開いたままの状態になることがあるとされています。
Q2. どうして300回も見逃されていたのですか?
A2. 通行記録の異常は、短期間では機器トラブルと誤認されやすく、記録が一定数を超えた段階で初めて確認されました。
Q3. 容疑者はなぜ逮捕されたのですか?
A3. 不正通行に加え、有人レーンで「金がない」と虚偽の説明を繰り返し、詐欺と判断されたためです。
Q4. 他の高速道路でも同じような事例はありますか?
A4. 一部ではナンバー隠しや装置改造による不正通行も確認されており、しくみの弱点が指摘されています。
Q5. 今後このような不正を防ぐ対策はありますか?
A5. 阪神高速ではAIによる異常検知の強化や深夜監視の強化など、運用面の見直しが検討されています。
見出し | 要点 |
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容疑者の行動 | 容疑者はETCレーンでおよそ300回の不正通行を行っていた |
発覚の経緯 | 阪神高速が異常通行を検知し、警察に相談したことで捜査が始まった |
監視体制の弱点 | 深夜や復旧中のバー開放時間帯を狙われ、確認が追いついていなかった |
今後の見直しの方向性 | システムの強化と有人対応の再構築による再発防止策が求められている |