写真映えで人気の高いタイティーに使われていた合成色素の量が話題に。消費者団体の検査結果をきっかけに、摂取量への関心が高まっている。一部のカフェでは着色料を使わない新たな商品を販売。色の印象に頼らない判断が今後の選択を左右しつつある。
タイの伝統“タイティー”
色素の濃度と健康への配慮
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鮮やかなオレンジと白が溶け合う、タイ伝統の甘くて冷たいミルクティー「タイティー」。その美しさの裏で、健康への注意喚起が出されている。タイの消費者団体が明かしたのは、人気商品に含まれる着色料の濃度と、摂取量に関する懸念だった。
なぜタイティーの色が問題になったのか
伝統飲料としての発展と観光客人気
タイティーは、濃く煮出した紅茶に練乳や砂糖を加える甘いミルクティーとして、長く人々の間で親しまれてきた。氷をたっぷり入れた透明のカップに注がれたその姿は、オレンジと白の二層が目を引き、カフェ文化や観光の象徴的な存在としての地位を確立している。
20世紀初頭に中国茶文化の影響を受けて広まったこの飲み物は、タイ独自の風味や色彩を取り入れることで定着してきた。特に暑さの厳しい気候に合う冷たい甘さと、香りの強さが日常的な飲料として定番化している。
着色料の検出と検査内容
2025年4月、タイの消費者団体は複数のカフェチェーンのタイティーを対象に成分分析を実施。その結果、食用黄色5号・黄色4号・赤色102号など、人工着色料が高濃度で含まれていたことを発表した。
特に黄色5号については、1キログラムあたり291ミリグラムを検出した製品もあり、食品安全に関する国際機関(FAO/WHO合同委員会)が定める基準をもとに試算すると、体重50kgの成人が700mlを摂取すれば、1日の許容摂取量の目安に達する可能性があるとされた。
映える色に隠された注意点
着色料によって演出されたオレンジ色は、タイティーの視覚的魅力の大きな要素となっている。SNSではその鮮やかさが「映える」と評され、旅行者にも広く受け入れられてきた。だがその背景には、天然の色ではなく合成色素に依存する現実がある。
消費者がその事実を知らずに日常的に摂取しているケースもあり、視覚的な満足と健康意識のバランスが問われる状況が続いている。
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色の魅力が購入動機になる例が多い
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天然成分ではないと知らない利用者も存在
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健康配慮型商品の導入が求められている
【着色料の種類と検出量(例示)】
※数値は消費者団体による独自分析より。ブランド名は非公表。
健康への影響と対応の広がり
専門家の見解と国際基準の照合
着色料の使用量については、FAOおよびWHOが合同で設けた食品添加物の安全基準が基準とされている。検出された黄色5号については、体重50kgの成人が一部製品を約700ml摂取した場合、1日の許容摂取量の上限に達する可能性があると指摘された。
タイの医療関係者は、「完全に安全な着色料は存在しない。長期間にわたり日常的に摂取することの影響を過小評価すべきではない」と語っている。現在のところ明確な健康被害の報告はないものの、注意喚起が必要な状況といえる。
無着色化の流れとカフェ側の対応
着色料の問題がSNSやメディアで広がる中、一部の人気カフェチェーンは、色味に頼らないレシピ開発に着手した。2025年6月には、人工着色料を使用しないタイティーの新商品を導入したことが報告されている。
この対応は「写真映え」を重視する消費者との調整を伴うため、見た目に代わる価値の提示が課題となっている。今後の普及には、味や香りの評価軸の強化が鍵となりそうだ。
どれくらい飲むと基準を超えるのか?
着色料の摂取基準は、1日の許容量(ADI)として体重1kgあたり0.5mgとされる。体重50kgの人であれば、1日25mgが目安となる。今回、黄色5号が291mg/kg含まれる商品を基準に試算すると、約85mlの摂取で基準値に到達する。
タイティーは1杯あたり400ml~600mlで提供されることが多く、日常的に複数回飲む習慣がある人は、知らぬ間に上限を超える可能性もある。
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黄色5号のADIは0.5mg/kg(JECFA)
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1杯で基準を大幅に超えることがある
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成分量は商品により大きく異なる
【問題発覚から対応までの流れ】
① タイティーから着色料が検出される
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② 消費者団体が2025年4月に警告を発表
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③ SNSや報道で拡散
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④ 一部カフェが無着色対応を開始
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⑤ 健康意識の広がりと選択の多様化
人気飲料として定着したタイティーの中に、目に見えない着色料がどれほど含まれているかまで意識して選ぶ人は、どれほどいただろうか。色を楽しむ習慣があるからこそ、その成分に対する選択や確認が求められている。誰もが情報に触れられる状態になっていたのか、その問いが消費者の判断に委ねられていた。
色に頼る飲み物と健康意識の距離
強い色が記憶に残るのは、料理でも飲み物でも変わらない。タイティーの鮮やかなオレンジ色は、すでに風景の一部になっていて、飲むことと同時に「映えること」が一つの価値として成立していた。そこに含まれる成分が何かという問いは、後ろに追いやられていたのかもしれない。
無着色の商品が出始めた今も、色の薄いタイティーを見て「物足りない」と感じる人がいる。その違和感の正体は、味ではなく「視覚に刻まれた基準」がつくり出したものだった。飲む人が自らの基準を見直さなければ、誰かが代わりに線を引いても意味は残らない。
強調された色は、商品としての魅力を支えると同時に、健康との距離を曖昧にする。どこで折り合いをつけるか、その判断が、これからの消費に静かに問われていた。
❓FAQ
Q1:タイティーにはどのような着色料が使われていたのですか?
A1:黄色5号・黄色4号・赤色102号などの合成色素が検出されました。
Q2:どれくらい飲むと健康リスクがあるとされているのですか?
A2:黄色5号を含む製品を約700ml飲むと、体重50kgの人で許容量に達する可能性があります。
Q3:今回の検査はどこが行ったのですか?
A3:タイの消費者団体が独自に人気カフェチェーンの製品を分析しました。
Q4:問題を受けてどのような対応がありましたか?
A4:一部カフェでは合成着色料を使わない新商品を6月から販売開始しました。
Q5:消費者が注意すべき点は何ですか?
A5:成分表示の確認と、頻繁な摂取を避けることがすすめられています。
このように、視覚的な魅力に頼る飲料に対して、成分への意識と判断が求められている。