大分県内の学校給食で、物価高の影響によりブロッコリーがパセリに変更されるなどの工夫が進められている。FNNの独自取材で、給食費の値上げや食材の外国産化、手作り回数の増加といった対応策が各地で広がっていることが判明。子どもたちの食育や健康を守るため、栄養教諭らの努力が続いていた。
物価高で給食に“異変”
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物価高の影響が、ついに学校給食の現場にまで及んでいる。大分市の小学校では、ブロッコリーの代わりにパセリを使用するなど、日々のメニューに見直しが迫られる異例の対応が続いていた。
給食に忍び寄る“物価高”の影響と現場の葛藤
給食の時間が始まり、児童たちが笑顔でトマトシチューをよそうその傍らで、栄養教諭の阿南早都己氏はある食材にため息を漏らしていた。かつて彩りと栄養を担っていたブロッコリーは姿を消し、代わりに刻まれたパセリが器の中でその役割を担っていた。
この変更には、はっきりとした事情があった。仕入れ価格はブロッコリーが約5000円、パセリは1000円以下。給食室では毎日約700食が提供されており、その食材費を抑える必要があったと語られている。
物価高の中で、限られた給食費で献立を維持するには、こうした“やむを得ない選択”が避けられなかったという。阿南氏は「ビタミンCやエネルギー量を考えればブロッコリーが望ましいが、他の食材で栄養価を補う工夫が必要になる」と述べていた。
栄養を守る工夫と“食育”の継続
学校側では、パセリの代用だけにとどまらず、牛肉を豚肉に変更するなど、複数の献立で見直しが進んでいた。栄養バランスを維持しながらも費用を抑える調整が、日々の調理現場で試みられていた。
栄養教諭の阿南氏は「給食は食育としても重要な機会。味だけでなく、楽しさや健康への意識にもつながってほしい」と話していた。献立表には、旬の食材や地元産を選ぶ工夫も加えられ、単なるコストカットではない工夫が施されていた。
現場で見えていた選択と実行の記録
報道によれば、変更が検討されたのは2025年春ごろ。原材料価格が安定しない中、学校側は数ヶ月にわたり複数の仕入れ業者と調整を重ね、代替食材の選定や献立への影響を試算していた。
検討資料では、野菜類の入れ替えに伴う栄養素の不足を補うため、別の副菜にたんぱく質を加える案が共有されていた。結果的に、ブロッコリーの代替にはパセリが採用され、その判断は学校全体で合意されたものだったとされている。
給食費の見直し状況と自治体の対応差
こうした比較からも分かるように、自治体ごとに対応の温度差はあるものの、共通して“給食を止めない”ための工夫と決断がなされていた。
県全体に広がる対応と給食現場の工夫
FNNが大分県内18の自治体に行ったアンケート調査によれば、ほぼすべての自治体が給食費を値上げしていた。実施時期や幅には差があるものの、物価上昇への対応は全県的な課題となっていた。
一方で、値上げを抑える努力も現場で続いていた。森中央小学校のように、国の交付金を活用して給食費の増額を回避した例もあり、地産地消や旬の食材を活用する工夫も並行して行われていた。
さらに、デザート回数の調整や、使用する食材の国産→外国産への一部切り替えなど、複数の工夫が組み合わされた“複合的対策”が現場で取られていたことが明らかになっている。
価格高騰と対応の交差点で現場が取った選択
学校給食センターでは、各食材ごとの価格動向を月ごとに集計し、費用の伸び幅が著しい食材を抽出していた。その中でも野菜類・肉類の高騰が顕著で、ブロッコリーや牛肉は真っ先に代替案の検討対象となっていた。
値上げに対して住民説明会が開催される自治体もあり、交付金の活用有無や工夫の内容が住民ごとに丁寧に共有されていた。現場では「削る」ではなく「入れ替える」ことで、献立バランスを維持する姿勢が貫かれていた。
給食室が担っていた“見えない選択”の積み重ね
給食現場では、変更対象の食材をただ入れ替えるのではなく、児童のアレルギー対応や味の受容性を加味しながら判断が進められていたという。例えば、大豆ミートの導入時には、試食会やアンケートを併用して児童の反応を確認していた記録もある。
また、栄養価の補填についても、単一の食材で全てを補うのではなく、汁物や副菜、デザートの構成全体を調整することでトータルでの栄養維持が図られていた。現場では「変更」という言葉の裏側に、幾重にも積み上げられた検討のプロセスが存在していた。
【物価高と給食制度の対応】
① 給食費の増加傾向が明らかに
→ 市町村別に材料費の伸びが報告され、平均5~10%の上昇が確認されていた。
↓
② 自治体判断で値上げ/補填策を分岐
→ 値上げ実施か交付金補填か、各自治体で制度対応が分かれていた。
↓
③ 給食現場が献立変更と手作り強化で調整
→ 食材の入れ替え・加工品削減・手作り品強化によって給食の質を維持していた。
❓ FAQ:給食費と食材変更に関する5つの疑問
Q1. なぜブロッコリーがパセリに変わったのですか?
A1. コストの違いによって、1食あたりの食材費を抑える必要があり、代替食材としてパセリが選ばれていました。
Q2. 栄養価はどう補われているのでしょうか?
A2. メイン以外の副菜や汁物で栄養バランスを調整し、献立全体でビタミンやタンパク質の不足を補う対応がとられていました。
Q3. 外国産の食材は安全なのですか?
A3. 安全基準を満たしたもののみが使用されており、栄養士の判断と事前の確認手順に基づいて導入されていました。
Q4. 全自治体で値上げされたのですか?
A4. 大分県内ではほぼすべての自治体が給食費の見直しを行っており、値上げ幅や時期には違いが見られました。
Q5. 子どもたちに影響は出ていませんか?
A5. 味や量の変更による反応は一部あったものの、工夫によって“おいしく楽しく食べる”姿勢は維持されていました。
県内給食の対応と課題
食材を通して問われる“制度の柔軟性と持続性”
今回の給食費問題は、単なる「値上げ」や「食材変更」の話にとどまらない。学校給食が制度として果たしている役割の大きさと、それを維持するための現場の調整努力が浮き彫りになった。
特に注目すべきは、自治体間で対応が分かれたにもかかわらず、どの現場でも「子どもの栄養を守る」という共通目標が一貫していた点にある。これは教育制度や食育政策の土台が、経済的圧力の中でもなお機能していた証左といえる。
今後は、国による持続的な支援策の有無が重要になるだろう。一時的な交付金で乗り切るだけでなく、給食制度そのものの柔軟性と持続可能性が問われていくことになる。