ローソンは北海道稚内市で3店舗を同時開業。想定の5割増となる売上や全国平均を超える客単価が記録され、スーパー撤退後の地域インフラを担う店舗運営が注目されていた。今後の過疎地出店戦略の先行モデルとして位置付けられている。
ローソン稚内3店舗オープン
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コンビニ大手ローソンが、人口減少が進む北海道稚内市で3店舗を同時にオープンさせた。市内での積極出店は、買い物難民への対応や地元ニーズを反映した商品構成が功を奏し、全国平均を上回る高い客単価も記録している。過疎地におけるドミナント戦略の先行事例として、今後の地方展開モデルに注目が集まっている。
| 地域 | 店舗数（2024年6月時点） | 客単価（平均） | 備考 |
|---|---|---|---|
| 北海道稚内市 | 7店舗（うち3店同時開店） | 約1,000円超 | 全国平均：799円 |
| 出店形式 | スーパー跡地活用型 | ◎ | 声問店など |
| 注目施策 | 生鮮・冷凍・仏花・玩具など生活密着品強化 | あり | 地元対応型 |
稚内で3店同時オープン、コンビニが果たす“地域インフラ”の役割
北海道稚内市で2024年6月、コンビニ大手ローソンが3店舗を同時にオープンした。過去2年間で市内7店目となる今回の展開は、急速に進む人口減少とスーパーの撤退による買い物難民対策として位置づけられている。店舗のひとつである「声問店」は地元スーパーの跡地に開設され、開店初日から買い物客でにぎわいを見せた。
稚内市での出店は、ローソンの「地域共生型コンビニ」戦略の一環として進められている。とりわけ注目されたのは、国道沿いの交通利便性を活かした店舗配置と、需要に応じた商品の取り扱いだ。76歳の女性が「家の近くに商品がそろっていてありがたい」と語るように、仏花や子どもの玩具まで並ぶ品揃えが特徴的だという。市内ではこの日、「萩見五丁目店」「宝来五丁目店」も同時開店しており、いずれも生活圏に密着した立地が選ばれていた。
出店の裏には、商圏設定と物流効率の見直しもあった。従来ローソンは1店舗あたり半径350メートルを商圏とするが、稚内では自動車移動が前提のため20キロ圏からの来店も想定されている。また「栄五丁目店」では大雪による物流の分断に備え、通常の3倍の在庫スペースを確保するなど、災害リスクを意識した備えも行われていた。
平均客単価は全国を上回り、想定売上の5割増も
稚内市内のローソン店舗では、1人あたりの平均購入額が1000円を超えており、全国平均の799円を大きく上回っていた。とくに2023年8月～11月に開店した店舗ではこの傾向が顕著で、想定売上の5割増となったケースも報告されている。
人気商品は生鮮食品やホットスナック、デザート類で、スーパーの代替として機能する構成が功を奏していた。ATMやチケット発券端末「Loppi」も利用されており、高齢世帯や単身世帯の生活支援機能を果たしているとみられる。
出店判断の根拠と住民ニーズの反映
ローソンがこの地域で出店を決めた背景には、地元住民による要望やスーパー撤退後の買い物困難が継続していた事実がある。出店にあたり、地域との協議や需要調査が行われていたことが記録に残っており、その情報に基づいた商品構成と立地選定が行われていた。開店当初から地元住民が利用する姿が見られ、事前の準備が実際の運営に反映されていたことが示されている。
都市部と地方の平均客単価の違い
| 比較項目 | 稚内市（地方型） | 全国平均（都市型含む） |
|---|---|---|
| 客単価 | 約1,000円超 | 約799円 |
| 来店頻度 | 週2～3回 | 毎日または1日複数回 |
| 購入傾向 | まとめ買い／生活品 | 少量・即食志向 |
| 利用目的 | 日常の買い物代替 | 補助的な買い物 |
都市部では日常補完的な利用が多い一方、稚内市ではまとめ買いや生鮮・冷凍食品など日常生活の中心的な買い物拠点として利用されていた。客単価の違いは、地域性と購買行動の差によって生じていた。
ローソンの地域共生戦略と“過疎地モデル”の広がり
ローソンは稚内市での成果をもとに、全国の過疎地で「地域共生型コンビニ」モデルを推進している。2023年に北海道厚真町のスーパー跡地に開設された「上厚真店」では、生鮮食品や冷凍食品を中心とした商品構成が地域に支持され、想定を3割上回る売上を維持している。こうした店舗では、商圏が小規模でも採算を確保できる構造が実証されつつある。
道内では枝幸町や浜頓別町でも出店計画が進行しており、物流効率を高めるため、旭川市の拠点を活用した広域配送体制が構築されている。地元行政との協定や空き地活用も含め、過疎地に特化したモデルが各地で展開されている状況にある。
コンビニはスーパーに比べ、少人数の居住人口でも運営が可能とされ、今後さらに高齢化・人口減少が進行するエリアにおいて、「生活インフラの代替機能」を担う存在として位置づけられている。都市部とは異なる購買動線・需要構造に対応した柔軟なモデルとして、地方自治体からの期待も高まっていた。
人口動態を踏まえた“生活密着型”店舗設計
各地でのローソン出店に共通しているのは、単なる販売拠点としてではなく、住民の生活動線を意識した配置と商品の構成にある。特に仏花・玩具・冷凍食品といった「スーパーでは入手困難だが需要のある品目」が強化されており、これは高齢者・子育て世帯の両方に配慮した戦略といえる。コンビニという形式を保ちながらも、地域独自のライフスタイルに最適化された構成が、継続的な来店動機につながっていた。
高齢化地域における店舗の“社会的役割”
都市部のコンビニが「時短消費」や「利便性」を重視するのに対し、過疎地型店舗は「安心感」や「日常の接点」を重視する傾向がある。稚内のような高齢比率の高い地域では、徒歩圏内に開店した店舗が唯一の買い物手段となる場合もあるため、単なる商業施設を超えて“社会的な拠点”としての意義を持っていた。こうした店舗は、商品提供だけでなく、顔なじみの関係性や声かけを通じた見守り機能も果たしていた。
ローソンの地域共生戦略の展開ステップ
【STEP1】 地域課題の把握（スーパー撤退／人口減／高齢化）
↓
【STEP2】 店舗候補地の選定（跡地活用／交通アクセス）
↓
【STEP3】 住民ニーズ調査（野菜・冷食・仏花・玩具など）
↓
【STEP4】 商品構成とレイアウトの最適化
↓
【STEP5】 地元行政との連携／物流ルート確保
↓
【STEP6】 店舗運営・モニタリング → 成果次第で他地域へ拡張
❓ FAQ
Q1. なぜローソンは過疎地で3店同時に出店したのですか？
A1. スーパーの撤退が相次ぎ、地元住民の買い物手段が限られていたためです。声問店をはじめとする3店は生活圏に密着し、高齢者や家族世帯の需要に応える形で配置されました。
Q2. 稚内市の客単価が高い理由は？
A2. 都市部に比べて来店頻度が低く、1回あたりの購入量が多いためです。生鮮食品や冷凍食品、惣菜など生活必需品をまとめて購入する傾向があり、平均1000円超という高水準を記録しています。
Q3. コンビニが過疎地で採算を取れるのはなぜ？
A3. コンビニはスーパーよりも少人数の商圏で運営可能なうえ、物流や店舗設計を地域ごとに最適化することで効率を確保しています。実際に稚内の店舗は想定の5割増の売上を記録しています。
Q4. 地域共生型コンビニの特徴とは？
A4. 地域の実情に合わせて仏花や玩具などを取り扱い、スーパーの役割も一部代替している点が特徴です。また、物流途絶に備えた在庫確保や行政との連携も行われています。
Q5. このモデルは他地域でも展開されているのですか？
A5. はい。北海道厚真町、枝幸町、浜頓別町などでも同様の出店が進められており、全国の過疎地での横展開が本格化しています。
“日常の中心”となったコンビニ 稚内モデルが示す地域密着の商業戦略
稚内市でのローソンの3店舗同時r開店は、単なる商業的戦略にとどまらず、地域における生活インフラの再構築に近い意味を持っていた。人口減とスーパーの撤退が進む中で、コンビニが代替機能を果たすという流れは、今後さらに全国へ広がる可能性が高い。
注目すべきは、稚内において全国平均を大きく上回る客単価が観測された点である。これは単に価格帯や物価の問題ではなく、コンビニが「日常の中心」として定着していることを示す現象だった。生活密着型の商品構成と災害対応力、そして行政との連携という三位一体の構造は、過疎地における“持続可能な商業形態”の可能性を示唆している。
こうした事例は、店舗戦略の再設計だけでなく、地域政策や買い物弱者支援の議論にも接続していくべきだろう。
