2026年、阪神甲子園球場にてジェット風船演出が5年ぶりに復活する。阪神球団は再開にあたり、専用ポンプ式の風船を導入し、旧来の口吹き式を全面禁止とした。風船は使用後に専用ボックスで回収され、ペットボトルキャップを再利用した笛部分の素材とあわせて、再資源化を推進する方針。今回の再開は「応援文化の復活」にとどまらず、「資源循環」としての意義も持ち始めている。対象は甲子園球場に限定されており、他球場での使用は不可となっている。
ジェット風船が復活へ
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阪神タイガースは2026年シーズンより、甲子園球場における主催試合にて「ジェット風船」応援を再開することを発表した。過去の口吹き式とは異なり、専用ポンプを使う形式で感染対策と演出性の両立を図る。球場内には使用済み風船の回収ボックスも設置され、環境資源への配慮も進められている。実証実験を経た上での正式導入であり、応援文化の復活と持続可能な取り組みの両立が注目されている。
再開決定と演出の全体像
阪神球団は2025年7月3日、公式に「2026年シーズンからのジェット風船再開」を発表した。対象は阪神甲子園球場での主催試合であり、演出の象徴である「ラッキーセブン」のタイミングで一斉に風船を飛ばす形式が復活する。
使用される風船は、2025年のオープン戦で実施された実証実験と同様、専用ポンプ式のものとなる。口吹きによる感染リスクや騒音問題を避けつつ、応援演出としての迫力を残した構成が取られていた。
今回の発表では、風船の演出を“持続可能な形”で導入することにも重点が置かれていた。単なる復活ではなく、素材や回収体制、演出タイミングに至るまで、精緻な計画が裏付けられていた。
発表当日に示された回収体制と素材再利用
球団発表では、風船の使用後に専用回収ボックスへ投棄し、再資源化を図る取り組みが明言された。特に注目されたのは、風船の空気注入口(笛)部分に、甲子園球場内で回収されたペットボトルキャップを再利用するという点である。
この笛素材は、リサイクルプラスチックの代表例として提示され、循環型資源の一部として導入される。実証実験を通じて得られた運用データをもとに、風船の材質や製造ロットも管理される計画が発表されていた。
使用ルールと環境設計が新たに追加されていた
風船利用における新ルールが整理された。まず、過去に使用されていた口吹き式風船や、2019年以前の旧製品は使用禁止とされた。専用ポンプ以外で膨らませるタイプは、衛生・安全両面でリスクが高いと判断されたことが要因である。
また、風船の販売価格や販売箇所はまだ未定としつつも、球場内でのみ適切な形で配布される方針が明示された。飛ばすタイミングは「7回裏」のラッキーセブンに限定され、周囲の安全確認も係員によって実施されることが予定されていた。
旧仕様と2026年再開仕様の違い
項目 | 2019年以前 | 2026年仕様 |
---|---|---|
膨らませ方 | 口吹き式 | 専用ポンプ式(手押し) |
飛沫対策 | 対策なし | 周囲飛沫を抑制する設計 |
回収体制 | 任意(放置多発) | 専用ボックスで回収義務化 |
素材対応 | 汎用ゴム/笛素材不明 | ペットボトルキャップ再生材使用(笛部分) |
使用場所 | 甲子園/京セラなど | 甲子園のみ(京セラ・SGLは禁止) |
実施根拠 | 慣習的応援 | 実証実験による効果検証後に再開 |
実証実験から正式再開への検証と対応経緯
2025年3月9日、甲子園で行われた巨人戦にて、阪神タイガースはジェット風船の実証実験を実施した。専用ポンプ式を使った約1,000本の飛翔実験が行われ、風船の到達高度や飛翔音、回収率、安全性などが細かく観察された。
この検証を通じて、口吹き式の問題点や飛沫拡散リスクへの対応策が固まり、2026年からの正式運用に踏み切る根拠となった。観客の行動導線や係員の配置、風船素材の耐久試験までが1試合単位で評価されており、球団としては継続的な運用と評価の仕組みを整備していた。
京セラDやSGLは引き続き禁止区域とされた
今回の再開発表では、ジェット風船使用の対象球場が限定的であることも明示された。具体的には、阪神主催でも「京セラドーム大阪」「ほっともっとフィールド神戸(SGL)」での使用は引き続き禁止される。
理由としては、ドーム屋内での飛翔による視界妨害や回収困難などの物理的問題に加え、空調循環による風船の不規則飛行による安全性低下が挙げられた。あくまで「甲子園限定」での復活であり、旧来の応援をすべて復元するものではないとされていた。
ジェット風船は“応援”か、それとも“資源”か
再開発表に対するSNS上の反応は、単なる「応援の復活」にとどまらなかった。多くのファンが注目したのは、“素材の循環”という球団の姿勢だった。かつての風船は試合終了後に無数に散乱し、清掃作業や景観問題の一因となっていたが、今回は専用ボックスでの回収と再資源化が徹底される。
演出物が「使い捨て」から「循環型資源」へと変わった点に対して、ファンからは「演出というより社会参加に近い」「風船1つに意志が込められている」といった声も寄せられていた。
再開判断から球場導入までの流れ
-
問題の発生(2020年~)
└ 新型コロナによる風船中止 → 応援文化の分断 -
実証実験の実施(2025年3月9日)
└ 巨人戦でのポンプ式風船試験 → 飛翔状況を記録 -
素材と回収体制の整備
└ 再生材の活用/専用ボックス設置 -
ルールと使用範囲の策定
└ 旧風船の使用禁止/甲子園限定 -
2026年シーズンからの正式導入
└ ラッキーセブン演出に合わせて飛翔再開
FAQ
Q1. 過去に買った風船は再利用できますか?
→ できません。専用ポンプ式風船のみ使用可で、2019年以前の風船は使用禁止です。
Q2. ポンプは風船ごとに使い捨てですか?
→ はい。専用ポンプは風船と一体化した簡易式で、1回使用後に回収され再資源化されます。
Q3. 風船の販売価格や場所は?
→ 現時点では未発表です。詳細は球団公式サイトなどで後日告知されます。
Q4. 甲子園以外では飛ばせますか?
→ いいえ。ジェット風船の使用は甲子園球場での主催試合に限定されています。
Q5. なぜ再生材にこだわったのですか?
→ 球団が掲げる“持続可能な応援”の一環として、廃棄を減らす環境施策の一部です。
まとめ
“使い捨て応援”の終焉と風船に込めた役割の変化
かつてのジェット風船は「観客が一体となって演出するための使い捨てアイテム」であり、球場の高揚感を担う象徴でもあった。しかし、2026年から再開される風船演出は、その位置付けを大きく変えていた。
再資源化という社会的文脈を背負い、衛生と演出の両立を図るという時代的課題に応えた結果、応援具が単なる“演出物”から“共創資源”へと移行していた。飛ばす風船1つにまで意図と設計が込められたこの再開は、阪神球団が持続可能性と伝統文化を両立させるための実験的かつ象徴的な第一歩だった。