岩手県北上市の住宅で、81歳の女性が死亡しているのが発見されました。警察によると、頭部や腕にクマの爪によるとみられる傷があり、動物に襲われた可能性が高いとされています。周辺では先月末から物的被害も確認されており、北上市は緊急の警戒本部会議を開催。市内3カ所に避難所を開設するなど、地域の安全確保に向けた対応が進められています。
住宅でクマに襲われ死亡
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岩手県北上市の住宅で、81歳の女性がクマに襲われたとみられる状態で死亡しているのが発見されました。警察によると、女性の頭部や全身に動物の爪痕があり、近隣では直前にもクマによる物的被害が相次いでいたということです。北上市は緊急の警戒本部会議を開き、複数の避難所を開設するなど対応を強化しています。
自宅で発見された高橋成子さんの死亡状況
岩手県警によると、2025年7月3日午前7時半すぎ、北上市和賀町山口にある住宅で、住人の高橋成子さん(81)が倒れているのを、仕事から帰宅した息子の高橋清さん(54)が発見し、警察に通報した。成子さんは居間の中央で出血した状態で倒れており、駆けつけた消防によりその場で死亡が確認された。
警察が遺体を確認したところ、頭部や腕を中心に動物の爪によるとみられる複数の傷が確認された。傷の形状や深さなどから、体長1メートル以上のクマに襲われた可能性が高いと判断されている。成子さんが外出していた形跡はなく、自宅内で被害に遭った可能性があるという。
近隣の住民からは以前から「この付近でクマを見かけた」との情報が寄せられており、警察は現場周辺に臨時の警戒区域を設け、周辺に注意を呼びかけている。
爪痕・目撃情報と地域への被害が確認されていた
警察と北上市によると、今回の事案が発生する数日前から、和賀川南方の一帯ではクマによるとみられる物的被害が複数報告されていた。具体的には、農作物の荒らしや小屋の破損、自宅の外壁への爪痕などが相次いでいた。
6月30日には、現場近くの別の住宅でも木製倉庫の一部が壊されているのが確認され、住民が「夜中に何かがうなる声が聞こえた」と証言していた。こうした背景を踏まえ、今回の死亡事案との関連性について、警察は継続して捜査している。
和賀川周辺の被害と居住地の環境が重なっていた
成子さんの住宅は、和賀川から南へ約400メートルほど離れた農村地帯に位置しており、周囲には水田や山林が広がっている。北上市によると、こうした地形はクマの出没リスクが高まる地域特性にあたり、過去にも小動物の襲撃や家畜被害の報告があったという。
また、今回の現場では人里からわずか100メートル圏内で痕跡が見つかったことから、「クマの行動範囲が拡大している可能性がある」と市は見ている。
近年のクマ被害との共通点と自治体対応の変化
今回の事案は、過去の物的被害や接近事例とは異なり、屋内で人命が奪われる重大なケースであり、自治体の対応も一段と踏み込んだものとなっている。
北上市が警戒本部を設置し避難体制を強化
今回の死亡事案を受け、北上市は7月3日午後、市役所で緊急の警戒本部会議を開催した。会議では、クマによる人身被害の可能性を重く見て、同日午後1時をめどに市内3カ所に自主避難所を開設する方針が示された。
北上市の発表によると、避難所は市民の不安を軽減し、夜間の外出リスクを抑える目的で整備されたもので、地域住民に対しては防災無線や市の公式サイトを通じて周知が進められている。また、付近の小学校や福祉施設には、緊急対応マニュアルの再確認が求められたという。
市は今後、周辺地域への見回りを強化するとともに、クマの痕跡や足跡の分析を進めている。
市が開設した避難所と住民への呼びかけ
北上市が発表した避難所の設置先は以下の3カ所で、いずれも地域住民が徒歩または車でアクセス可能な距離にある。
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和賀地区公民館
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北上ふれあいセンター
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南部交流センター
市はこれらの避難所を7月3日午後から順次開設し、高齢者や子どもを含む住民の一時避難を促している。あわせて、「夜間の単独行動を避ける」「ゴミの出し方に注意する」など、クマを引き寄せない生活環境づくりを市報で呼びかけた。
自主避難所の場所と情報の共有体制
市によると、各避難所には緊急物資の備蓄が整備されており、夜間も職員が交代で常駐する体制が取られている。和賀地区の一部では、希望する住民に対して移動支援サービスも実施されており、避難手段の確保が進められている。
また、北上市は公式LINEやSNSを活用し、出没状況や避難所の利用状況をリアルタイムで配信している。市内全域の防災スピーカーによる定時アナウンスも強化され、情報伝達の即時性が重視された対応が続いている。
通報から避難所設置までの動き
本件では、発見から行政の対応に至るまでが数時間のうちに進み、北上市としては迅速な対策を講じた形となった。通報を受けた警察と消防は、動物による外傷と判断した時点で、ただちに市と情報を共有し、連携を強めていた。
警戒本部の設置は、その日のうちに実現され、同時に避難所の整備や注意喚起も展開された。被害者の居住地が農村部にあることを踏まえ、移動や連絡手段が限られる住民への対応が重視されたことが読み取れる。
自宅発見から警戒本部設置までの3段階の流れ
今回の対応は、通報からわずか5時間以内に行政機関が危機管理体制を展開しており、緊急事案への判断と処置の速度が評価されている。