厚生労働省が公表した2023年の「国民生活基礎調査」によると、全国の世帯のうち単身世帯と65歳以上の高齢者世帯の数が過去最多を更新し、いずれも3割を超えました。一方、18歳未満の子どもがいる世帯は過去最少となり、家族構成の変化が明確に表れています。調査背景には、高齢化や未婚率の上昇、出生数の減少が影響しているとされ、社会制度への影響も含め注目されています。
単身世帯と高齢者世帯が最多に
広告の下に記事の続きがあります。ペコリ
厚生労働省が公表した「国民生活基礎調査」の結果から、単身世帯と高齢者世帯が過去最多となった一方で、子育て世帯は過去最少となったことが明らかになった。社会構造の変化を示す統計として注目されている。
分類 | 世帯数 | 割合 | 過去最多/最少 |
---|---|---|---|
単身世帯 | 1899万5000世帯 | 34.6% | 過去最多 |
高齢者世帯 | 1720万7000世帯 | 31.4% | 過去最多 |
子育て世帯 | 907万4000世帯 | 16.6% | 過去最少 |
調査時点 | 2023年6月実施 | 2024年公表 | ― |
調査主体 | 厚生労働省 | 1986年開始 | ― |
単身世帯と高齢者世帯、初の3割超え
厚生労働省が2024年6月に公表した「国民生活基礎調査」によると、全国の世帯数に占める単身世帯と65歳以上の高齢者がいる世帯の割合がいずれも初めて3割を超え、統計開始以来、最多を更新した。
単身世帯は1899万5000世帯にのぼり、全体の34.6%を占めた。高齢者世帯も1720万7000世帯で、31.4%となった。いずれも前年から1ポイント以上増加しており、1986年の調査開始以降で最も高い水準となった。
子育て世帯は過去最少に
一方、18歳未満の子どもがいる世帯、いわゆる子育て世帯は907万4000世帯で、全体の16.6%と過去最少となった。
この割合は年々低下しており、10年前の2013年の調査では**20.6%**だった。世帯構成の中心が「子育て」から「高齢者」へとシフトしている現実が、数値として明確に表れている。
厚労省はこの傾向について、「未婚率の上昇や出生数の減少が大きく影響している」と分析している。
背景にある社会動態の変化
厚労省は今回の結果について、次のように分析している。
-
高齢単身者の増加が続き、1人暮らしの高齢者が世帯全体を押し上げている
-
若年層を中心に非婚・晩婚の傾向が続き、未婚率も上昇している
-
出生数が記録的な低水準となり、子どもがいる世帯そのものが減少している
こうした複合的な要因により、単身世帯や高齢者世帯の比重が高まる一方で、子育て世帯は減少傾向が続いていると指摘されている。
過去との比較で見る世帯構造の変化
年度 | 単身世帯割合 | 高齢者世帯割合 | 子育て世帯割合 |
---|---|---|---|
1986年 | 約19.8% | 約12.0% | 約30.5% |
2000年 | 約25.6% | 約18.5% | 約25.0% |
2010年 | 約30.1% | 約24.3% | 約20.8% |
2023年 | 34.6% | 31.4% | 16.6% |
この表からも、30年以上にわたる世帯構成の変遷が読み取れる。かつて主流だった子育て世帯は大きく減少し、現在は高齢単身世帯が全体をけん引している。
進む“単身高齢化”と家族構成の変容
高齢者世帯の増加は、単なる人口の高齢化にとどまらず、家族構成そのものの変化を伴っている。
特に注目されるのが、「高齢単身世帯」の割合が急増している点である。厚労省によると、65歳以上の1人暮らしは805万世帯を超え、全体の**約14.7%**に相当する。1986年の約4倍にあたる水準となり、夫婦や親子など複数人世帯を上回る勢いを見せている。
この傾向は、未婚率の上昇や配偶者との死別、子どもとの別居などが複合して進行しているとされる。
医療・介護制度への影響
高齢単身者が増加することで、社会制度への圧力も高まっている。
ひとり暮らしの高齢者は、体調不良時の対応や通院の付き添い、介護サービスの調整などを自らの判断と行動で完結しなければならない状況に置かれる。
厚労省の調査では、単身高齢者のうち「生活に困っている」と回答した割合が複数人世帯に比べて1.6倍高く、経済的困窮や孤立のリスクも顕在化している。
制度設計の観点からは、家族に依存しない支援体制の再構築が問われている。
地域別に見た単独世帯の偏在
高齢者の単独世帯は、全国一律で増加しているわけではない。
都市部、特に東京都・大阪府・福岡県などでは、単独世帯が全体の4割を超える自治体が複数確認されている。一方、地方では3世代同居が依然として一定数存在し、支援の形にも地域差が生じている。
こうした分布の偏りは、「自治体による支援制度の設計」にも影響しており、国の制度と地方独自施策の二重構造による対応が必要とされている。
統計公表から制度対応までの流れ
よくある5つの疑問
Q1. なぜ1人暮らしの高齢者が急増しているのですか?
A1. 未婚率の上昇や配偶者の死別、子どもとの別居が重なり、単身で生活する高齢者が増えたと厚労省が分析しています。
Q2. 高齢単身世帯が多い地域はどこですか?
A2. 都市部で顕著です。特に東京23区や大阪市内では単独世帯の割合が40%を超える自治体もあります。
Q3. 子育て世帯の割合はどれくらいですか?
A3. 2023年時点で全世帯の16.6%にとどまり、過去最低を記録しました。
Q4. この傾向は今後も続くのでしょうか?
A4. 厚労省は社会構造の変化が継続すると見ており、短期間での逆転は難しいとしています。
Q5. どんな支援が求められていますか?
A5. 医療や介護だけでなく、地域とのつながりを促す制度や、見守り・移動支援など生活全般にわたる対策が必要とされています。
数値と構造から見た全体まとめ
家族のかたちが問い直される時代に
世帯の“基本単位”として捉えられていた「家族」が、かつてとは異なる輪郭を持ちはじめている。
高齢単身世帯の増加、子育て世帯の減少という構造的変化は、単なる人口構成の話にとどまらず、「生活の前提」が変わりつつあることを示している。
調査結果は、制度設計や支援のあり方を見直す契機となり、誰もが安心して暮らせる社会の基盤を築くための出発点といえる。