映画『キャンドルスティック』の公開初日舞台挨拶が開催され、主演の阿部寛と菜々緒が撮影の裏話を語った。菜々緒は共感覚を持つ実在の友人の体験をもとに、白髪を染めずに演技に挑んだと明かし、役づくりへのこだわりが話題に。水かけシーンや国際合作映画ならではの裏側も詳しく紹介。作品の新しさと、俳優陣の挑戦を伝える舞台裏に迫る。
菜々緒が“白髪”で挑む
広告の下に記事の続きがあります。ペコリ
4ヵ国6都市を舞台にした日台合作映画『キャンドルスティック』の公開初日舞台挨拶が、7月4日に都内で行われた。主演の阿部寛をはじめ、菜々緒、サヘル・ローズ、津田健次郎、YOUNG DAIS、米倉強太監督が登壇し、国際色豊かな作品の裏側や撮影中のエピソードについて語った。
舞台挨拶と登壇者の発言
日本と台湾の合作映画『キャンドルスティック』は、日本、台湾、イラン、ハワイの6都市を舞台にしたスリリングなマネーサスペンスとして企画され、主演を務めた阿部寛が野原という元ホワイトハッカーの役を演じている。阿部は舞台挨拶で、「英語のセリフが多くて現場ではパニック状態になることもあった」と語る一方で、共演した菜々緒との会話がリラックスにつながったと明かしていた。
菜々緒との共演は今回が初めてだったが、阿部は「スタジオですれ違ったときからオーラを感じていた」と話し、「しゃべりのキレが良くて、自然体なところが魅力的だった」とその印象を述べた。菜々緒も「持っていたイメージそのまま。でも、どこかお茶目な一面もあって、取材で“忘れちゃった”と笑って話す姿が印象的でした」と、共演を楽しんでいた様子を語っていた。
津田健次郎は、初対面にもかかわらず阿部に水をかけるシーンを演じたという。津田は「舞台で阿部さんを観て育ったような感覚があったので、“この阿部さんに水をかけるのか”と緊張しました」と撮影時の心情を明かした。阿部もまた「水は意外と真っすぐ飛ばないので難しい」と語り、現場の緊張感を共有していた。
菜々緒が明かした共感覚の友人と役づくり
舞台挨拶では、菜々緒が演じるキャラクターに共感覚の設定があることにも触れた。菜々緒は「実際に“共感覚”を持つ友人がいる」と話し、その友人が強い感覚刺激に日常的にさらされていること、そしてストレスから白髪になってしまったことを明かした。「その苦労を感じ取ってもらえるよう、今回は白髪を染めずに撮影に臨みました」と語り、役づくりに対する強い意識をにじませていた。
共感覚とは、音や色、感情などの刺激が複数の感覚として同時に認識される現象を指す。劇中で菜々緒が演じる人物は、その特性を生かしながらAI相手の駆け引きに関与する設定となっており、感覚と頭脳の両面から物語を牽引していく立場にある。
SNS発言と裏話整理
項目 | 内容 |
---|---|
撮影裏話 | 津田健次郎が阿部寛に水をかける場面は一発成功だったと報告された |
菜々緒の役づくり | 共感覚を持つ友人の実例を参考に白髪を染めずに演じたと発言 |
阿部寛の印象 | 菜々緒は「お茶目な面がある」とコメント |
英語セリフの苦労 | 阿部が「パニックになったが菜々緒との会話に助けられた」と振り返った |
合作映画という挑戦と制作の手応え
『キャンドルスティック』は、日本と台湾の合作として制作され、撮影地も複数の国と地域にまたがった。阿部寛は「イランは別チームで撮っていた」と明かし、国際的な分業体制で進められたことを振り返っていた。撮影現場では、映像ディレクションを担ったカメラマンが役者出身だったことにも触れ、「演技の動きに合わせてカメラが自然に動いてくれる感覚があった」と語っている。
阿部は、今回の作品を通じて「今後こういった合作映画が増えるきっかけになると思う」と述べ、国際的な制作手法への肯定的な見解を示した。特に、ジャンルとしてのマネーサスペンスにSF要素と社会性を交えた構成が「これまで見たことのない仕上がりになった」と自信をのぞかせた。
監督演出と俳優陣の適応力
本作を手がけた米倉強太監督について、出演者たちは「演出が柔らかく、役者との信頼関係が築かれていた」と口をそろえる。菜々緒も「監督の雰囲気が現場に安心感をもたらしていた」と語り、阿部も「新しい視点を与えてくれる存在だった」と評していた。
監督は、海外ロケが含まれる複雑なスケジュールと通信環境のなかでも「俳優が持っている本質的な温度に委ねるような演出スタイル」を維持したとされる。これにより、言語や文化の壁を越えた演技の連携が可能になったという。
共感覚というテーマの広がり
舞台挨拶で語られた“共感覚”の要素は、物語上の設定にとどまらず、社会的なテーマとしての広がりを持っていた。菜々緒が明かした知人の体験には、強い感覚刺激とその影響による身体的変化(白髪化)が含まれており、演技のベースに現実の声が存在していたことがうかがえる。
視点として注目すべきは、こうした「目に見えない感覚特性」を可視化する方法を役者がどのように表現に取り込むかという点にある。衣装やヘアメイクに込められた“再現”の手法は、感情ではなく現象を写す手段として機能しており、共感覚に対する認知が広がる契機にもなり得る構成だった。
よくある質問(FAQ)
Q1:『キャンドルスティック』は何カ国で撮影されたのですか?
A1:日本・台湾・イラン・ハワイの4カ国6都市で撮影が行われたと報道されています。
Q2:阿部寛さんと菜々緒さんの共演は今回が初めてですか?
A2:映画での本格共演は初めてですが、TBSスタジオですれ違った経験があったことを阿部さんが語っています。
Q3:菜々緒さんの“白髪”は演出上のものですか?
A3:はい。共感覚を持つ実在の友人から着想を得て、あえて白髪を染めずに出演したと本人が明かしています。
Q4:本作はどんなジャンルに分類されますか?
A4:マネーサスペンスを軸にしつつ、AI・共感覚・国際合作の要素が組み合わさった新機軸の作品です。
Q5:国際合作ならではの工夫はありますか?
A5:撮影地の分業体制や、多言語による演技の構成、演出の柔軟性が評価されています。
まとめ
俳優の身体が“翻訳装置”になるとき
国際合作映画『キャンドルスティック』は、単なる映像技術の共有にとどまらず、「身体と言語が交差する現場」において、俳優自身が翻訳装置として機能するという可能性を提示した。菜々緒の白髪はメイクではなく経験の写像であり、津田健次郎の一発勝負の演技は即興性を超えた正確な信頼に裏打ちされている。
こうした現場では、演出の言語や文化的文脈が常に“翻訳”を求められる。阿部寛が言った「演技に合わせてカメラが動く感覚」は、技術よりもむしろ、演技の温度に寄り添った結果としてのカメラワークだったと考えられる。本作は、翻訳ではなく“通訳”としての俳優の在り方を体現した一作だった。