兵庫県姫路市の運送会社で、荷下ろし作業中に脱輪したフォークリフトをけん引していたところ、別のフォークリフトの先端が運転手に刺さり、死亡する事故が発生した。警察は業務上過失致死の疑いで、当時運転していた所長から事情を聴いている。現場では日常的に構内作業が行われており、対応手順や安全確認の在り方が問われている。
発生日 | 2024年7月5日(金)午前9時ごろ |
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発生場所 | 兵庫県姫路市町坪の運送会社 |
被害者 | 61歳・男性作業員(フォークリフト運転中) |
加害者 | 52歳・男性所長(別のフォークリフト運転中) |
概要 | 脱輪したフォークリフトをロープけん引中に接触、先端が刺さり死亡 |
警察の対応 | 業務上過失致死の疑いで経緯を捜査中 |
事故の発生経緯と現場状況
兵庫県姫路市町坪にある運送会社の構内で、2024年7月5日午前9時ごろ、フォークリフトを使った荷下ろし作業中に事故が発生した。現場では、1人乗りのフォークリフトがトラック付近の段差で脱輪し、前輪が地面に落ちた状態となっていた。
会社ではこの脱輪に対応するため、別のフォークリフトを用いてロープでけん引しようとしたが、その作業中に事故が起きた。けん引作業を行っていた側のフォークリフトの先端が、脱輪していたフォークリフトの運転席付近に接近し、乗車していた男性の左足に突き刺さる形で接触した。
被害に遭ったのは61歳の男性で、直後に救急搬送されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
フォークリフト脱輪の直前
事故当時、フォークリフトはトラックへの荷物の積み下ろし作業中であり、構内に設けられた段差の縁に差しかかった際、左前輪が踏み外す形で脱輪したとされている。運転中の視界や段差の深さ、舗装状況なども事故発生の一因とみられ、警察は現場の構造的要因についても調査している。
けん引作業中の接触
事故は、ロープを介してけん引を開始した直後に起きた。けん引側のフォークリフトが接近した際、その先端に装着されたツメ部分が脱輪中の車両運転席側に入り込み、運転中の男性の左足部に深く刺さった。作業中の連携手順や安全確認の徹底が行われていたかどうかも、警察が今後重点的に確認する方針を示している。
被害者の身元と当日の業務背景
亡くなったのは、姫路市内のこの運送会社に勤務していた61歳の男性で、当日は通常業務として荷物の積み下ろし作業に従事していた。午前9時前後、トラック到着後の対応としてフォークリフトを使って荷物の移動を開始したが、脱輪とけん引中の接触が重なり、短時間で重大な事故につながった。
事故発生時、現場には複数の作業員がいたものの、直接の補助者が配置されていたかどうかは明らかになっていない。安全管理マニュアルの有無や作業指示の詳細も、今後の捜査対象とされている。
作業と事故要因の整理
項目 | 内容 |
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作業目的 | 荷下ろし作業(トラックとの連携) |
発生位置 | 構内段差で左前輪が脱輪 |
応急対応 | 別フォークリフトによるロープけん引 |
事故の瞬間 | けん引フォークの先端が被害者の足部に刺さる |
結果 | 被害者は病院搬送後に死亡確認 |
会社の対応と警察の調査方針
フォークリフトのけん引中に発生した今回の死亡事故について、けん引を担当していたのは同社の52歳の所長だったことが明らかになっている。所長は現場で直接フォークリフトを操作しており、被害者の男性が乗った脱輪車両を後方からロープで引っ張る作業を行っていた。
警察は、作業手順や安全措置に不備がなかったかを確認するとともに、所長の運転に過失がなかったかどうかを含め、業務上過失致死の疑いで調査を進めている。被害者の男性が脱輪したフォークリフトに乗車したままの状態でけん引されていたことから、避けられた事故であった可能性についても捜査対象とされている。
所長の運転と責任所在
けん引中の接触によって死亡事故が発生した点を重く見た警察は、所長による運転操作の状況やロープの結び方、安全確認の有無など、事故の予見可能性を詳しく調べている。会社としても、現場での指揮を取る立場にあった人物が運転に関与していたことで、管理監督責任が問われる形となっている。
再発防止と安全対策
事故後、会社側は当該フォークリフトの運用を一時停止し、安全手順や作業時の人員配置に関する見直しを開始した。特に段差を伴うエリアでの走行や脱輪時の対応方法、けん引の可否判断を明確に定める必要があるとされている。
フォークリフトは免許制である一方、構内作業は監督の目が届きにくい場面も多く、熟練者による判断ミスや危険察知の遅れが重大事故につながりかねない。会社は今後、全従業員を対象とした緊急安全研修の実施を検討している。
捜査対象となる罪状と背景
警察は本件について、刑法上の業務上過失致死の疑いで所長から事情を聴いており、事故の直接原因だけでなく、作業を始める前に十分な確認が行われていたか、社内での安全指示があったかなども含めて捜査対象にしている。
また、所長がなぜ自ら運転を行ったのか、その背景や当日の人員配置も捜査の焦点となっている。業界全体で慢性的な人手不足が続いている中で、管理職が現場に出る例も少なくなく、今回の事故にもそうした構造的な背景が関係していた可能性がある。
脱輪状態のままけん引する危険性と見落とされた判断
今回の事故では、脱輪して動けなくなったフォークリフトをロープでけん引しようとする判断が、結果的に重大なリスクを引き起こした。通常、脱輪状態での車両けん引には「乗員を下車させたうえで実施する」などの安全措置が求められるが、被害者は運転席に乗ったままの状態で接触に至っていた。
視認しづらい位置で作業していた可能性や、操作側からの死角の存在も考えられるが、いずれにせよ事前の安全確認と手順の徹底が行われていれば防げた事故だった。単なる「作業中の不運」ではなく、判断ミスと安全意識の綻びが重なった結果である。
事故発生までの工程整理
時刻・段階 | 作業内容 | 状況/判断 | 結果 |
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午前9時ごろ | トラックに荷下ろし作業 | フォークリフトが段差で脱輪 | 前輪が落ちる |
数分後 | 別のフォークリフトを使用 | ロープでけん引準備 | 被害者は乗車したまま |
けん引開始 | ロープで後方から引く | 接近時に先端が刺さる | 左足を損傷 |
救急搬送 | 救急車で病院へ搬送 | 救命措置も及ばず | 死亡確認 |
❓ FAQ
Q1. 事故はいつ、どこで起きましたか?
A1. 2024年7月5日午前9時ごろ、兵庫県姫路市町坪にある運送会社の構内で発生しました。
Q2. どのような作業中に事故が起きたのですか?
A2. フォークリフトによる荷物の積み下ろし作業中に、段差で前輪が脱輪し、それをけん引しようとした際に接触事故が発生しました。
Q3. 被害者の男性はどのような状態だったのですか?
A3. 脱輪したフォークリフトの運転席に乗車したままの状態で、けん引中のフォークリフトの先端が左足に刺さり、搬送先の病院で死亡が確認されました。
Q4. けん引を行っていたのは誰ですか?
A4. 同じ運送会社に所属する52歳の男性所長で、現場の作業指揮者でもありました。
Q5. 警察はどのような対応を取っていますか?
A5. 姫路警察署は業務上過失致死の疑いも視野に入れ、けん引作業の安全確認手順や判断の妥当性を含めて捜査を進めています。
「見えていたはずの危険」――構内作業に潜む判断ミスの連鎖
構内作業における事故の多くは、「目の前の作業に集中するあまり、次の動作を見誤る瞬間」に起きている。今回の姫路市でのフォークリフト事故も、脱輪というトラブルへの即時対応が命取りとなった事例だった。しかも運転を担当していたのは会社の所長であり、経験や判断力が求められる立場の人物だった点に重みがある。
通常、フォークリフトによるけん引は補助員による声掛けや降車確認が必要だが、今回それがなかった可能性が高い。脱輪した状態で人が乗ったままという前提で作業が進められた事実は、現場に共有された「常識」が事故を引き起こした構造的要因とも言える。
再発防止の視点では、手順書や研修の充実だけでなく、「安全と時間効率の優先順位」を会社内で明示する必要がある。日々の現場判断にこそ、安全の原則が組み込まれていなければならない。