突然「ETCが使えなくなるかも」…その本当の理由とは?
高速道路の便利な支払い手段として多くのドライバーに定着しているETC(自動料金収受システム)。ところが、いまこのETCに関して、「突然使えなくなる」という指摘が相次いでいます。
とくに夏場を迎えた今、「ETCカードを車載器に挿しっぱなしにしている」ことが思わぬトラブルにつながる可能性が報じられています。盗難や機器破損のリスク、さらには制度上の更新期限による「利用不可」など、日常的に見落とされがちな注意点が浮き彫りになっています。
✅ この記事でわかること
ポイント | 要約 |
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なぜ使えなくなる? | 一部のETC車載器に「利用期限」が設定されており、更新されていないとゲートを通過できなくなる |
夏に起こるリスク | 車内の高温により、ETCカードのICチップが変形・破損し読み取りエラーを起こすケースがある |
実用的な対策は? | 挿しっぱなしを避け、盗難や劣化を防ぐため「都度の抜き取り」が安全策とされている |
「突然使えない」は本当? ETC車載器に迫る“期限切れ”問題
国土交通省が公表しているデータによれば、2025年3月時点でETCの利用率は全国平均で95.3%に達しています。しかしその一方で、一部の旧型車載器には「使用期限」が設けられており、期限を過ぎると通行ゲートを通れないトラブルが発生しているとNHK・日経新聞などが伝えています。
とくに、2007年以前に製造されたETC車載器の一部では、暗号化方式や通信規格の切替により、順次「利用停止対象」になっていくことが明示されています。これはセキュリティ対策の一環として行われており、対象機器はメーカーの案内ページや「ETC利用照会サービス」で確認する必要があります。
ゲートで読み取りができなければ、開閉バーが作動せず、通行ができないばかりか、通行妨害や不正通行とみなされるリスクもあるため、早めの確認と更新が求められています。
ETCカード挿しっぱなしは「盗難」と「熱変形」の危険が
日常的に見落とされやすいのが、ETCカードを車載器に挿したまま放置する習慣です。日経新聞や読売新聞によると、これは盗難や不正利用の温床となりやすく、補償対象外となる場合があるとされています。
たとえば、「りそなカード」のETC規約では、以下のような条項が明示されています。
「車内に放置されたことで盗難に遭った場合は、会員に重大な過失があるものとみなす」
このような規約は多くのカード会社で共通しており、カードを車内に放置していた場合の被害は、原則として補償されないリスクがあります。
さらに、夏場の車内温度は50度以上に達することもあり、JAFが行ったユーザーテストでは、ダッシュボード上の温度が57.8度に達したという結果も報じられています。ETCカードのICチップの耐熱限界は45~50度とされており、熱によってチップが破損し、読み取り不能になるケースも実際に発生しています。
真夏の車内で起きる「もう一つの危険」
ETCカードだけでなく、他の車載物にも高温による危険が潜んでいると消防庁・総務省などが警鐘を鳴らしています。
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モバイルバッテリー:内部にリチウムイオン電池を内蔵しているため、車内に放置すると膨張・発火の危険があります。
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スプレー缶:可燃性ガスを含む製品は高温で圧力が上昇し、破裂・爆発の事例が実際に発生しています。
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ペットボトル:太陽光を集めて収れん火災を起こす例が報告されており、置き方次第で火災につながる恐れもあります。
こうしたリスクは、ドライバーが気づかないうちに重大事故を引き起こす可能性があるため、夏場は車内の整理と安全確認を徹底することが推奨されています。
利用者の「ちょっとした対策」で防げるトラブル
一部のドライバーからは、ETCカードの抜き差しを習慣化するための工夫として、次のような方法が紹介されています:
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運転免許証とセットにしてポーチで管理
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「ETCカード抜き取り」のメモを車内に貼る
これらの方法は、実際に挿し忘れ・抜き忘れを防ぐ上で効果があったとされ、手間を減らしつつ安全性を高める実践例として紹介されています。
「ETCが使えなくなる」主なリスクと対応策
リスク要因 | 具体事例 | 対策 |
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車載器の利用期限切れ | 2007年製の旧型機器が順次使用不可に | メーカーサイトで製造年を確認し、必要に応じて交換 |
ETCカードの盗難 | 挿しっぱなしで盗難に遭った場合、補償外となる例が多い | 降車時には必ずカードを抜き、目立つ場所に機器を設置しない |
高温によるカード劣化 | 夏のダッシュボード温度が57度を超える場合も | 車内に放置せず、ポーチ等で持ち歩く工夫を |
不正通行扱い | カード読み取りエラーでゲートが開かず強行通過する事例 | ETCが反応しない場合は係員呼び出しボタンを活用 |
「挿しっぱなし」で失う“安心感”の代償とは
ETCカードを車載器に挿しっぱなしにする理由は、「面倒だから」「忘れたくないから」といった日常的な習慣からくるものでしょう。しかしその選択が、盗難・機能不全・不正通行扱いといった、想定外のリスクに直結することを認識している利用者は多くありません。
とくに夏場の高温環境では、機器トラブルのリスクが現実のものとして迫ってきます。利便性を重視するあまり、「安心感」のつもりが、実はセキュリティと安全の隙を生んでいたという構造が明らかになっています。
こうした背景からも、「抜くことの手間」よりも「抜かないことの代償」の大きさを再認識し、自身の運転習慣を見直すことが求められています。
▶ ETCカードの取扱いによって起きるリスクの分岐
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ETCカードを車載器に挿しっぱなしにしている場合
├→ 車外から見える → 車上荒らしのリスクが上昇
│ └→ 盗難発生 → 規約により補償対象外となる可能性
├→ 夏の高温環境 → ICチップが変形・読み取りエラー
│ └→ ETCゲートが反応しない → 通過失敗 or 不正通行扱い
└→ 結果:金銭的損失/通行トラブル/機器破損の可能性 -
ETCカードを使用ごとに抜いて保管している場合
└→ 盗難・熱変形のリスクなし → 安全に利用可能
🔹FAQ|ETCカードと夏のリスク
Q1. ETC車載器の「使用期限」はどこで確認できますか?
A. 各メーカーの公式サイトまたは「ETC利用照会サービス」で、製造番号や機種名から確認できます。
Q2. ETCカードの「熱劣化」は本当に起きるのでしょうか?
A. JAFの実験では車内温度が57.8度に達することがあり、ICチップの動作保証温度(45~50度)を超える環境では、読み取りエラーや物理的変形が報告されています。
Q3. ETCカードが盗まれた場合の補償はどうなりますか?
A. 各社のカード規約では「車内放置は重大な過失」とみなされることがあり、補償されない可能性が高くなります。
Q4. 夏場にETCカード以外で注意すべき車内放置物はありますか?
A. モバイルバッテリー、スプレー缶、ペットボトルなどが爆発・火災の原因になることがあります。車内に置かないようにしましょう。
Q5. 毎回カードを抜くのが面倒ですが、対策はありますか?
A. 免許証と一緒にポーチに入れて管理する方法や、車内に「抜き忘れ防止メモ」を貼るといった実践例が挙げられています。
✅ ETC利用停止リスクと夏季の安全対策
見出し | 要点まとめ |
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ETCが突然使えなくなる背景 | 一部の古いETC車載器には使用期限があり、更新されていない場合はゲート通過時に作動しないリスクがある |
カード挿しっぱなしの落とし穴 | 車内にカードを放置すると盗難や補償除外の対象になる可能性があるほか、高温でICチップが変形し使用不能になるケースも報告されている |
夏に注意すべき車内環境 | ETCカードに限らず、モバイルバッテリーやスプレー缶なども高温で破裂・発火の危険があるため、車内放置を避けることが推奨されている |
利用者の工夫と対応策 | ETCカードを免許証と一緒に保管したり、抜き忘れ防止メモを車内に貼ったりすることで、リスク回避と習慣化が図られている |
「たったひと手間」が、安全と信頼を支えている
ETCカードの抜き差しを面倒と感じるのは、誰にとっても自然な心理だろう。しかし、その“たったひと手間”を怠ることで、盗難や読み取り不能、果ては不正通行という大きなトラブルに発展する可能性が現実に存在している。
制度の進化や機器の高性能化に依存するだけでなく、ドライバー自身の「使い方の精度」もまた、安全と信頼を形作る要素のひとつである。挿しっぱなしの習慣を今いちど見直し、日常にひそむリスクを意識的に減らす行動こそが、安心して利用できるETC環境の維持につながっていく。