2025年7月6日、静岡県東伊豆町の熱川バナナワニ園で、鉢植えを交換していた従業員の男性が体長1.2メートルのワニに左手を噛まれる事故が発生しました。軽傷で命に別条はなく、警察は園内ルールの遵守状況や安全管理体制について労災事故として調査を進めています。展示構造と作業動線の設計上の課題も焦点となっています。
展示中のワニが従業員の手に噛みつく
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静岡県東伊豆町の動植物園で、従業員がワニに噛まれる労災事故が発生した。命に別条はなかったものの、作業時の安全管理や園内ルールの実態が問われている。
鉢植え交換中に従業員がワニに噛まれる事故
2025年7月6日午前8時50分ごろ、静岡県東伊豆町奈良本にある「熱川バナナワニ園」で、従業員の男性(45歳)が体長約1.2メートルのワニに左手を噛まれる事故が発生した。園内にいた別の従業員が消防に通報し、現場には救急隊が出動した。噛まれた男性は出血していたが、応急処置を受けた後、軽傷と診断され命に別条はなかった。
事故当時、男性はワニが展示されているゾーンに置かれた鉢植えを交換する作業をしていたという。園内では植物の配置変更が定期的に行われており、その作業の最中にワニと接触するかたちとなった。展示ゾーンでの作業であったことから、警察は現場の構造や作業導線についても確認を進めている。
警察が労災事故として作業ルールの実態を調査
静岡県警はこの事故を労災として受理し、園内で定められていた作業マニュアルや安全ルールが順守されていたかどうかについて調査を開始した。現場の展示ゾーンは来園者の通路とは仕切られていたが、作業員とワニの距離が近く、事故当時の安全策の実効性が問われている。
園の作業記録によれば、植物の配置作業には複数人で対応することが推奨されていたが、当時の作業が単独で行われていたかどうかについては現時点で明らかにされていない。また、過去にも園内で動物との接触による軽微なけがが発生していたとの報告があり、安全対策の見直しを求める声も出ている。
展示構造と作業導線の交錯が事故の要因か
ワニが展示されているエリアと、鉢植えの設置・交換作業が行われるエリアが物理的に近接していた点が、事故の背景として浮上している。園内では美観維持の一環として、来園者から見える位置に観葉植物を設置しており、これがワニの展示ゾーン内にも及んでいた。
本来、展示動物との接触を避けるために物理的な仕切りや誘導策が必要とされていたが、作業時の導線確保や一時的な開放が行われていた可能性がある。こうした展示空間と作業動線の交錯は、構造的な安全対策の不備として改めて点検される必要があるとみられている。
事故の時系列と対応記録
時刻 | 事象内容 | 出典 |
---|---|---|
8:50頃 | 園内従業員がワニに左手を噛まれる | NHK・日テレ・TBS報道一致 |
8:51~8:55 | 同僚が消防に通報、救急搬送開始 | 静岡県警発表・TBS系中継 |
午前9時台 | 病院で応急処置、軽傷と診断 | 医療機関対応、複数報道社 |
午前~午後 | 静岡県警が労災として受理、園内ルールを調査開始 | 静岡県警コメント・NHKニュース |
なぜ鉢植えがワニ展示ゾーンに?設計上の問題点
今回の事故では、「鉢植えの交換作業」という一見すると無害な作業が、危険動物との接触を引き起こす結果となった。ワニの展示ゾーンに植物が置かれていた背景には、「熱帯環境の演出」や「景観の自然化」を意識した展示設計があったとみられる。
しかし、この設計が作業動線と展示空間を物理的に交差させていた場合、展示の演出と安全管理の線引きが曖昧になっていた可能性がある。展示美観と実務作業が同一空間に混在していた構造は、結果的に作業員の危険を高める要因となりうる。
また、作業マニュアル上は「複数人対応」が原則であっても、園内の業務実態としては単独作業が常態化していた可能性もある。設計・運用の両面から、安全確保の仕組みそのものが問われている。
❓ FAQ
Q1. なぜワニに噛まれる事故が起きたのですか?
A1. 展示ゾーン内で鉢植えを交換する作業中に、体長約1.2メートルのワニに左手を噛まれたとされています。作業場所とワニの行動範囲が近接していたことが原因とみられます。
Q2. 被害にあった従業員の容体は?
A2. 出血を伴うけがを負いましたが、軽傷であり、命に別条はないと報道されています。
Q3. 作業は安全ルールに則って行われていたのですか?
A3. 警察が園内ルールの遵守状況を調査中です。作業マニュアルに沿っていたかどうかは、今後の調査で明らかにされます。
Q4. ワニとの間に仕切りなどはなかったのですか?
A4. 展示エリアには仕切りがあったとされますが、作業時の導線や接触可能範囲については、安全設計上の問題があった可能性も指摘されています。
Q5. 今後も展示ゾーンでの作業は続けられるのですか?
A5. 現在、ワニ展示ゾーンは立ち入り禁止措置が取られています。再開には安全対策の見直しと再発防止策の導入が必要とされています。
まとめ
「安全な展示」と「演出美」の狭間にある設計の盲点
動物園や水族館といった展示施設では、来場者に対して非日常的な空間を演出するために、景観の装飾や動物の生息環境の再現が重視される傾向がある。しかし、その空間を日々管理するのは従業員であり、日常の作業と演出空間が物理的に交錯する場合、安全性が軽視されるリスクが生まれる。
今回の事故では、演出の一環として展示ゾーン内に設置された鉢植えが、結果的に作業員とワニの距離を縮める要因となった。装飾植物は「美観」ではあっても、事故時には危険の媒介物に変わりうる。施設設計において「見せる空間」と「触れてはならない領域」を分離する設計思想が徹底されていれば、防げた可能性も否定できない。
事故の本質は、作業の手順やルールではなく、「構造としての安全設計」が十分であったかどうかにある。安全はルールで守るものではなく、構造で確保するものであるという原点が、今こそ再確認されるべき時である。