プールで児童62人がやけど
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猛暑の中で行われた小学校のプール授業中、児童が熱傷を負う事故が発生した。滋賀県守山市立河西小学校では、プールサイドに座っていた児童が次々と皮膚に異常を訴え、62人が病院を受診した。気温は35.9℃に達しており、安全対策の見直しが急がれている。
河西小プール授業事故の概要(2025年7月9日)
児童62人が一斉にやけど 教員の確認で発覚
滋賀県守山市の市立河西小学校で7月9日午前、屋外のプール授業に参加していた6年生の児童62人が、プールサイドに座っていた際に熱傷の症状を訴え、病院で診察を受けた。教員が異変に気づいたのは授業終了後の着替えの時間だった。児童5人が「お尻が赤い」と訴えたことをきっかけに、教員が他の児童についても確認を進めたところ、合計で62人に同様の症状が見つかった。
児童の内訳は男子38人、女子24人で、いずれも命に別状はなく軽傷とされている。受傷箇所は、お尻や太ももの裏で、赤みや水ぶくれが生じたケースもあった。
このプール授業には129人が参加しており、やけどを負った62人は全員が6年生だった。被害の範囲が学年に集中していたことから、当日の授業配置や行動パターンにも注目が集まっている。
気温35.9℃のプールサイド 熱吸収と対策の限界
市教育委員会の発表によると、当日の現地測定による気温は35.9℃で、炎天下の中での授業だった。河西小学校では、暑さ対策としてプールサイドにマットを敷き、散水を行っていたものの、授業中の全時間帯にわたる十分な温度管理は難しかったとみられる。
やけどの直接的な原因は、プールに入る順番を待つ際に、児童がプールサイドに腰を下ろしていたことによるものだった。プールサイドの床材は濃い色をした樹脂系の素材で、直射日光を強く吸収していた可能性がある。水着の薄い生地を通して体温以上の熱が伝わり、結果的に低温やけどのような症状を引き起こしたとされている。
事故を受け、守山市教育委員会は市内すべての小学校に対し、プール授業時に床へ直接座らせないよう指導を徹底するよう通知した。今後は床材の温度計測やマット設置の再検討、散水の頻度見直しなども含めた包括的な対策が求められている。
教員の初動と市教委の通達内容
やけどに気づいたのは、授業後に児童が更衣室で着替えている最中だった。1人の児童が「お尻が痛い」と訴え、さらに4人にも赤みが見られたため、担当教員が他の児童にも確認を実施した。その場で異変が見つかった児童には保健室での応急処置が行われ、必要に応じて病院への同行対応が取られた。
守山市教育委員会は事故当日のうちに緊急通達を発出し、市内すべての小学校に対して「床に直接座らせない指導の徹底」と「プール授業中のマット再点検」を求めた。児童の衣服や水着を通じて熱が伝わる可能性についても、教職員への注意喚起がなされた。
プール授業における安全確認の基本フロー
| 確認ステップ | 内容 |
|---|---|
| 授業前 | ・当日の気温と直射日光の有無を確認 ・床材表面温度を手の甲または温度計で確認 ・マットの設置と散水範囲の再確認 |
| 授業中 | ・児童が待機する位置の安全確認(直立待機推奨) ・定期的な散水と床温チェックを継続 ・熱傷の初期症状(赤み・痛み)を見逃さない |
| 授業後 | ・更衣時の児童からの体調報告の聞き取り ・異常があれば保健室へ誘導・記録 ・複数児童に症状が出た場合は全員確認と保護者連絡 |
| 学校全体での対応 | ・事故報告を教育委員会へ提出 ・他学年・他校への情報共有と注意喚起 |
「気づけなかった」ことの重さと共有の壁
この事故が示したのは、物理的な暑さよりも「目に見えない危険への感度」が問われる教育現場の構造である。気温や暑さの情報は周知されていたものの、「床材が何度になっていたか」「児童の皮膚が何分間、接触していたか」は共有されていなかった。安全対策の“実施”と“実効”の間にあるズレは、学校単位で完結していた情報共有の構造的な限界を浮かび上がらせている。
児童のやけど発見から通達までの流れ
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プール授業中:6年生児童が順番待ちでプールサイドに座る
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授業後の着替え中:児童の訴えと皮膚の異常を教員が確認
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保健室対応:赤みのある児童を応急処置し、全員を調査
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医療機関へ:必要な児童を病院に搬送、保護者へ連絡
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学校報告:校長が教育委員会に事故を報告
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市教委通達:市内全校へ指導徹底と再発防止策を通知
「真夏の授業」と教育現場の温度認識
2025年の夏もまた、気温35℃を超える日が常態化している。しかし、教育現場ではその温度が“どこに”“どのように”影響を与えるかを測る仕組みは未整備のままだ。校庭や体育館、そして今回のようなプールサイドは「暑い場所」として漠然と認識されていたが、素材による温度上昇や体感温度とのズレまでを把握する意識は、十分に根付いていなかった。
学校側は、散水やマット設置などの対策を講じていたとされるが、それが「表面温度40℃以上」になる素材に対して有効だったのか、検証の余地は大きい。児童は「暑さに我慢して座る」ことを当然と受け入れてしまう構造の中で、教員が異変に気づくには遅すぎた。
この事故を、単なる「夏の一過性の出来事」と片づけず、プール授業そのものの設計を再構築する契機とすることが、教育現場に求められている。
❓ FAQ
Q1:児童たちはどのような状況でやけどを負ったのですか?
A1:プールに入る順番を待っていた児童が、炎天下のプールサイドに座っていたことで、皮膚が熱された床材に触れて熱傷を負いました。
Q2:やけどの程度はどのくらいでしたか?
A2:全員軽傷と診断されており、命に別状はありません。中には赤みや水ぶくれが生じた児童もいました。
Q3:なぜ気温が高いとわかっていながら授業を実施したのですか?
A3:授業前に散水やマットの設置など暑さ対策はされていましたが、床材の表面温度への十分な検証は行われていなかったとされています。
Q4:学校や市教委はどのような対応をとりましたか?
A4:教員が異変に気づき、全児童を確認したうえで病院受診を行い、市教育委員会も当日に再発防止策を通知しました。
Q5:今後同様の事故を防ぐために何が見直されるのですか?
A5:床材の温度確認方法、散水の頻度、待機時の姿勢指導、プール授業中の全体的な安全管理が見直されています。
総合要約表
| 要約項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生概要 | 守山市立河西小のプール授業中、6年生62人が軽いやけどを負った |
| 発見経緯 | 授業後の着替え中に教員が児童の赤みに気づき確認 |
| 主因分析 | プールサイドの床が高温になり、座っていた児童の皮膚に影響 |
| 気象条件 | 当時の気温は35.9℃、炎天下での屋外授業だった |
| 対応策 | 市教委が全校に対策通知、床材や温度確認の再徹底を指示 |
