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病院倒産が5年連続増加 中堅施設に広がる危機

2025年上半期、医療機関の倒産が21件に達し、5年連続で前年を上回った。特に病床数20床以上の中堅病院で倒産が急増し、従業員300人超の大型倒産も発生。コロナ融資の返済開始、人件費や光熱費の高騰、診療報酬の伸び悩みなどが経営を圧迫し、地方を中心に医療空白のリスクが深刻化している。地域医療を支える中核病院の経営破綻が意味するものとは──。

 

病院倒産5年連続増加

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2025年上半期、医療機関の経営環境に深刻な変化が表れた。病院・クリニックの倒産件数は21件に達し、5年連続で前年同期を上回った。中でも、病床数20床以上の病院倒産は急増しており、地域医療を支えてきた中堅施設にまで経営破綻の波が及んでいる。

項目 内容
倒産件数(上半期) 21件(前年比+16.6%)
病床20床以上の病院倒産 8件(前年比2.6倍)
主な倒産要因 販売不振・人件費高騰・ゼロゼロ融資返済
特徴的傾向 中堅規模(従業員50〜300人)の病院が中心/再建型ゼロ
背景要因 医師・看護師不足、物価高、診療報酬の実質目減り

病院倒産の増加と医療機関への影響

2025年1〜6月にかけて発生した医療機関の倒産件数は21件となり、前年同期(18件)から3件増加した。これは5年連続で前年を上回る水準であり、2009年の26件に次ぐ過去2番目の高水準にあたる。倒産の内訳は、病院が8件、クリニックが13件となっており、クリニックはむしろ前年より減少していたのに対し、病床数20床以上の病院倒産は急増していた。

特に注目されるのは、中堅病院の倒産増である。従業員数50人以上300人未満の病院倒産は6件から8件に、300人以上の大型病院の倒産も前年ゼロから2件に増加していた。病院経営に必要な人件費や維持費の比重が高まるなか、特に地方圏では収益を支える入院患者や医療人材の確保が困難となり、採算性が著しく低下していた。

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倒産要因として浮かぶコスト高と制度の限界

今回の倒産増加には、複数の重層的な要因が絡んでいた。最大の要因は、コロナ禍で実施されたゼロゼロ融資(独立行政法人福祉医療機構:WAM)の返済が2025年に集中したことである。この返済負担が本格化する一方、診療報酬の見直しは物価高騰に追いついておらず、実質的な収益は目減りしていた。

さらに、人件費の上昇や人材不足、入院患者の食費・備品・光熱費の上昇などが重なり、施設維持コストが急増していた。特に、院長や理事長の高齢化が進んだ病院では、事業承継が進まず、持続可能な経営体制の構築が難しい状況が見られた。


倒産件数と負債規模の推移整理(2019〜2025年上半期)

年度(上半期) 倒産件数 病院倒産数(20床以上) 負債10億円以上 備考
2019年 17件 データなし データなし コロナ前の水準
2020年 9件 非常に少数 0件 コロナ支援により抑制
2021年 12件 微増 1件 徐々に増加へ
2022年 15件 3件 2件 負債額も増加傾向
2023年 18件 4件 3件 人手不足・物価高が影響
2024年 18件 3件 1件 比較的安定的だが一部に大型倒産
2025年 21件 8件 5件 中堅・大型病院倒産が目立つ

地域医療の空洞化と再生支援の欠如

上半期に倒産した21件のすべてが「破産型」であり、再建型の民事再生などによる救済措置は一件も確認されなかった。これは、医療機関に対して再建の選択肢がほとんど残されていないことを意味している。

また、今回の倒産の多くは、地域医療を担う病院が中心であった。地方では人口減に伴って医療需要が減少し、人材流出と収益悪化が同時進行するという悪循環が生まれていた。医療機関の閉鎖によって、住民が近隣の診療機関を利用できなくなる「医療空白地帯」が広がるリスクも現実味を帯びている。


中堅病院が抱える構造的リスクと事業継承の壁

2025年上半期に倒産した中堅規模の病院には、共通するリスク要因がいくつか見られた。第一に、経営者である理事長・院長の高齢化が進行し、後継者不在のまま経営継続が困難となるケースが複数発生していた。後継候補が見つからず、譲渡やM&Aもまとまらなかった病院では、施設の老朽化や人材確保難が表面化し、閉鎖へと追い込まれていた。

また、医療設備の更新が滞ったまま診療を継続していた施設では、機器の不具合や診療体制の非効率性が慢性化しており、採算性が確保できなかったことも報告されている。現場の看護職員や事務職員の離職も多く、内部からの改善が困難な体制となっていた。


医療機関の地域的支柱としての機能と損失

病院の倒産が意味するのは、単なる施設の閉鎖ではなく、地域住民が頼っていた医療アクセスの喪失である。今回の事例では、救急外来や夜間対応、透析や入院機能を持つ病院が複数閉鎖され、周辺住民が数十km離れた医療機関に移動を強いられる状況も生まれていた。

とくに、高齢者や移動が困難な患者にとって、医療機関の撤退は生活基盤の崩壊にも等しい打撃となる。病院の機能は、医療サービスにとどまらず、雇用の受け皿、災害時の避難支援、学校や福祉施設との連携など、多層的な役割を担ってきた。その喪失は、地域全体の社会的インフラの弱体化へと直結していた。


倒産までの経過と経営悪化要因の流れ

ゼロゼロ融資返済開始
   ↓
物価高騰・人件費増
   ↓
診療報酬の伸び悩み
   ↓
固定費の圧迫(光熱費・食材費)
   ↓
医療職の確保難・設備更新不能
   ↓
採算悪化・赤字継続
   ↓
譲渡・再建困難
   ↓
破産申請・閉鎖

❓FAQ:よくある5つの疑問

Q1. なぜ中堅病院の倒産が目立つのですか?
A. 病床規模が大きく人件費・設備維持費の負担が重い一方、診療報酬ではカバーしきれず、ゼロゼロ融資の返済も加わって収支が悪化したためです。

Q2. 再建型の倒産がゼロだったのはなぜですか?
A. 医療業界では再建の担い手やスポンサー企業が少なく、地域制約が多いため民事再生などの再建選択が取りにくい状況が続いています。

Q3. ゼロゼロ融資とは何ですか?
A. コロナ禍で導入された、利子・保証料ゼロで借りられる制度(主に福祉医療機構WAM)で、2025年前後に返済開始を迎えています。

Q4. 今後も病院倒産は増えるのでしょうか?
A. 支援制度の延長や新たな対策がない場合、地方を中心に同様の倒産がさらに拡大する可能性があります。

Q5. クリニックは倒産していないのですか?
A. クリニックの倒産は前年より減少しましたが、全体で13件あり、小規模ゆえの経営安定性が必ずしも保証されているわけではありません。


総合要約表:倒産データから読み取れる全体の傾向

観点 内容
倒産件数 上半期21件(前年比+16.6%)で5年連続増
病床規模 20床以上の病院が8件と急増(前年比2.6倍)
従業員数 300人以上の病院倒産も発生/中堅病院が最多
負債規模 10億円以上の倒産が5件で大型化の傾向
地域影響 地域医療の中核施設が複数閉鎖/空白地帯化の懸念
倒産形態 全件が破産/再建型ゼロ

医療インフラとしての限界が示された倒産動向

今回の病院・クリニックの倒産増加は、単なる経営判断の結果ではなく、日本の医療制度が抱える構造的な限界を浮き彫りにした事例だった。診療報酬という制度収入に依存する仕組みでは、急激な物価上昇や人件費の上昇、人口減による需要低下に対応しきれない脆さが露呈していた。

特に中堅以上の病院は、地域社会の中核として医療と雇用の両面を支える存在でありながら、十分な公的支援や柔軟な再建スキームが確立されていない。その結果として、医療提供体制そのものが倒産によって崩れるという事態が現実化していた。

この現象は、医療という公共財が「市場原理」と「制度の枠内」に閉じ込められたことによる構造的な破綻とも言える。制度の再設計を伴わない限り、地方を中心に同様の倒産が繰り返される可能性は否定できない。

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