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バリ島の観光地が狂犬病の警戒区域に指定される

2025年7月、インドネシア・バリ島の主要観光地が狂犬病の「レッドゾーン」に指定されました。感染源となる犬の陽性確認が相次ぎ、観光客の多いエリアで緊急のワクチン接種と注意喚起が行われています。発症後の致死率がほぼ100%とされるこの感染症を前に、旅行者にも事前の対策と即時の対応が求められています。

 

狂犬病警戒区域

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新婚旅行先としても人気の高いインドネシア・バリ島で、狂犬病の感染拡大を受けて主要観光地が「レッドゾーン」に指定された。発症後の致死率がほぼ100%とされるこの感染症に対し、現地保健当局は緊急のワクチン接種や動物管理の強化を進めている。南部エリアを中心に感染陽性の報告が相次いでおり、旅行者に対しても野良犬や猿との接触を避けるよう強く注意が呼びかけられている。

項目 内容
いつ 2025年1月〜7月/レッドゾーン指定は7月上旬
どこで インドネシア・バリ島(クタ、ジンバラン、ヌサドゥア等)
誰が バリ州保健当局/動物保健局
何が起きた 犬の狂犬病陽性確認とレッドゾーン指定、感染死亡例6件
なぜ 感染個体の確認・低接種率・観光客への拡散懸念
どうした 大規模なワクチン接種と観光客向け警告発表

観光地で拡大する狂犬病とレッドゾーン指定

バリ州の保健当局は、2025年7月上旬、南部バドゥン県の複数観光地域を「狂犬病レッドゾーン」に指定した。対象となったのは空港やホテルが集中するクタ地区ジンバラン、ヌサドゥア、タンジュン・ブノアなどで、いずれも新婚旅行や長期滞在者が多く訪れるエリアである。

現地のガイドラインによると、犬1匹でも狂犬病陽性が確認された場合、その村全体がレッドゾーンに分類される。保健当局は「咬傷事例が1村あたり1~2件であっても、感染拡大の可能性がある以上、即時対応が求められる」と強調している。

2025年1月から3月までに記録された動物咬傷件数は8801件に達し、6人の死亡が報告された。この状況を受け、各エリアでの予防接種や野犬管理、殺処分などの対応が進められている。


発表文に記された対応方針

バドゥン県動物保健局は、今回のレッドゾーン指定に伴い、地域ごとに緊急対応を開始したと発表した。特に重点措置がとられているのは以下の3点である。

  1. ワクチンの集中的接種:観光客と接触機会の多い海辺や市街地で、飼い犬・野良犬に対する即時接種を実施。

  2. 犬の放し飼いの禁止通知:飼い主に対して、登録・係留・定期検診の義務を周知。

  3. 保健所との連携対応:咬傷事例が確認された際、速やかな暴露後予防(PEP)を提供する態勢を整備。

同局長は「人への被害数ではなく、感染拡大の可能性に基づく即応が必要」として、被害の見過ごしよりも封じ込めを優先する方針を示している。


ワクチン接種率の低さと制度の課題

狂犬病の拡散を防ぐうえで鍵となるワクチン接種率だが、現地の実情は深刻だ。2025年2月時点で、デンパサール市内に登録されている犬7万4000匹のうち、接種済みはわずか2266匹(接種率2.75%)にとどまっている。

バリ島では2008年から毎年ワクチン接種キャンペーンが実施されてきたが、登録制度の未整備と飼い主意識のばらつきにより、接種率が安定的に確保されてこなかった背景がある。

さらに、観光客の多くが渡航前にワクチンを接種していないことも、制度面での「盲点」となっている。日本の検疫所FORTHでは狂犬病ワクチンは任意接種の「推奨ワクチン」扱いにとどまり、旅行会社や航空会社による説明も義務ではない。結果として、“予防しないままリスク地域に入る”構図が制度的に放置されているといえる。

予防接種キャンペーンの現状と接種率の乖離

バリ保健当局は狂犬病の封じ込めを目的に、7月上旬からレッドゾーン指定地域で大規模な犬へのワクチン接種キャンペーンを開始した。とくに対象となっているのは、外国人観光客の滞在・往来が多いエリアに限定されている。

しかし、接種活動の対象が観光エリアに偏っていることや、野良犬の移動・増加に対する制御力の不足などから、地域ごとの感染リスクの差が埋まっていない状況が明らかになっている。

接種率の改善が限定的な一方で、犬にかまれた後に発症し、病院を受診できず死亡した事例も報告されており、行政と住民の連携を問う声が保健所に寄せられているという。

 

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新婚旅行者と感染リスクへの気づき

日本からの渡航者の多くが「狂犬病の存在を知らなかった」と語る背景には、旅行手配時における感染症リスクへの案内不足がある。特に新婚旅行など観光目的の短期渡航者は、「動物に近づかなければ大丈夫」といった誤認識のままレッドゾーンへ滞在している実態が浮かび上がっている。

また、寺院や観光地で見かける猿や犬に「親しみを感じてしまう」心理的傾向も、リスク回避の意識を鈍らせている要因となっている。旅行者にとって最も重要なのは、**「かまれた瞬間に対応を始める意識」**であることが、今回の事例からも示唆されている。


狂犬病感染と発症まで

  発生事象 必要な対応 備考
野良犬・猿などによる咬傷 直後に傷口を流水で洗浄・消毒 石鹸を使用し最低15分間洗浄
最寄りの医療機関を受診 PEPワクチンを数回接種(0日目、3日目等) 免疫グロブリンが入手できる病院を推奨
潜伏期間(通常1〜3ヶ月) 体調観察とワクチンスケジュールの遵守 個人差あり。発症すると治療困難
発症 頭痛、発熱、麻痺、幻覚、昏睡状態など 発症後の致死率は99%以上

よくある5つの疑問と旅行者の対応策

Q1. 狂犬病は本当に「発症したら治らない」のですか?

A. はい。発症後の致死率はほぼ100%で、現在までに治癒例は非常に稀です。だからこそ、かまれた直後の対応(暴露後予防:PEP)が唯一の予防策となります。

Q2. 渡航前に日本でワクチンは受けられますか?

A. 受けられます。ただし一般の内科や皮膚科では扱っていないことが多いため、「海外渡航外来」や「トラベルクリニック」の受診が必要です。

Q3. 野良犬を避けていれば安全ですか?

A. 完全ではありません。バリ島では寺院内やビーチにも犬・猿が出没します。また飼い犬であっても接種歴が不明な場合があります。

Q4. かまれたらどうすればよいですか?

A. 直ちに流水で洗い、消毒し、最寄りの医療機関でPEP(暴露後予防)を受けてください。現地でPEPが入手困難な場合は、滞在を中断してでも日本帰国を検討すべきです。

Q5. 海外旅行保険で費用はカバーされますか?

A. 多くの保険ではPEPの治療費も補償対象となっています。ただし、現地医療機関での費用立替が必要になることが多いため、事前確認をおすすめします。


全体の要点

項目 内容
対象地域 インドネシア・バリ島(クタ、ヌサドゥア、ジンバラン)
指定内容 狂犬病レッドゾーン(7月上旬以降)
主な理由 感染犬の確認・咬傷事例・接種率の低さ
感染数・死者数 咬傷8801件/死亡6人(2025年1〜3月)
対応措置 ワクチン接種、消毒、観光客への注意喚起
日本側の状況 狂犬病ワクチンは任意扱い/案内は限定的

制度対応の遅れと旅行者への情報格差

今回のバリ島レッドゾーン指定は、感染症の致死性よりも「接種率の低さ」や「封じ込め不全」の制度的問題を顕在化させた事例といえる。現地当局は「件数より拡散可能性」を重視し、即応的な措置を公表したが、一方で旅行者側の認識や日本出国時の対策情報がほとんど届いていないという乖離も明らかになった。

旅行先が楽園であるほど、リスクは遠くに感じられる。しかし、“知っていれば防げた”感染症の多くは、知らなかったことによって命取りとなる。それを突きつけられる事例が、今回のレッドゾーン化である。