
サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手が、2025年7月30日のメッツ戦で7回2安打無失点・7奪三振と好投し、今季初勝利を挙げた。この勝利で日米通算204勝に到達し、黒田博樹氏の203勝を超えて日本人投手としての最多勝利記録を更新した。右肘故障からの復帰後、緩急を駆使した配球スタイルにより、再びローテの柱としての存在感を取り戻している。
ダルビッシュ有、日米通算204勝
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サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有投手が、日本時間7月31日に行われたメッツ戦で7回無失点の快投を披露し、今季初勝利を挙げた。この白星により、日米通算204勝を達成。NPBとMLBの両舞台で積み重ねた勝利数としては、日本人最多記録となる。
ダルビッシュ有の204勝到達と復調登板
NPBとMLBを通じた通算勝利数で、日本人投手の歴代最多記録が塗り替えられた。パドレスのダルビッシュ有投手は、7月30日(日本時間31日)のメッツ戦に先発し、7回を2安打無失点、7奪三振という内容で、今季初勝利を挙げた。
初回は打者3人を無難に抑え、続く2回には115キロ台の緩いカーブを連続で投じ、アルバレスとマウリシオから空振り三振を奪取。速球と緩急を交えた配球が冴え、復帰登板を重ねてきた7月の中でも特に完成度の高い内容となった。
3回には味方マチャドの2点タイムリー直後に、クロネンワースが右前小フライをダイビングキャッチする好守を見せ、ベンチのダルビッシュは驚きのジェスチャーで称えた。
5回までに許した被安打は2本、四球はゼロ。6回・7回はいずれも三者凡退で締め、球数93球でハイクオリティースタート(7回以上、自責点2以内)を記録してマウンドを降りた。
黒田博樹氏の記録を抜いて単独1位に
この勝利によって、ダルビッシュは日米通算204勝に到達した。内訳は、NPB(日本ハム)時代の93勝、MLBでの111勝である。黒田博樹氏の通算203勝(NPB124+MLB79)を抜き、単独での最多記録となった。
節目の204勝目は、前回の通算203勝達成(2023年9月27日)から実に307日ぶり。右肘の炎症によって開幕を負傷者リスト(IL)で迎えた今季、7月にようやく復帰し、4登板目でつかんだ勝利だった。
歴代日本人メジャー投手の通算勝利数一覧
※いずれも2025年7月31日時点の公式記録に基づく。
故障明けの投球術とメッツ打線封じ
肘の故障から復帰して以降、ダルビッシュの直球の平均球速は150km/h前後にとどまっていた。この日の試合でも直球最速は153km/hに届かず、かつてのような球威は影を潜めた。
しかし、代わりに存在感を放ったのが70マイル台のカーブである。メッツの主砲ソトを自打球欠場で欠いたとはいえ、スローカーブを要所で織り交ぜ、打者のタイミングを巧みに外して7三振を奪った。特にアルバレスとマウリシオを連続で空振り三振に仕留めた場面は、配球術の妙が光った。
味方の好守備や援護もあり、ダルビッシュは投球内容と結果の両面で“完全復調”を印象付ける結果を残した。次回登板でも7回以上を投げきれれば、後半戦に向けてエース格としての信頼をさらに高めることができそうだ。
直球回復遅れを補う緩急配球の妙
ダルビッシュ投手は、復帰後も依然として直球の球威に完全な復活は見られていない。全盛期には平均155km/hを超えていたフォーシームは、このメッツ戦では平均150km/h台にとどまり、決め球としての迫力はやや抑えられていた。
しかし、今季の彼を支えるのは速球頼みの投球スタイルではない。投球全体に占める変化球の割合が6割を超え、特に70マイル台の緩いカーブはこの日も有効だった。2回の連続三振、4回以降の上位打線封じなど、勝負所で変化球が効いていたことが、球速回復前の内容重視型投球へと変貌している証左となった。
ベテラン投手の戦略的変化に見る再構築力
30代後半に入り、球威だけで押し切る投球が難しくなった今、ダルビッシュが選んだのは“再構築”の道だった。フォーム改良、配球見直し、変化球の比率最適化など、自身の武器を再定義する中で、チームにとって最適な投球内容を模索し続けている。
特に注目すべきは、スピードではなく“緩急差”そのものが空振りを生む設計に変わった点である。若手の育成を意識するパドレスにおいても、その投球術は生きた教材になっており、単なる記録更新だけにとどまらない価値が読み取れる。
7回無失点に至る登板内容の流れ
FAQ|よくある5つの疑問
Q1. なぜ今季初勝利までに時間がかかったのか?
A. 開幕前に右肘の炎症でIL(負傷者リスト)入りしていたため、今季初登板が7月にずれ込んだことが影響している。
Q2. 直球の球速は完全に戻っている?
A. この登板では最速153km/hで、かつての155km/h台には及ばない。ただし配球の工夫で内容は高水準を保っている。
Q3. 日本人投手で204勝は歴代最多なのか?
A. はい。NPBとMLBの合算で204勝は、黒田博樹氏の203勝を超える日本人最多記録である。
Q4. 通算3000奪三振は射程圏か?
A. 現時点で2820奪三振前後とされ、今季後半と来季序盤での到達が期待されている。
Q5. この試合の勝利でパドレスはどう変わる?
A. 先発陣の安定化が進み、トレード期限前の戦力補強方針に影響を与える可能性がある。
204勝達成の要因と今後の展望
多勝時代から“支配型”へ:204勝が意味する変遷
かつて日本人メジャー投手の“成功”とは、先発ローテに定着し10勝を重ねる姿にあった。しかしダルビッシュの204勝は、それを超える軌跡を物語っている。
復帰後の登板で速球が衰え始めた今、彼は“配球の支配力”で試合を掌握し始めた。目を引く三振だけではない。四球の減少、ゴロアウトの誘発、守備との連携によるリスク管理。それはもはや、従来の「奪三振型」とは異なる、新たな支配型エースの在り方といえる。
204という数字は、勝利数の蓄積以上に、「どのように勝ち続けたか」の証明である。