
大阪・関西万博は来場2500万人を突破。会場内の韓国料理店「景福宮」を巡る報道が注目を集めている。元従業員の証言と納品書、運営側の説明、有機表示の制度をもとに“食の信頼”を検証する。
万博会場内の韓国料理店
報道の真相とは
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大阪・関西万博は会期終盤を迎え、万博協会は2025年9月27日に来場者が2500万人を超えたと発表した。世界各国から人が集まるこの国際イベントのなかで、会場内の韓国料理店「景福宮(運営:有限会社KORAIDOU)」をめぐる報道が注目を集めている。
この店舗は、2024年10月に公表された公式出店リストで会場内飲食施設として掲載された店のひとつである。メニューでは「オーガニック食材を使った韓国料理」をうたい、家族連れを中心に人気を得てきた。だが、2025年10月に週刊誌が元従業員の証言を報じたことで、その看板の信頼性を問う声が広がった。
記事によると、店で食材の仕入れを担当していた元従業員A氏が、オーガニック食材を一般食材に切り替えた経緯を明かし、証拠として6月30日付の納品書を提示したという。加えて、不法就労の疑いにも触れている。
また、8月に別の報道機関が調理済みのチャプチェに異臭があったとの指摘を掲載し、運営会社が衛生上の問題を否定するコメントを寄せた。これら複数の報道を受け、店舗運営の実態と制度上の表示ルールに改めて関心が向けられている。
大阪・関西万博と「景福宮」報道の主要ポイント
出店の事実と報道が示した内部証言
万博公式資料によると、「景福宮」は2024年10月時点で公式の出店リストに掲載されていた。韓国料理を中心とした多国籍エリアの飲食店舗のひとつで、万博期間中は連日長い行列ができる人気店として紹介されてきた。
2025年10月、週刊誌が同店で勤務していたという男性A氏の証言を掲載した。A氏は、4月に入社し食材の仕入れを担当していたと述べ、6月以降は有機野菜や調味料などの仕入れが中止されたと主張した。物流の都合とコスト削減を理由に、卵、人参、玉ねぎ、ごま油などが一般の食材に置き換えられたという。
証拠として示された納品書には「かどやのごま油1650g×18個」などの記載があり、日付は2025年6月30日だった。A氏はさらに「バックヤードには『中国産』と表示された段ボールが置かれていた」と証言した。
一方、店舗を運営する有限会社KORAIDOUは、衛生上の問題や不法就労の指摘について否定的な立場を示したとされる。別媒体による8月の報道では、同店のチャプチェに異臭がしたとの指摘があったが、運営会社は「異常な臭いは確認されていない」と説明している。
これらの内容はいずれも報道段階の情報であり、現時点では公式機関からの詳細な調査結果は示されていない。ただし、消費者や来場者が実際の提供内容とメニュー表記の整合を確認する必要があることは明らかだ。
運営会社が示した対応と確認項目
元従業員の証言で注目を集めた納品書は、日付や品目が具体的に記されており、仕入れの変更があったかを判断する重要な資料とされている。運営会社は物流の遅れやコスト調整を理由に一部の食材を変更したと説明したが、提供される料理に対して「オーガニック」と表記する場合、根拠となる証憑が求められる。
消費者が確認すべき要点は三つある。
一つ目は、メニューや店内掲示の文言と、実際に使用されている食材が一致しているか。
二つ目は、納品書や発注記録などが仕入れ業者の証明と整合しているか。
三つ目は、労務管理や従業員の在留資格に関する社内確認の有無である。
これらの項目は行政による調査だけでなく、店舗自身が公開する説明資料によっても信頼性が左右される。
報道内容と確認すべき実務項目
| 区分 | 報道で提示された内容 | 確認・検証すべき点 |
|---|---|---|
| 食材の切り替え | オーガニックから一般食材への変更(納品書に一般品の記載) | 納品書の発注元と商品の実物照合、在庫記録の確認 |
| 表示と提供の整合 | メニューに「有機卵」「有機玉ねぎ」などの表記 | 提供時の食材ラベルや包装記録の確認 |
| 衛生面の指摘 | チャプチェに酸味があったとの従業員証言 | 保健所の検査報告・厨房管理記録 |
| 労務管理 | 外国人従業員の就労資格をめぐる指摘 | 雇用契約書・在留資格確認記録の整備 |
| 会社の説明 | 物流・コストを理由に一般食材へ変更と説明 | 変更時期や理由を明示した社内文書の公開 |
有機表示と制度が示す信頼の条件
有機食材やオーガニック表示は、消費者が安全性と品質を判断する基準のひとつとなっている。
日本では農林水産省が定める「有機JAS制度」により、表示を行うための条件が明確に定められている。農産物・加工食品ともに、化学合成農薬や化学肥料を原則として使わずに生産され、第三者の認証を受けたもののみが「有機」や「オーガニック」と名乗ることができる。
飲食店で「有機料理」を提供する場合も、原材料の仕入れ先や加工過程が認証品であることが求められる。仕入れ記録や納品書、包装表示などが根拠として提示できなければ、消費者が誤認する可能性がある。
このため、万博会場のように多くの来場者が訪れる場では、メニュー表や店舗内の表示と実際の仕入れ内容を定期的に確認し、差異があれば即時訂正する体制が必要になる。
今回の報道で指摘された「表示と実際の食材の不一致」は、制度の運用面での課題を浮き彫りにした。行政による調査が入るかどうかにかかわらず、店舗自身が自主的に確認・説明を行うことが、信頼回復の第一歩になる。
報道後の変化と店舗運営への影響
報道が出た直後から、SNSやニュースサイトでは「オーガニック表示の信頼性」に関する議論が広がった。来場者の多くは、食材の安全や産地に関心を寄せ、店舗前には一時的に「確認中」の掲示が出されたと伝えられている。
運営会社は、一部のメニュー表記を差し替え、供給体制の見直しを進めているとされる。仕入れ先の変更や在庫管理の改善を図ることで、再び有機食材の安定供給を目指しているという。
一方で、労務管理の面でも体制の整備が求められている。外国籍従業員の雇用に関しては、在留資格や勤務契約の確認を徹底する動きが始まり、会場全体での労務点検も進められている。
報道がもたらした影響は、単なる一店舗の問題にとどまらず、イベント運営全体の信頼管理にまで及んでいる。
消費者が確認できる行動の手順
万博会場のような大規模イベントでは、来場者自身が安全確認の一助となる行動をとることができる。
食事を取る際には、メニューや店頭の表示をよく見て、気になる点があればスタッフに原産地や仕入れ元を尋ねる。購入した際のレシートやパッケージ写真を記録しておくことも有効だ。
また、保健所や主催者の問い合わせ窓口に意見を寄せる際は、日時・店舗名・内容を具体的に示すことで、後の調査が正確に行われる。
食の安全は提供側だけでなく、受け取る側の関心によっても守られるという意識が必要である。
報道後の検証手順の流れ
報道を確認(記事内容・発表日・証拠資料を整理)
↓
店舗のメニュー表・納品書・仕入れ記録を照合
↓
食材の産地・銘柄を確認し、供給業者に問い合わせ
↓
表示内容と仕入れ実績の差異を明確化
↓
社内会議や監査部門が改善計画を策定
↓
行政機関(保健所・労働局等)へ報告・立入確認を実施
↓
調査結果を公表し、再発防止策を提示
↓
信頼回復措置(再認証・情報公開)を実施
❓FAQ|よくある5つの質問
Q1. 「オーガニック表示」の根拠は何ですか?
A. 農林水産省が定める有機JAS制度で、第三者認証を受けた食材のみが「有機」「オーガニック」と表示できます。
Q2. 店舗がメニューを変更した理由は明らかですか?
A. 報道では物流やコストの都合による仕入れ変更と説明されていますが、詳細な経緯は今後の調査に委ねられています。
Q3. 消費者はどう確認すればよいですか?
A. メニューや店頭掲示の表示を確認し、疑問があれば原材料の情報を尋ね、記録を残しておくことが大切です。
Q4. 労務管理上の問題も報じられていますが?
A. 外国籍従業員の就労資格に関する指摘があり、運営側は確認を進めているとされています。
Q5. 今後の対応で注目すべき点は?
A. 公式な検証結果と再発防止策の内容、そして食材表示の透明性の確保が信頼回復の鍵となります。
総合要約表|報道内容と今後の確認ポイント
国際イベントが突きつけた「表示の重み」
万博という世界的な舞台で起きた今回の一連の報道は、食の信頼を支える表示制度の重要性を改めて浮き彫りにした。
「オーガニック」や「有機」という言葉は、単なる商品説明ではなく、消費者と生産者の間にある約束のようなものである。
その言葉が正確に使われなければ、信頼の連鎖は容易に崩れる。
今後、店舗側には、表示と実態を一致させるための継続的な確認と情報公開が求められる。
同時に、運営や行政も含め、イベント全体として透明性を担保する仕組みを築くことが必要だ。
一つの店舗の報道が、食の安全と表示のあり方を見直す契機となるなら、その検証は社会にとって意味のある一歩となるだろう。