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「走れないポルシェ」東京地裁が契約取消しを認めた理由!1,300万円超の返還命令が映す中古車取引の落とし穴

2025年9月の東京地裁判決。キャタライザー未装着の中古ポルシェ911に「公道を走れない契約」として錯誤を認定し、約1,300万円の返還を命じた。装置と信頼、両方の欠落が生んだ裁判の教訓を解説。

「走れないポルシェ」東京地裁が契約取消し

 

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納車の日、期待に胸をふくらませていた男性の前で、担当者の口から出たのは思いがけない一言だった。
「この車にはキャタライザーが付いていません」。
日本の公道を走るために欠かせない排ガス浄化装置がない――。2025年9月、東京地裁はこの中古ポルシェ911をめぐる裁判で、契約を取り消すことができると判断し、購入代金およそ1,300万円の返還を販売会社に命じた。高級車市場の裏側を映し出した判決は、車を買う側にも売る側にも重い教訓を残した。


契約と装置をめぐる“走れないポルシェ”の裁判

項目 内容
判決の時期 2025年9月、東京地方裁判所が契約の取消しを認めた
争点となった装置 排気ガスを浄化するキャタライザーが未装着、ECUに分解の形跡
契約と金額 中古ポルシェ911を約1,355万円で購入、返還命令は1,344万4,000円
法的判断 「走行を前提とした契約」と認定し、重要な事実の不告知による錯誤と判断
背景 販売時に不備を把握していながら説明がなかったことが判決で明らかになった

「キャタライザーが付いていません」から始まった誤算

男性が購入したのは、インターネット上で「正規ディーラー取扱車」と紹介されていた中古のポルシェ911だった。問い合わせに応じた販売会社の担当者は「1350万円ほどでお乗り出しいただけます」と説明し、男性は横浜市の整備工場で実車を確認。見積書を受け取り、3日後に試乗した。販売価格には登録手続きや納車整備も含まれていた。

ところが納車の日、担当者が伝えたのは「キャタライザーが付いていません」「ECUにも分解の形跡があります」という言葉だった。キャタライザーは排気ガス中の有害物質を除去する装置であり、これがない車は車検に通らない。男性は「車検時に装着すれば通る」との説明を受けたが、契約前には一度も聞いていなかった。

驚いた男性はすぐに担当者にメールで「違法状態で購入したことになる。正しく装着してほしい」と訴えたが、車はそのまま引き渡された。販売会社はキャタライザーが外された状態を把握して仕入れていたものの、その不備を販売ページなどで告知していなかった。


地裁が示した「錯誤」の判断と返還命令

裁判では、男性が「契約前に重要な事実を知らされなかった」と主張。販売会社は「説明した」と反論したが、営業日報や注文書にその記録はなかった。判決で東京地裁は、男性が「公道を走るために車を購入した」と認めたうえで、「キャタライザーが付いていないことは契約の前提を覆す重大な事実」として錯誤を認定。

その結果、販売会社に対して、車の引き渡しと引き換えに1,344万4,000円を返還するよう命じた。不法行為に基づく損害賠償の主張については、引き取りを求めた事実が認められないとして退けられた。判決は、商品の重要部分について説明がないまま契約した場合に、取引そのものが無効となることを明確に示したといえる。


制度上の義務と今回の判決で示された現実

観点 保安基準・制度 本件で確認された事実
排出ガス浄化装置 自動車は排ガス発散防止装置を備えなければ公道走行できない。不正改造は禁止。 納車時にキャタライザー未装着が判明。車検を通らない状態だった。
契約上の説明 販売時に重要な装置の有無は説明義務がある。 契約前に説明がなかったと地裁が認定。
法的評価 重要な事実を知らされず契約した場合、錯誤として取り消し可能。 東京地裁が錯誤を認定し、返還命令を出した。

購入時に注意したい3つの確認ポイント

  1. 装置・改造歴の確認
     整備記録や改造の有無を文書で確認する。排ガス装置や安全装置に関する項目は特に重要。

  2. 契約書への明記
     「現状販売」と書かれていても、説明義務が免除されるわけではない。装置の有無を具体的に記す。

  3. 納車時のやり取りの記録
     引き渡し時の説明や異変は、日時と担当者名を添えてメールなどで残す。後の証拠になる。

2025年9月の東京地裁判決は、高級車であっても取引の信頼が失われれば契約そのものが無効になることを示した。
キャタライザーの未装着という一見小さな不備が、「公道を走れない」という根本的な問題に直結したことは重い。車を販売する側には誠実な説明が、購入する側には確認と記録の徹底が求められる。
高額な買い物ほど、信頼を支えるのは形式ではなく、事実を正しく伝える姿勢である。

東京地裁が示した「走行できない契約」の意味

裁判で注目されたのは、「走行できること」が車の契約においてどれほど基本的な前提になるかという点だった。東京地裁は「購入者は公道を走る目的で車を買う」と明確に述べ、排出ガス浄化装置の欠如は契約の核心を揺るがすと判断した。
つまり、性能や外観よりも、まず「道路を合法的に走れる状態であること」が最優先の要素と位置づけたことになる。販売会社が装置の欠落を知りながら説明を怠った点も、信頼関係を破壊する要因とされた。

この判決は、中古車市場における「販売前整備」「説明責任」のあり方を改めて問うものであり、購入者だけでなく販売業者に対しても、誠実な取引姿勢を求める基準を明示したと言える。


安全・環境・信頼の三つの基準が重なった裁判

自動車は単なる移動手段ではなく、環境基準と安全基準を満たす社会的責任を負っている。
キャタライザーの未装着は、排ガス規制の不適合という環境面の問題に加え、整備記録の欠如による安全面の懸念を伴っていた。さらに、購入者と販売会社の間の説明不足は信頼関係を失わせた。

裁判所はこれら三つの要素を総合して「錯誤」と認定し、単なる契約違反を超えた社会的な影響を指摘した形だ。
判決は、環境・安全・信頼の三つを守ることが現代の自動車取引の最低条件であると示唆している。


中古車購入者が直面する「見えないリスク」

中古車の売買は、見た目がきれいでも内部に改造や欠落がある場合がある。
とくにECU(エンジンコントロールユニット)の改変や触媒の欠如は、外からは分かりにくい。今回のように納車時まで説明されないケースでは、契約後に初めて不具合を知ることになる。

そのリスクを避けるためには、車両履歴の開示を求めること、第三者機関による点検を利用することが重要だ。
販売会社側も「見えない部分」こそ丁寧に説明することで、信頼を得ることができる。


契約から判決までの流れ

購入検討
 ↓
インターネットで「正規ディーラー取扱車」と紹介された中古ポルシェ911を発見
 ↓
問い合わせ・試乗・契約(約1,355万円)
 ↓
納車時に「キャタライザー未装着」「ECU分解痕あり」と説明
 ↓
購入者が装着を要請(メールで記録)
 ↓
販売会社が対応せず引き渡し
 ↓
裁判提起(契約取消しと返還を求める)
 ↓
2025年9月 東京地裁判決:錯誤を認定し、約1,344万4,000円の返還命令


FAQ ― よくある疑問と解説

Q1. キャタライザーとは何ですか?
A. 排気ガスに含まれる有害物質を化学的に分解・無害化する装置です。日本ではこれがなければ車検に通りません。

Q2. 車検を通らない状態の車を売ることは違法ですか?
A. 装置の欠落を認識していながら告知しなかった場合、契約の前提を欠くと判断されることがあります。

Q3. 「錯誤」による契約取消しとは何ですか?
A. 契約時に重要な事実を知らずに誤った判断をした場合、その契約を無効にできる制度です。

Q4. 同様のトラブルを防ぐには?
A. 購入前に整備記録と改造歴を確認し、説明を文書で残すこと。納車時の説明内容もメールで記録しておくと安全です。

Q5. トラブルが起きたらどこに相談すればいいですか?
A. 消費者ホットライン(188)や自治体の消費生活センターが相談窓口になります。

 

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走行不能が示した取引の新基準

区分 内容
判決の要点 東京地裁は「走行目的での購入」に基づき、キャタライザー未装着を重大な錯誤と認定。契約を取り消し、返還命令を出した。
技術的背景 キャタライザーは保安基準で義務付けられた排ガス浄化装置。欠落すれば車検に通らない。
社会的意義 高額商品の信頼を守るため、販売会社の説明責任を明確化した判決。
教訓 契約時に装置・整備内容を確認し、記録を残すことが再発防止の鍵。

「信頼を走らせる装置」は人の誠実さ

この裁判は、車という機械の問題に見えて、その本質は人の信頼の問題だった。
触媒やECUが正常に機能してこそ車が動くように、販売者と購入者の間の誠実さが取引を動かす。
排ガス浄化装置の未装着は、ただの部品欠落ではなく、「信頼の装置」が外れてしまった状態だったとも言える。

東京地裁の判断は、物の欠陥を超えて、人の行動の在り方を問う判決だった。
走るための法的要件と、取引を成立させる倫理的要件――その両方を満たすことが、社会にとっての「安全運転」なのだ。

 

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