
2025年10月10日、東京メトロの山村明義取締役が社員への不適切な言動を理由に辞任。8月の内部通報を受け、外部弁護士が調査を実施し事実を認定。取締役会が辞任届を受理し、社長らが報酬返上を決定。上場企業としてのガバナンス体制が問われている。
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東京メトロ・山村明義取締役が辞任 内部通報から調査・決定までの経緯を整理
2025年10月10日、東京メトロは山村明義取締役の辞任を発表した。
同社によると、2025年8月に社員から「不適切な言動」があったという内部通報が寄せられ、外部の弁護士が調査を実施した。その結果、事実関係が認められたことから、指名・報酬委員会が辞任を妥当と判断し、当日の取締役会で辞任届を受理した。
山村氏は社長として経営の拡大や東証プライム市場への上場を主導してきたが、今回の事案を受け、取締役としての職を退いた。
東京メトロは「人権尊重およびコンプライアンス徹底の立場にある者が不適切な言動に及んだことは遺憾」としている。
辞任発表の要点と時系列
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年10月10日 |
| 辞任理由 | 社員への不適切な言動(詳細非公表) |
| 通報時期 | 2025年8月に内部通報窓口へ通報 |
| 調査主体 | 外部弁護士が聞き取り調査を実施 |
| 判断手続 | 指名・報酬委員会が妥当と判断、取締役会で辞任届を受理 |
| 対応処置 | 社長・副社長が報酬返上、株式報酬は返還 |
| 経歴 | 2017年に社長就任、2024年東証プライム上場を実現 |
内部通報から辞任受理まで:2025年の経緯をたどる
2025年8月、東京メトロの内部通報窓口に、取締役の山村明義氏による不適切な言動があったという通報が寄せられた。
会社は直ちに外部の弁護士に調査を依頼し、複数回にわたり事実関係の確認を進めた。
調査の過程で山村氏本人が不適切な言動を行った事実を認め、辞任の意向を示した。
報告を受けた指名・報酬委員会は「辞任が妥当」と判断し、2025年10月10日の取締役会で辞任届を受理した。
東京メトロは、調査の詳細や発言内容などは明らかにしていないが、再発防止策を検討する方針を示している。
経営の節目と上場までの歩み
山村氏は2017年6月に東京メトロの社長に就任した。
在任中は駅施設の改修や車両更新などの経営改革を進め、2024年10月23日には東証プライム市場への上場を実現させた。
初値は1,630円を記録し、公共インフラ企業としての新たなステージに立った。
2025年6月の定時株主総会で社長職を退き取締役に専念していたが、わずか数か月後に今回の通報が発生した。
経営の安定とガバナンス強化を象徴していた人物の辞任は、同社にとって大きな転機となった。
一般的なガバナンス手順と今回の流れ
| 項目 | 一般的な手順 | 東京メトロでの対応 |
|---|---|---|
| 通報受付 | 社内の相談・通報窓口で受付 | 2025年8月に内部通報窓口へ通報 |
| 調査 | 外部弁護士などによる聞き取り・確認 | 外部弁護士が調査を実施 |
| 本人確認 | 事実確認・弁明機会 | 山村氏が不適切言動を認め辞任意向を示す |
| 判断機関 | 指名・報酬委員会など独立組織 | 同委員会が辞任妥当と判断 |
| 決定手続 | 取締役会で承認・受理 | 2025年10月10日の取締役会で辞任届を受理 |
| 会社対応 | 公表・処置・再発防止 | 報酬返上・株式報酬返還を実施 |
この一連の流れは、企業統治における通報制度と調査体制が機能した事例といえる。
東京メトロは今後も再発防止やガバナンスの透明性を求められる局面に立っている。
社長・副社長による報酬返上も、組織全体としての責任を明示する対応となった。
東京メトロが示した対応の透明性と再発防止への課題
2025年10月10日の取締役会で辞任届を受理した東京メトロは、社内外の信頼を回復するための姿勢を明確に打ち出した。
同社は報酬返上や株式報酬返還といった具体的な処置を取るとともに、今後の再発防止に向けた対応を検討するとしている。
通報制度の活用から調査・決定に至るまでの手順が可視化された点は、企業ガバナンスの実効性を示すものとして注目される。
ガバナンス手順と透明化の意義
今回の一連の流れは、内部通報制度と第三者調査を通じて企業が問題を検証し、迅速に判断を下す仕組みが機能した例といえる。
指名・報酬委員会を経由した判断や、経営陣の報酬返上という対応は、企業としての説明責任を果たそうとする姿勢の表れでもある。
一方で、調査内容や再発防止策の具体的な中身はまだ明らかにされていないため、今後の運用実績が問われる段階にある。
企業に求められるのは「通報が活かされる組織文化」をどう形成するかであり、その基盤づくりが透明性の鍵を握る。
社員・利用者から見た視点の補足
東京メトロは約9,000人の社員を抱え、日々約700万人の乗客が利用する首都圏の主要インフラ企業である。
その規模ゆえに、一人ひとりの行動が社会的信頼と直結する。
社員にとって、今回の対応は「通報制度が実際に機能した」という確認でもあり、同時に再発防止の仕組みがどう継続されるかを見極める契機となった。
利用者にとっては、経営陣の不祥事よりも「安全・安定運行を支える組織体制」が維持されるかどうかが関心の焦点だ。
辞任の決定自体が最終的な結末ではなく、「信頼をどう再構築するか」が次の課題として残されている。
内部通報から取締役辞任までの手続き
内部通報(2025年8月)
↓
外部弁護士による調査開始
↓
本人への聞き取りと事実認定
↓
辞任の意向を表明
↓
指名・報酬委員会が妥当と判断
↓
取締役会で辞任届を受理(2025年10月10日)
FAQ ― 読者が知りたい5つの疑問 ―
Q1. 辞任はいつ決まったのですか?
A. 2025年10月10日の取締役会で正式に辞任届が受理されました。
Q2. 不適切な言動の内容は公表されていますか?
A. 会社は詳細を明らかにしていません。報道でも具体的な発言や行動は非公表です。
Q3. 通報はどのように扱われたのですか?
A. 2025年8月に社内の内部通報窓口に情報が寄せられ、外部の弁護士による調査が行われました。
Q4. 他の役員に処分はありましたか?
A. 社長と副社長が報酬の一部を自主返上し、山村氏の株式報酬は返還されています。
Q5. 今後の対応は?
A. 東京メトロは再発防止策と社内コンプライアンス体制の見直しを検討しています。
事実でたどる一連の流れと対応
企業統治と社会的信頼の回復に向けて
今回の一件は、企業統治の実効性が問われる典型的な事例となった。
内部通報制度が適切に作動し、外部調査を経て辞任という判断が迅速に下されたことは、ガバナンス体制が形骸化していないことを示すものでもある。
一方で、調査結果の開示範囲や社内再発防止策の透明性は今後の課題として残る。
東京メトロほどの規模を持つ企業が信頼を回復するには、制度面の整備だけでなく、社員が安心して声を上げられる文化づくりが不可欠だ。
社会的インフラを担う企業の信頼は、経営者一人の資質ではなく、組織全体の誠実な対応によって支えられる。
この辞任劇は、その重さを改めて社会に示す出来事となった。