2025年10月、桃野泰徳さんが体験したセルフレジの「違和感」投稿が話題に。
放置スキャンを悪用する“カゴ抜け”の手口、見抜き方、店と客の防犯対策を詳しく解説。
Xに投稿された体験談
セルフレジ“カゴ抜け”の手口
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スーパーのセルフレジに並び、商品をスキャンしようとした瞬間、画面に映った金額に違和感を覚えた――。
2025年10月、X（旧Twitter）に投稿された桃野泰徳さんの体験談が注目を集めている。
すでに他人の商品がスキャンされたまま放置されたレジ画面。気づかず操作を続ければ、支払いをしていない他人の買い物分を抱えたまま退店してしまう可能性がある。
この投稿をきっかけに、全国のスーパーやコンビニで「カゴ抜け」と呼ばれる不正手口が話題となり、日常の買い物に潜む新たなリスクが浮かび上がった。
セルフレジで起きた「カゴ抜け」事件の全体像
違和感が導いた発覚 — 桃野さんの体験
桃野泰徳さんが体験したのは、日常の買い物中にふとした違和感から始まった。
いつも通りセルフレジでスキャンを始めようとした際、画面に「マイバッグを使用しますか？」の選択が表示されなかった。
代わりに合計金額が「約3800円」と表示され、複数の商品がすでに登録された状態になっていたという。
過去に秤り式レジでエラーを経験していた桃野さんは、「初期画面が出ないのはおかしい」と気づき、その場で操作を中断。
レジ上部のランプが赤く点灯していたため、店員を呼び状況を説明した。
駆けつけたスタッフは「お客様の会計ではないのですか？」と確認。桃野さんが「まだ商品をスキャンしていません」と伝えると、店員は「スキャンだけして逃げた可能性がありますね」と応じ、当該レジを閉鎖した。
対応は丁寧で、別のレジで会計を済ませた際には「ご報告ありがとうございました」と感謝の言葉があったという。
SNSでこの体験が紹介されると、「まったく同じことがあった」「支払い前に気づかずレジを通ってしまったことがある」といった反応が寄せられた。
同様の手口がファミレスやコンビニなどでも目撃されており、特にレシート提示を求めない店では、被害が起こりやすい状況が指摘されている。
利用者と店舗の“目の感覚”が試される時代へ
桃野さんが強調するのは、「小さな違和感を見逃さないこと」だった。
画面遷移の順番、レシートの金額、ランプの色――。それらの違いはわずかでも、異常のサインとなる。
報道や投稿に寄せられたコメントの中には、「酔っていた時に高額の会計に気づかず支払ってしまった」「他人のスキャン分をそのまま決済していた」といった実例もあった。
セルフレジの利便性が進む一方で、監視と確認の負担は「人」から「利用者」にも分散されつつある。
そのため、利用者の一瞬の観察力が、思わぬトラブルを防ぐ最後の砦になる。
店側にとっても、放置スキャンを検知する機能や巡回体制を整えることが信頼維持の鍵となっている。
カゴ抜け型と従来型セルフレジ不正の違い
| 項目 | カゴ抜け型（放置スキャン型） | 従来型セルフレジ不正 |
|---|---|---|
| 手口 | 前の客がスキャンのみ行い支払わずに退店。次の客が誤って続行 | バーコードを隠す・一部のみスキャン・すり替えなど |
| 特徴 | “初期画面が出ない”など違和感で気づける | スキャン漏れや数量詐称が多い |
| 被害範囲 | 前の客・次の客双方が巻き込まれる可能性 | 実行者のみが利益を得る単独型 |
| 検知の難易度 | 見た目に気づけば防止可能 | カメラや重さ検知が必要 |
| 主な対策 | レシートゲート、放置状態アラート、初期画面自動リセット | スキャン音検知、商品重量センサー、監視カメラ |
セルフレジの仕組みと“放置スキャン”が生まれる構造
セルフレジは、利用者自身が商品のバーコードを読み取り、支払いまで完結できる仕組みだ。
人件費削減や混雑緩和に大きく貢献しているが、操作の一部を「顧客の自己申告」に依存している点が弱点でもある。
今回の事例のように、支払い直前の状態で放置されたレジが次の客に引き継がれてしまうと、誰の会計か分からない「中間状態」が生まれる。
このわずかな隙が、“カゴ抜け”と呼ばれる不正を可能にしている。
一部の店舗では、レシートをゲートにかざさないと退店できない仕組みや、セルフレジごとに防犯カメラを設置している。
しかし、レジの数が多い大型店舗では、常時すべての画面を監視するのは難しい。
特に、ピークタイムや高齢者の利用時には、意図せず不正を誘発してしまう状況もある。
便利さとリスクが表裏一体に存在する――それが今の小売現場の実情だ。
進化するセルフレジと「安心して使える設計」への模索
メーカーや小売業界では、セルフレジの安全性を高めるための改良が進んでいる。
支払い完了後に画面が自動で初期化されるタイマー機能、一定時間放置された場合にアラームが鳴る設計、さらにはAIカメラによる不正検知も検討されている。
また、支払い忘れを防ぐために「操作完了」音声を強化したり、ランプ点灯のパターンを変更したりといった実務的な改善も進む。
利用者の行動データを分析し、誤操作と故意の違いを判断する仕組みも試験導入が始まっている。
ただし、技術だけでは不正を完全に防ぐことはできない。
最も効果的なのは、「違和感を覚えたら止まる」「自分の会計画面を確認する」という基本の行動である。
桃野さんの投稿が多くの反響を呼んだ背景には、誰にでも起こりうるという現実と、日常の中で“気づけた勇気”が共感を集めたという側面がある。
消費者・店舗・社会の三方向から見たリスクと責任
この問題は単なる「万引き」ではなく、社会構造の変化を映す鏡でもある。
セルフレジの普及は人手不足の解決策でありながら、同時に“無人の責任空間”を生み出した。
買い物客が無意識に他人の会計を操作してしまう可能性がある一方で、店側もその行為の意図を即時判断するのが難しい。
法律的に見れば、意図的に支払いを免れた場合は詐欺罪が適用される。
だが、誤操作や認識違いであれば刑事責任は問われない。
この“意図の境界”が曖昧であるため、トラブル防止には双方の確認行動が不可欠だ。
社会全体として、セルフ化の波が進む中で「人が介在する安心」の重要性が改めて問われている。
セルフレジで違和感を覚えたときの行動手順
【スタート】
↓
セルフレジの画面を確認
↓
画面に「マイバッグ／レジ袋」の選択が出ているか？
├─ はい → 通常どおりスキャン開始
│
└─ いいえ → すでに金額や商品名が表示されている
↓
レジ上部のランプが点灯しているか確認
├─ 点灯している → 店員を呼ぶ
│ ↓
│ レジ閉鎖・再起動を依頼
│ ↓
│ 他のレジで会計
│
└─ 点灯なし → 念のため店員に報告
↓
安心して会計を再開
❓FAQ：セルフレジ利用時に知っておきたい5つの疑問
Q1. 「カゴ抜け」とは何ですか？
前の利用者が商品をスキャンしたまま支払いをせずに去り、そのレジを次の客が誤って操作してしまう手口を指します。
Q2. 故意でなくても責任を問われることはありますか？
誤操作であれば刑事責任は問われませんが、店員が状況を確認するまで操作を中止することが大切です。
Q3. 防止策として何を心がければよいですか？
スキャン前に必ず画面の合計金額を確認し、初期画面であるかをチェックしてください。
Q4. 店側はどんな対策を取っていますか？
レシートゲートや放置検知システム、監視カメラの配置などが導入されています。
Q5. 被害に遭った場合、どうすればいいですか？
すぐに店員へ報告し、状況を説明しましょう。レシートや時間帯の記録が後の確認に役立ちます。
総合要約表｜今回の事例から見える課題と教訓
便利さの影にある「人の感覚」という最後の防波堤
セルフレジは、店舗運営の効率化を支える象徴的な技術である。
だが、今回の報道が示すように、テクノロジーだけでは解決できない問題が存在する。
それは「人が感じる違和感」こそが、最も信頼できるセンサーであるという事実だ。
桃野さんが感じた“初期画面の違和感”は、単なる直感ではない。
毎日の生活の中で積み重ねた経験が、不正の兆候を見抜いた。
このような市民の行動がSNSを通じて共有され、社会的な警鐘となったこと自体が重要である。
便利さを追求する社会において、安心を守るのは結局「人の気づき」だ。
画面の向こうで進化する技術に頼るだけでなく、利用者一人ひとりの注意が、公共の秩序を支えている。
そしてその意識が、次の安全なシステム設計を生む。
“気づく力”を持つこと――それが、これからの買い物で最も頼れる防犯対策なのだ
