
日産自動車は横浜本社を約970億円で売却し、リースバックで入居を継続。再建策「Re:Nissan」と連動する資金確保の狙いを解説。
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日産が横浜本社を970億円で売却、リースバックで入居継続
日産自動車は 2025 年 11 月 6 日、横浜市西区のみなとみらい地区にあるグローバル本社ビルを約 970 億円で売却し、売却後も同じ建物を賃貸で使い続ける「セール・アンド・リースバック方式」を採用すると発表した。契約は信託受益権の譲渡によって行われ、譲渡先は MJI 合同会社、貸主はみずほ信託銀行となる。取引により、当期の特別利益として約 739 億円が計上される見通し。
本社機能は横浜に残り、拠点の移転や撤退は伴わない。
【取引概要と主要数値】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 売却額 | 約970億円 |
| 契約方式 | 信託受益権の譲渡によるセール・アンド・リースバック |
| 貸主 | みずほ信託銀行 |
| 本社機能 | 横浜で継続入居(移転なし) |
| 特別利益 | 約739億円を当期に計上見込み |
本社ビル売却の骨子と背景
今回の本社ビル売却は、日産自動車が進める経営再建策「Re:Nissan」の一環として位置づけられている。
同社は 2025 年 5 月に、2027 年度までに国内外 7 工場での生産を打ち切り、およそ 2 万人を削減する計画を公表した。さらに 10 月末には、2026 年 3 月期の連結営業損益が 2,750 億円の赤字となる見通しを示しており、資産の流動化によって資金を確保する必要があった。
信託受益権の譲渡方式を採用することで、日産は資産を現金化しながらも、オフィスとしての使用を継続できる。売却によるキャッシュ流入と特別利益の計上は、短期的な財務体質の改善に直結する。一方で、賃貸契約に基づく支出が今後の固定費として残るため、経営効率の維持が課題となる。
2009 年に銀座から横浜へ本社を移転した際、同社は地域との共生と創業地への回帰を掲げていた。今回の取引はその流れを断ち切るものではなく、横浜を拠点とした企業活動の継続を前提にしている点が特徴だ。
横浜本社が持つ意味と企業再建の流れ
横浜本社ビルは、日産が国内外のブランド再生を象徴してきた拠点である。2009 年の開設以来、企業展示や地域イベントなどを通じて一般公開が続いており、日産の企業文化を発信する場として機能してきた。
この建物を手放すのではなく、リースバックによって使い続ける判断は、再建過程での「資産軽量化」と「象徴維持」を両立させるものである。
同社は再建計画で生産体制の整理を進めるとともに、電動化や次世代モビリティ技術への投資を優先するとしている。今回の本社ビル売却による資金確保は、その方針と整合的だ。企業が持つ不動産を流動化して事業に再投資する手法は、国内外の自動車メーカーでも広がりを見せている。
資産流動化と機能維持の両立比較
| 項目 | 資産売却+リースバック | 継続所有 | 本社移転 |
|---|---|---|---|
| 現金確保 | 即時に可能 | 困難 | 一部可能 |
| コスト構造 | 賃貸料が発生 | 固定資産税など維持費 | 移転費用が発生 |
| 本社機能 | 継続利用可能 | 継続利用 | 立地変更 |
| 企業イメージ | 所有から利用へ転換 | 安定 | 地域関係の再構築が必要 |
日産自動車の横浜本社ビル売却は、資産の現金化と拠点維持を同時に進める戦略的な判断といえる。再建計画「Re:Nissan」で掲げた構造改革と合わせて、同社が直面する財務課題を乗り越えるための具体的な一手として注目される。
本社機能は引き続き横浜に置かれ、地域との結びつきを維持したまま新たな再建フェーズへ踏み出す。
本社機能を横浜にとどめる意義
今回のセール・アンド・リースバック契約では、本社機能をそのまま横浜に残すことが明示された。2009年の銀座から横浜への移転以降、日産の本社は国内外の来訪者を迎える拠点であり、横浜の都市景観を象徴する施設として定着している。
賃貸契約を結ぶことで運営費は一定の負担となるが、横浜本社に社員や研究部門をとどめることで、経営の安定性とブランドの一体感を保てる。これにより、再建過程にある企業としての信用維持にもつながる。
建物の所有権は譲渡されたが、活用面では変化がなく、周辺地域の雇用や経済活動にも影響を及ぼさないとみられる。地域経済の安定を重視する日産の姿勢がうかがえる判断である。
資金調達と経営戦略の連動
今回の売却によって見込まれる資金流入は約970億円。日産はその一部を事業再構築と研究開発への再投資に充てる方針を示している。再建策「Re:Nissan」で示した生産体制の縮小と電動化シフトを同時に進めるには、潤沢な運転資金が必要だ。
特別利益約739億円の計上は、当期の業績に直接的な改善効果をもたらす。さらに、借入金の返済や将来の設備投資の原資としても活用できる。短期的な財務改善と長期的な事業転換を両立させる狙いがある。
一方で、今後の賃貸契約に伴う支出が固定化するため、資金効率の維持が課題となる。収益の改善とコストの均衡をどのように保つかが、次の経営判断の焦点となる。
横浜と企業ブランドの関係
横浜本社は、単なるオフィスではなく企業の「顔」として国内外の投資家や来訪者に向けた象徴的な施設である。2009年の開設以来、日産はここを拠点に多くの技術展示や社会貢献活動を行ってきた。
その場所を維持したまま資産を流動化させる今回の決定は、「場所の継続」と「財務構造の再構築」を両立させたものといえる。地域とのつながりを保つ姿勢が示されたことは、経営再建下でも社会的信頼を重視する企業姿勢として評価できる。
日産の再建と本社売却の流れ
経営再建の必要性(営業損益 -2,750億円見通し)
↓
資産流動化の検討
↓
本社ビルの売却決定(970億円)
↓
信託受益権の譲渡 → セール・アンド・リースバック契約締結
↓
特別利益 約739億円を計上
↓
本社機能は横浜で継続入居
↓
再建資金の確保と経営基盤の安定化へ
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FAQ(読者の疑問に答える)
Q1. 本社を売却しても横浜から移転するのですか?
いいえ。日産は賃貸契約を結び、本社機能をそのまま横浜に残します。社員の勤務や展示施設の運営も従来どおり行われます。
Q2. 売却でどのくらいの資金を得たのですか?
契約総額は約970億円で、当期に約739億円の特別利益を計上する予定です。
Q3. 売却先はどの企業ですか?
信託受益権の譲渡により、譲渡先はMJI合同会社、貸主はみずほ信託銀行です。
Q4. 再建策「Re:Nissan」とはどんな内容ですか?
2027年度までに国内外7工場での生産を停止し、約2万人を削減する計画です。事業規模を最適化し、電動化と新技術への投資を進めます。
Q5. 今後の課題は何ですか?
資金調達で短期的な改善は期待できますが、長期的には賃貸費用を含む固定支出をどのようにコントロールするかが重要になります。
横浜本社売却と再建の全体像
| 区分 | 内容 | 年号 |
|---|---|---|
| 売却発表 | 横浜本社ビルを970億円で売却し、賃貸で継続利用 | 2025 |
| 契約方式 | 信託受益権の譲渡によるセール・アンド・リースバック | 2025 |
| 財務効果 | 約739億円の特別利益を計上見込み | 2025 |
| 再建施策 | 「Re:Nissan」で7工場停止・2万人削減 | 2025 |
| 本社の位置 | 2009年から横浜に所在、移転なし | 2009 |
| 今後の焦点 | 賃貸費用の最適化と電動化投資の両立 | 2025 |
横浜にとどまる経営判断が示す再建の現実
日産が選んだ「売却しても動かない」という判断は、再建期にある企業としての現実的な選択だ。資金を確保しながらも、象徴的拠点を手放さないことで企業の信頼とブランド価値を守った。
セール・アンド・リースバックは一時的な資金調達策に見えるが、固定費を把握しやすくし、資本構成を軽くする効果がある。財務の安定を図ると同時に、再建の象徴を横浜に残すことで、社内外への安心感をもたらした。
再建の道は容易ではないが、日産が拠点を維持して挑む姿勢は、企業の基盤を地域に置きながら変化を受け入れる姿として読み取れる。今回の本社ビル売却は、単なる不動産取引ではなく、経営再生における意思表示といえる。
