史上初“サヨナラリプレー弾”ヤクルト
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2025年7月21日、神宮球場で行われたヤクルト対広島戦で、赤羽由紘選手がプロ野球史上初となる「リプレー検証によるサヨナラ本塁打」を記録した。約3分に及ぶ審判団のビデオ検証の末に逆転劇が成立し、球場は一瞬の静寂から歓喜へと一変した。
赤羽の一打に沸いた神宮の夜
延長に突入するかと思われた9回裏、神宮球場が異様な空気に包まれた。ヤクルトが2点を追う2死一・三塁の場面で打席に立ったのは、内野手の赤羽由紘選手。広島ハーン投手の内角低めスライダーをすくい上げた打球は、高々と左翼ポール際へ舞い上がった。
打球はスタンドに届かずフェアゾーンに落下し、当初は三塁打と判定された。しかし、審判団が「自らの判断で検証を行います」とアナウンスし、ビデオ判定が実施された。リプレー映像には、打球が左翼ポールをわずかにかすめる瞬間が記録されていた。
3分間の沈黙の後、「ホームラン」の判定が告げられると、赤羽は歓喜の水かけを受け、球場全体が沸き立った。この一打は、プロ初のサヨナラ弾であり、記録上は2号3ランとして公式に認定された。
赤羽の飛躍とチームへの貢献
この日の赤羽は、7回にも左前適時打を放ち、反撃の口火を切っていた。今季は開幕から積極起用され、ここまで63試合に出場。守備位置にとらわれない起用で存在感を発揮しており、ユーティリティ選手の域を超えつつある。
オフには元プロ野球選手・内川聖一氏と自主トレを共にし、「人生を変える1年にしろよ」と発破をかけられていたという。その言葉通り、今季は勝負所で結果を残す場面が増えており、チーム内の信頼も確実に高まっている。
試合後のお立ち台では「すごい気持ちが良かった」と笑顔で語り、プロ初の劇的本塁打を素直に喜んだ。
時系列:判定変更の経過
時刻・場面 | 内容 |
---|---|
9回裏2死一・三塁 | 赤羽が左翼方向へ高く舞い上がる打球を放つ |
打球着地点 | フェンス手前に落下、判定は三塁打(同点) |
審判の判断 | 「自らの判断で検証を行います」と場内アナウンス |
検証時間 | 約3分、左翼ポールのかすりを確認 |
判定変更 | 本塁打と認定、3ランとなり試合終了 |
最終結果 | ヤクルト 7-6 広島/赤羽は2号サヨナラ本塁打 |
制度的補足と演出的価値
2014年に導入されたプロ野球のリプレー検証制度は、これまで主にアウト・セーフやフェア・ファウルの判定に使用されてきた。しかし、今回のように試合の勝敗が決する場面で判定が変更されたケースは史上初である。
リクエストによる異議申し立てではなく、審判団が「自発的に検証に入る」とアナウンスした点も注目される。これは、リプレー制度が単なる抗議手段ではなく、公正さを担保するための裁量判断として運用されていることを象徴している。
劇的な勝敗の決着に“数分間の静寂”という演出が加わり、観客と選手がともに結末を待つ空白の時間が球場全体を包み込んだ。この無音の時間こそが、技術制度がもたらす新たな「試合演出」の一つとなった。
今回の赤羽選手の活躍は、守備のユーティリティではなく「打席の勝負所で結果を出す主軸」への成長を印象付けた。特に9回2死からの集中力と1球で仕留める判断力は、代役や控えの選手が担う役割を超えた存在感を放っている。
また、高津監督は直後のコメントで「まさかとは思った」と語ったが、続けて「よく仕留めた」と明言しており、赤羽に対する評価の変化が見て取れる。これは単に偶然の一打ではなく、日頃の準備と信頼構築が結びついた結果だといえる。
逆転劇のプロセス
リプレー検証という制度は、誤審を減らすための公平性の担保として導入されたが、今回の試合ではそれ以上の意味を持った。約3分間という時間は、単なる“判定待ち”ではなく、結果によって勝敗が変わるという「観客と選手が同時に結果を待つ演出空間」になった。
特に印象的だったのは、赤羽選手自身が打球の手応えを感じながらも三塁で止まり、コーチと確認を交わしつつ静かに結果を待っていた姿である。その振る舞いは、映像技術と選手心理の新たな関係を象徴していた。
このように、リプレー制度は「勝敗の補正装置」から、「ドラマを引き立てる構成要素」へと機能を変えつつある。制度が競技を冷たくするのではなく、逆に人間的な歓喜を際立たせる場面を創出したことは注目に値する。
❓FAQ
Q1. なぜ審判団は自ら検証に入ったのですか?
→ リクエスト制度とは別に、審判が必要と判断した場合は自発的に検証を行える制度設計となっています。今回もそれに基づいて実施されました。
Q2. 検証にはどのくらい時間がかかりましたか?
→ 公開情報によると、約3分間のリプレー検証が行われたと報じられています。
Q3. このプレーはNPB史上初の記録なのですか?
→ はい、ビデオ判定の結果がサヨナラ本塁打として認定されたのはプロ野球史上初と報道されています。
Q4. 赤羽選手のこれまでの出場状況は?
→ 2025年シーズンでは63試合に出場しており、打撃と守備の両面で起用が続いています。
Q5. 今後もこのような判定は増える可能性がありますか?
→ 明言はできませんが、技術の精度と信頼が高まれば、重要な場面での適用が増えると見られています。