
かつて「ウェカピポ」などのヒット曲で知られたヒップホップグループ・SOUL'd OUT。その元メンバーであるBro.Hi氏が、現在は東京都羽村市で和食料理店を営みながら、音楽との関わりも続けている。ヒューマンビートボックスから包丁へ──表現手段を変えて歩み続ける彼が、解散後に選んだ道と、今も話題となる“印税ゼロ”都市伝説の真相を語った。
SOUL'd OUT元メンバーBro.Hi
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かつて「ウェカピポ」や「Dream Drive」などのヒット曲で知られ、2000年代のヒップホップシーンを駆け抜けた伝説のグループ・SOUL'd OUT(ソウルドアウト)。その元メンバーであり、ヒューマンビートボックスを担ったBro.Hi氏が、現在は東京都羽村市で和食料理店を営みながら、音楽とも向き合い続けているという。料理人と表現者という二つの顔を持つ現在の姿と、Diggy-MO’やShinnosukeとともに駆け抜けた音楽活動の舞台裏を、本人の言葉で聞いた。
SOUL'd OUT結成とBro.Hiの表現
東京都内の和食店に電話をかけると、「はい、私ですが」という丁寧で落ち着いた声が返ってきた。ヒップホップグループ「SOUL'd OUT」の元メンバー、Bro.Hi氏。現在も音楽活動を継続しつつ、羽村市で和食料理店を営んでいるという。
SOUL'd OUTは、メインボーカルのDiggy-MO’、トラックマスターのShinnosuke、そしてヒューマンビートボックスのBro.Hiによる3人組ユニットで、2003年のメジャーデビュー以降、独特なフロウとパフォーマンスで人気を博した。
結成のきっかけは、ドラムを担当していたBro.Hi氏が「バンドは人間関係が難しい」と感じたことだったという。「だったらユニットの方が早いんじゃないか?」と発想を転換し、ヒューマンビートボックスやラップへと移行した。
当時の情報源は限られていたが、CDを聴き込みながら独学でスキルを磨いたと語る。自己流で体得したリズム感と音の重ね方は、のちのライブでも大きな武器となった。
ネット文化との接点と印税の真偽
グループの象徴でもある「真昼間だからフライドポテト 塩が足んねえよ 笑いとまんねえよ」といったユニークな歌詞は、現在もSNSでたびたび話題に上る。Bro.Hi氏本人も、「芸人のエハラマサヒロさんやぬまんづさんがネタにしてくれてるのも笑わせてもらってる」と、ネットでの再注目を前向きに受け止めていた。
一方で、「SOUL'd OUTの曲はカラオケで歌えないから、印税がゼロだった」というネット上の“都市伝説”についても質問が及ぶと、「ゼロ円っていうのは…まあウソだね(笑)」と笑顔で否定した。「印税の計算方法は正直よくわかってないけど、今でもちょいちょい歌ってくれる人はいる」と話し、リスナーへの感謝をにじませた。
カラオケ印税とネット再生数
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 都市伝説 | 「ヒット曲なのにカラオケ印税がゼロだった」説 |
| 本人の見解 | 「ゼロ円はウソ(笑)」と明言/多少の収入はある |
| 客観指標 | JOYSOUND週間ランキングに複数曲がランクイン中 |
| 補足 | 難易度が高く歌い手は限定的ながら、根強い人気を保つ |
H2-2:板前として握る包丁とマイク
SOUL'd OUTとして10年超にわたりステージに立ち続けたBro.Hi氏は、現在、東京都羽村市にある和食料理店で、店主兼板前として日々の仕込みから接客までを一手に担っている。店名は明かされていないが、取材当日はカウンターに立つ本人の姿が確認できた。
店を開いた理由を問うと、「料理は昔から好きだったけど、本気で学ぼうと思ったのはSOUL'd OUT解散後」と語る。2015年からは都内・赤坂の割烹で見習いを始め、6年間の修業を経て2021年に独立開業へと踏み切った。
厨房では黙々と包丁を握る一方で、閉店後には店舗2階で簡易セッションスペースを設け、知人のDJやMCと音合わせをする日もあるという。「料理と音楽、どちらも“間”を読む仕事だと思っている」と話すその姿勢は、ジャンルの垣根を越えた“表現者”としての現在を象徴していた。
修業の日々と独立の背景
赤坂の割烹での修業時代は、朝から夜遅くまでの仕込みや盛り付けの連続だった。「ヒップホップの現場とは全然違うけど、頭を下げることや段取りの大切さは共通していた」と語る。
当初は裏方からスタートし、3年目には副料理長に任命された。解散後のキャリア選択としては珍しいが、「自分の中で“ライブ”という形を変えた表現をしたかった」と話すように、調理場は新たなステージでもあった。
現在は、地元の常連客や遠方から訪れる音楽ファンが席を並べる。壁際には、かつてのライブフライヤーがさりげなく飾られており、両方の時代を知る者にとってはどこか温かみを感じさせる空間となっている。
音楽ファンと地元客が交差する場所
店内には固定のBGMは流れていないが、常連客からのリクエストでSOUL'd OUT時代の楽曲が小さくかかることもあるという。Bro.Hi氏本人は「恥ずかしいけど、うれしいよね」と照れ笑いを浮かべながら語っていた。
地元住民からは「気さくで話しやすい」と親しまれ、一方で往年のファンにとっては、憧れの存在と肩を並べて食事ができる空間にもなっている。ある常連は「おいしい料理を食べていたら、急にライブのように拍手が起きた」と振り返った。
この交差点のような空間には、音楽時代のエネルギーと、料理人としての真摯な姿勢が共存している。
Bro.Hiが歩んだ二つのキャリアの流れ
| 年 | 音楽活動 | 料理の道 |
|---|---|---|
| ~2014年 | SOUL'd OUTメンバーとして全国ツアー・CDリリース | ― |
| 2015年 | 音楽活動休止/料理修業開始(都内・赤坂の割烹) | 見習いとして厨房入り |
| 2018年 | 副料理長に昇格/ライブ出演は限定的に再開 | 仕込み・献立の中心へ |
| 2021年 | 和食料理店を独立開業 | 自ら板前として接客・調理 |
よくある5つの疑問
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 今も音楽活動はしている? | 地元イベントや知人セッションなど限定的に継続中 |
| 店名は公表していないの? | 住所・店名は非公開だが、地元客の口コミで広まっている |
| メンバーとは今も連絡を取っている? | Shinnosuke氏は店を訪れたこともあり、連絡は続いている |
| ネットで見かける印税ゼロ説は? | 本人曰く「ウソ(笑)」とのこと。多少は入っている |
| 料理のどこにやりがいを感じる? | 「自分の手で人に届けられるところ」と語っていた |
Bro.Hiの軌跡を通じて見える視点
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 表現の変化 | マイクから包丁へ、表現の手段を変えた継続者 |
| 継続するつながり | 音楽仲間・ファン・地域との細い絆が残っていた |
| 都市伝説の真偽 | 「カラオケ印税ゼロ」は事実ではなく、再評価の機会にもなった |
| 地元との関係 | ファンだけでなく、地域に根ざす料理人としての役割も拡大 |
| 記事の余韻 | 音楽と料理、どちらも“間”を読む表現であることが伝わってきた |
ミームとして再評価されたSOUL'd OUTの文脈
かつては「難しすぎて歌えない」と言われ、ネット上では一部がミーム化されたSOUL'd OUTの楽曲。しかしその“歌えなさ”こそが、一過性の流行に左右されない独自性の証でもあった。
現在、そのリリックやスタイルはSNSやバラエティ番組を通じて再発見され、若い世代にも広がりつつある。Bro.Hi氏が語った「ネットは嫌いじゃない。むしろおもしろい」という言葉には、過去と現在の両方を受け止める姿勢がにじんでいた。
店の暖簾の奥で、静かに包丁を研ぎながらも、心のどこかでリズムを刻んでいる。その姿は、かつてステージに立っていた“あの人”のままだった。