鶴居村は釧路湿原国立公園隣接の民有地約7.5ヘクタールを購入し、メガソーラー建設を阻止する方針を決定。タンチョウ生息地と観光資源を守る動きの背景と今後の課題を詳しく解説。
7.5ha土地を購入へ メガソーラー阻止
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北海道釧路管内の鶴居村は、釧路湿原国立公園に隣接する民有地約7.5ヘクタールを購入する方針を固めた。目的は、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を防ぎ、タンチョウが生息する景観や生態系を守るためである。購入候補地は、観光客や写真愛好家に人気の撮影地・音羽橋から南東約1.5キロに位置する丘陵地で、村は現在、土地所有者と価格交渉を進めている。
鶴居村が土地購入でメガソーラー防止へ
村が土地購入を決めた経緯と背景
鶴居村は2025年9月11日、釧路湿原国立公園に隣接する民有地を購入する方針を固めた。購入面積は約7.5ヘクタールで、所有者との価格交渉が続けられている。候補地は観光名所として知られる音羽橋から南東に約1.5キロの場所にあり、タンチョウが飛来する風景を望む丘陵地である。
この動きの背景には、再生可能エネルギー事業者がこの場所で大規模太陽光発電所を建設する計画を示したことがある。村は景観や生態系への影響を懸念し、計画を阻止するため自ら土地を取得するという判断に至った。
釧路湿原とタンチョウの保護価値
釧路湿原は日本最大の湿原であり、ラムサール条約にも登録されている国際的に重要な湿地である。タンチョウは国の特別天然記念物に指定され、国内外から多くの観光客や研究者が訪れる。鶴居村は長年にわたり給餌活動や観光資源の保護を続けており、今回の土地購入方針もその延長線上にある。
特に音羽橋周辺は冬季にタンチョウが集まる名所として知られ、国内外から訪れる観光客が増加している。もし大規模な太陽光発電設備が建設されれば、景観の価値や生態系への影響が懸念されるため、村の判断は自然保護と観光資源維持の両面から注目されている。
他地域のメガソーラー計画と行政対応
年 | 地域 | 概要 | 行政の対応 | 出典 |
---|---|---|---|---|
2022年 | 北海道厚真町 | 森林伐採を伴う大規模メガソーラー計画 | 道が事業許可を一時停止 | 朝日新聞・毎日新聞・読売新聞 |
2023年 | 長野県伊那市 | 景観地でのメガソーラー反対運動 | 市が条例で規制強化 | NHK・産経新聞・共同通信 |
2025年 | 北海道鶴居村 | 湿原隣接地7.5haを購入し建設阻止へ | 村が土地を取得方針 | 共同通信・北海道新聞・HTB |
釧路湿原とタンチョウ保護の視点からみる土地購入の意義
釧路湿原は日本最大の湿原で、国立公園に指定され、ラムサール条約にも登録されている。湿原一帯は多様な動植物の生息地であり、特にタンチョウは国の特別天然記念物として国際的にも注目されている。鶴居村はタンチョウの飛来地として知られ、給餌活動や観光資源としての整備を続けてきた。
今回の土地購入方針は、国立公園の区域外にあたるものの、景観や生態系の連続性を守るという点で大きな意義を持つ。音羽橋周辺は冬季にタンチョウが飛来する名所であり、観光収入にも直結する地域である。太陽光パネルの設置が進めば、視覚的景観の変化だけでなく、鳥類の生息や飛来行動にも影響する懸念があるため、村は予防的に対応を取ったといえる。
法制度と行政の役割
鶴居村の土地購入は、法的に義務付けられた規制ではなく、自治体独自の判断によるものである。国立公園外では景観法や環境影響評価制度の対象外となる場合も多く、行政としてできる対応は限定的だった。
これまでも北海道内外で、国立公園や自然保護区の外で進められる再生可能エネルギー事業に対し、規制が不十分だという指摘があった。今回、村が自主的に土地を取得する決定を下したことは、法制度の隙間を補う具体策の一例といえる。今後、同様のケースが増える可能性があり、地方自治体と国の役割分担、再エネ導入と自然保護の両立が課題として浮き彫りになっている。
地域住民と観光業の受け止め
鶴居村では、タンチョウを目当てに国内外から観光客が訪れ、宿泊施設や飲食店など地域経済を支えている。もしメガソーラー建設が進めば、景観の価値が下がり観光収入に打撃を与える可能性がある。観光業者や住民にとって、村が先手を打って土地を買収する姿勢は安心感につながっている。
一方で、村の財政負担も無視できない。購入費用がどの程度になるのか、今後の財政運営や公共サービスへの影響について住民の関心が高まっている。
土地購入によるメガソーラー阻止の流れ
FAQ|鶴居村の土地購入に関する疑問
Q1. なぜ国立公園外の土地なのに問題となったのか?
A1. 国立公園区域外であっても湿原に隣接し、音羽橋周辺の景観やタンチョウの飛来環境に影響するため。
Q2. 土地購入の資金はどこから出るのか?
A2. 村の予算で対応予定だが、詳細な財源や補助金の有無は現時点で公表されていない。
Q3. すでにメガソーラー計画は中止されたのか?
A3. 村が土地を取得できれば実質的に建設は不可能となるが、契約はまだ成立していない。
Q4. 他地域でも同様の事例はあるのか?
A4. 長野県伊那市などで景観保護を理由に条例を整備した例があるが、土地買収で阻止するのは珍しい。
Q5. 今後の焦点は何か?
A5. 契約成立の有無、購入費用の財源、事業者側の正式な撤退表明が注目点となる。
鶴居村土地購入方針の全体像
土地購入が示す再エネと自然保護の新たな均衡
鶴居村が自ら財政負担を負って土地を購入し、メガソーラー建設を阻止するという判断は、全国的にも注目すべき動きである。再生可能エネルギーの導入は気候変動対策として不可欠だが、自然環境や景観との衝突は避けられない課題となっている。
従来は条例や規制で対応する例が多かったが、今回のように「自治体が直接土地を取得して守る」という選択肢は、現行制度の限界を補完する実践的な解決策である。しかし、財政的な持続可能性や他地域への波及効果については慎重に見極める必要がある。
この事例は、地域が主体的に自然保護と再エネ政策のバランスを取ろうとする象徴的な試みといえる。国や道は、こうした自治体の動きを一過性のものとせず、制度面で支える仕組みを整えることが求められている。