官製値下げ後の転換点。auの値上げ、楽天のU-NEXTセット、Y!mobileの新料金が登場。価格だけでなく品質・割引・動画の“実質価値”を比較。
「安さ」から「付加価値」
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携帯電話各社が相次いで料金改定や新プランを発表した。政府主導の「官製値下げ」から続いた値下げ競争は一段落し、いまや局面は「名目の値上げ」と「付加価値の強調」へと移っている。各社は通信品質の改善や動画配信サービスとの抱き合わせ、経済圏での割引などを打ち出し、利用者に納得してもらう戦略を展開している。
携帯料金をめぐる主な動き
KDDI(au)が既存プランを最大330円値上げ
KDDIは2025年8月から、主力ブランド「au」の既存プランを最大で月330円引き上げた。対象は既存契約者も含まれ、これまでの料金体系を維持する利用者にも改定が適用される。値上げ幅はプランに応じて110円、220円、330円と設定された。
背景には、人件費や電気代の上昇など運営コストの増加がある。さらに、通信網の強化や設備投資に回す資金を確保する狙いも示されている。同時に、山間部や圏外エリアでの接続性を高めるため、米スペースXの「スターリンク」を活用した衛星通信や、混雑時にデータ通信を優先させる「Fast Lane」、海外利用の拡充など通信品質改善策も進められた。
単なる値上げではなく「品質改善とセット」で利用者の理解を得ようとする姿勢が前面に出されている。
「官製値下げ」からの転換点へ
2020年から政府が主導した「官製値下げ」によって、携帯料金は数年間で大きく下がった。しかし2025年に入り、値下げ競争は収束しつつある。大手各社は値上げに踏み切る一方で、付加価値サービスを組み合わせることで、単純な値上げ批判を避ける動きを見せている。
この流れの中で、KDDIは通信品質の高さを前面に押し出し、楽天モバイルは動画配信サービスとの抱き合わせで「お得感」を訴求し、ソフトバンクはY!mobileを通じて割引や経済圏との連動を強調した。いずれも「値上げを補う魅力」を提供することに重点を置いている。
大手3社の料金改定と戦略
会社 | 改定内容 | 新サービス・施策 | 狙い |
---|---|---|---|
KDDI(au) | 既存プランを最大+330円 | 通信品質改善(衛星通信、Fast Lane、海外データ拡充) | 設備投資資金の確保と品質強化 |
楽天モバイル | U-NEXT見放題を含むセット(税込4,378円) | 動画配信サービスとのセット販売 | お得感を訴求し顧客囲い込み |
Y!mobile | 新料金「シンプル3」S+693円/M・L+143円 | 割引前は値上げ、カードや光回線利用で実質据え置き | 経済圏との連携を強化 |
楽天モバイルがU-NEXT見放題セットを発表
楽天モバイルは2025年6月に、動画配信サービス「U-NEXT」と通信を組み合わせた新プラン「Rakuten最強U-NEXT」を発表した。10月からの提供を予定しており、月額料金は税込4,378円。通信は無制限で、U-NEXTの動画見放題を同時に利用できる。
単体で契約するより安く、動画視聴の需要が高い層に向けたお得感を打ち出している。従来の「最強プラン」に動画サービスを追加する形で、家計負担が増える中でも利用者にメリットを示す狙いがある。
値上げと付加価値が並行する流れ
2025年の携帯業界では、料金の引き上げと同時に付加価値サービスの提供が進んだ。KDDIは通信品質を強化し、楽天モバイルは動画サービスとの抱き合わせを推進、ソフトバンクはY!mobileで割引制度と経済圏を拡大した。
これらの施策は、単純な値上げが消費者離れにつながることを避けるための工夫である。利用者は「どのサービスが自分にとって実質的なメリットになるか」を見極める必要がある局面に入り、価格だけでなく利用条件や生活習慣に応じた選択が重要になっている。
利用者が注目すべきポイント
-
動画サービス利用者:楽天モバイルのU-NEXTセットは、動画視聴が多い世帯にとって費用対効果が高い。
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通信エリア重視の利用者:KDDIが打ち出した通信品質改善策は、地方や山間部での利用者にとって大きなメリットになる。
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割引条件を活用する利用者:Y!mobileの新料金は名目上値上げだが、PayPayカードや光回線を組み合わせることで実質的な負担を抑えられる。
料金プラン選択の流れ
開始
↓
動画サービスを重視しますか?
→ はい → 楽天モバイル「Rakuten最強U-NEXT」へ
→ いいえ ↓
通信品質を最優先しますか?
→ はい → KDDI(au)の改定プランへ
→ いいえ ↓
割引条件を活用しますか?
→ はい → Y!mobileの「シンプル3」へ
→ いいえ → 現行プランの継続を検討
FAQ|携帯料金に関する疑問
Q1:2025年に値上げしたのはどの会社ですか?
A1:KDDIが既存プランを最大330円値上げし、Y!mobileも新料金で名目上の引き上げを行った。
Q2:楽天モバイルのU-NEXTセットはどのような内容ですか?
A2:通信無制限とU-NEXT見放題を組み合わせ、月額4,378円で提供される。
Q3:Y!mobileの値上げは家計にどのような影響がありますか?
A3:Sプランで最大693円、M・Lプランで143円値上げされるが、割引条件を満たせば実質的な負担は抑えられる。
Q4:値上げで利用者にメリットはあるのですか?
A4:通信品質の改善や付加価値サービスの提供に資金を充てることで、利便性の向上が期待される。
Q5:今後の料金動向はどうなりますか?
A5:各社は値下げ競争から脱却し、付加価値と組み合わせたプランを中心に展開していく流れが続く見込み。
総合要約表|携帯料金動向
「値下げ競争」から「付加価値競争」への移行
2025年の携帯市場は、「官製値下げ」から5年を経て大きな転換点を迎えた。料金は上昇傾向に転じたが、その背景にはコスト増加だけでなく、設備投資や新サービス拡充への資金需要がある。
KDDIは通信品質を訴え、楽天モバイルは動画需要を取り込み、Y!mobileは経済圏との連携を強めた。いずれも単なる価格競争を超えた戦略であり、利用者に提示するのは「値上げの代わりに得られる価値」だ。
利用者側にとっては、家計の負担感と利便性向上の両面を見極めることが重要となる。今後の携帯市場は「安さ」ではなく「条件付きのお得さ」を選び取る時代へと移り変わったといえる。