ブリヂストンが2025年度に国内で「ネクストキャリアサポートプログラム」による希望退職を実施。石橋CEOが「数百人規模」と明かした再編の最終章と、その背景を整理します。
ブリヂストンが2025年度に希望退職募集
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ブリヂストンは2025年度、国内の社員を対象に「ネクストキャリアサポートプログラム」と称する希望退職の募集を行った。石橋秀一CEOは利用者を「数百人のレベル」と述べ、従業員総数に占める割合は数パーセント程度にとどまる見通しだ。制度はキャリア形成の支援を目的とすると説明され、従来型の早期退職とは趣旨が異なるとされている。
希望退職募集の概要(2025年)
国内での希望退職募集と制度の位置づけ
今回の募集は「ネクストキャリアサポートプログラム」と名付けられ、2025年度に実施された。広報部はこの制度を「従業員のキャリア形成を支援するものであり、早期退職とは趣旨が異なる」と説明したと報じられている。
規模について、石橋CEOは利用者を「数百人のレベル」と明かした。ブリヂストン単体の従業員は2024年度時点で約1万4200人であり、仮に数百人が対象となっても全体の数パーセントにとどまる。大規模な人員削減というよりは、長期的な再編の総仕上げに近い性格を持つ。
この施策の背景には、事業の選択と集中を進める戦略がある。多角化部門は2019年度に売上高5883億円を計上していたが、営業利益はわずか1億円と収益性に課題があった。石橋CEOは2020年の就任以降、事業売却や子会社譲渡などを相次いで進めてきており、その一連の流れの中に今回の国内希望退職募集が位置付けられる。
2021年の主要事業売却と人員再編
ブリヂストンは2021年、非タイヤ分野の事業売却を相次いで発表した。化成品ソリューション事業は投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドに譲渡され、防振ゴム事業は中国の企業に売却された。両事業にはそれぞれ約4000人が従事しており、大規模な人員移管を伴った。
これらの売却は、収益を生まない多角化部門からの撤退を意味していた。当時の発表によれば、売上規模は大きくても利益はほとんど出ておらず、リソースをコア事業に集中させる方針が明確に打ち出された。2025年度の希望退職募集は、こうした過去の大規模再編に続く国内での人員整理の仕上げと位置づけられる。
2021年の事業売却と2025年の希望退職募集
年 | 施策 | 内容 | 人員規模 |
---|---|---|---|
2021年 | 事業売却(化成品・防振ゴム) | 不採算事業を外部へ譲渡 | 各約4000人規模 |
2025年 | 希望退職募集(国内) | キャリア形成支援を目的とした退職制度 | 数百人規模 |
この比較から分かるのは、2021年の売却は数千人規模の人員移管を伴う抜本的な再編だったのに対し、2025年の希望退職は規模は小さいが「総仕上げ」としての象徴的意味合いが強い点である。
5年超の再編と跳躍フェーズへの移行
石橋秀一CEOが2020年に就任してからの5年余り、ブリヂストンは事業売却や子会社の譲渡を通じて再編を続けてきた。2019年度時点で不採算だった多角化部門に切り込み、2021年には化成品ソリューション事業と防振ゴム事業を売却した。2025年には物流子会社の株式を大手物流企業に譲渡する発表を行っており、事業ポートフォリオの整理は大きな節目を迎えている。
こうした流れの中で、2025年度に実施された国内での希望退職募集は、経営改革の最終章と位置づけられる。規模自体は数百人と限定的だが、国内社員を対象にした点で象徴性がある。これまでの大規模な売却と並んで「跳躍フェーズ」への移行を示す施策となった。
2025年の物流子会社売却と再編の直近動向
2025年6月、ブリヂストンは物流子会社の株式をSBSホールディングスに譲渡すると発表した。譲渡比率は三分の二超に及び、物流部門の独立性を高めると同時に、グループ全体の効率化を狙った動きと位置づけられる。
この売却は、タイヤ事業を中心に据える戦略の一環として実施されたものである。同年に国内で希望退職を募集したことと併せると、2025年は同社にとって再編の総仕上げの年となった。
キャリア支援制度としての意義
今回の制度は「キャリア形成を支援する」と説明された。希望退職の一般的な印象とは異なり、自発的なキャリア転換の一助とされる点が特徴である。再就職やスキル活用の場を意識した制度設計であることが示されており、人材の新たな活躍を促す仕組みとして社会的にも注目される。
再編から希望退職募集までの流れ
↓
2021年 化成品ソリューション事業・防振ゴム事業を売却
↓
2025年6月 物流子会社の株式を譲渡
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2025年度 国内で数百人規模の希望退職募集を実施
FAQ:希望退職プログラムに関する疑問
Q1. 制度の名称は何か?
A1. ネクストキャリアサポートプログラムと呼ばれている。
Q2. 実施されたのはいつか?
A2. 2025年度に実施された。
Q3. 規模はどの程度か?
A3. 数百人規模と石橋CEOが述べた。
Q4. 全社員に占める割合は?
A4. 単体従業員数約1万4200人のうち、数パーセント程度にとどまる。
Q5. 過去の再編とはどう違うのか?
A5. 2021年の事業売却が数千人規模だったのに対し、2025年度の募集は国内社員が対象で規模は小さいが、総仕上げとしての意味を持つ。
ブリヂストンの再編と希望退職募集の全体像
年 | 出来事 | 意味 |
---|---|---|
2020年 | 石橋秀一CEOが就任 | 経営改革の出発点 |
2021年 | 化成品ソリューション事業、防振ゴム事業を売却 | 不採算部門からの撤退 |
2025年6月 | 物流子会社株式を譲渡 | グループ整理の加速 |
2025年度 | 国内で数百人規模の希望退職募集 | 最終章としての人員整理、跳躍フェーズへの移行 |
石橋CEOの改革が示す産業的意味
石橋CEOの下で続けられた5年超の改革は、非中核事業の売却や子会社の譲渡を通じて収益基盤を強化する狙いを持っていた。2025年度に国内社員を対象とした希望退職募集を実施したことは、その総仕上げといえる。
かつては多角化によって売上を拡大したものの、利益を確保できなかった部門が再編の対象となり、結果として事業の選択と集中が明確化した。希望退職の募集は、規模が大きいわけではないが、国内社員に直接的に関わる施策であり、これまでの大規模売却に並ぶ象徴的な意味を持つ。
産業全体にとっても、コア事業へと経営資源を集中させる戦略は広く共有されつつある。ブリヂストンの事例は、その典型として位置づけられる。改革の最終章を経て、同社がどのように「跳躍フェーズ」に入っていくのか、今後の展開が注目される。