
大阪府の意向調査で29市町村が特区民泊の新規申請を停止へ。大阪市も2026年5月末から申請停止の方針。集中と苦情増を受け、制度は新たな段階に。
大阪の特区民泊が転機に
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大阪府内で「特区民泊」と呼ばれる宿泊事業をめぐり、新規の受け付けを停止する動きが広がっている。府が実施した意向調査で、対象34市町村のうち29が「新規申請を取りやめる」と回答した。さらに大阪市も、来年5月末から新たな申請を停止する方針を示しており、府域全体で制度の見直しが進む見通しだ。
大阪府と大阪市で進む「特区民泊」新規停止の動き
大阪府「意向調査」と29市町村の停止方針(2025年)
大阪府は2025年9月、国家戦略特区を活用した民泊制度の運用について、府内34市町村を対象に意向調査を行った。結果は明確だった。29の自治体が「新規申請の受け付けを取りやめる」と回答し、そのうち27市町村は全域での停止を選択した。守口市と門真市は住居系地域での新規申請を受け付けない方針に転じた。
一方、「これまで通り」としたのは貝塚市、泉佐野市、羽曳野市の3市。河内長野市は実施区域を狭めて継続する姿勢を示し、交野市は当初から制度を導入していない。大阪府の資料では、すでに認定を受けている施設について「従前どおり実施」と注記され、既存事業者の営業継続に支障は生じないとされている。
こうした動きの背景には、大阪市を中心に集中した施設の運用トラブルがある。大阪市内では、全国の特区民泊施設の9割以上が立地し、近年は騒音やごみ出しなどの苦情が増加。府全体で制度を見直す機運が高まっている。
大阪市も「来年5月末」から新規申請を停止へ
大阪市は、特区民泊の新規申請を2026年5月末から受け付けない方針を示した。報道によれば、苦情の増加を受けて市が対応を強化する一環であり、既存の営業施設は継続が可能とされている。大阪市は、特区民泊制度が集中している地域において、地域トラブルの解消と生活環境の改善を優先する姿勢を明確にした。
この方針は府内の他の自治体にも波及し、中核市である八尾市や寝屋川市も新規受付を終了する意向を示している。府内の多くの自治体で、制度全体の「一時停止」に近い状況となっており、民泊新法や旅館業法への転換を検討する事業者も増えている。
府内自治体の区分と対応状況(2025年公表)
この動きにより、大阪府全体では特区民泊制度の新規申請が大幅に制限される見込みだ。制度の目的だった「訪日客受け入れの柔軟化」は一段落し、今後は生活環境との調和を図る方向に転じつつある。
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大阪市の新規申請停止方針と苦情増加の背景
大阪市が2026年5月末から特区民泊の新規申請を停止する方針を示した背景には、地域社会との摩擦がある。市内の施設数は全国の9割以上を占め、近隣住民からの苦情件数も増加傾向にある。報道では、騒音や深夜の出入り、ゴミ出しのルール違反といった通報が3年間でおよそ4倍に増えたとされる。
市はこうした問題を受け、生活環境の保全を優先し、事業者への指導を強化する方向へ転じた。制度そのものを廃止するのではなく、まず「新規受付を止める」ことで既存の運営状況を精査し、改善策を検討するのが狙いだ。
中核市や周辺地域の動きが示す制度転換の兆し
大阪市の決定に歩調を合わせるように、八尾市や寝屋川市も新規申請の受け付けを終える方向を示した。八尾市は、市の公式資料で「新規申請の全面停止を前提に国と協議を進める」と公表しており、特区民泊制度の段階的縮小が現実味を帯びている。
また、河内長野市では制度の継続を表明しつつも、住居系地域を対象外とする独自規制の強化案を公表した。地域ごとに異なるルールを設けることで、観光需要と生活環境の両立を図ろうという狙いがある。府内では制度の「柔軟化」と「制限強化」が同時に進む過渡期に入っている。
事業者・住民・自治体、それぞれの立場から見た課題
特区民泊制度は、訪日観光客の受け皿を増やす目的で始まったが、地域によって受け止め方は異なる。
事業者にとっては、制度の停止が新規参入の抑制につながる一方、既存施設の信頼を高める契機にもなる。
住民は、生活環境の悪化を防ぐ措置として歓迎する声が多く、ルールが明確化されることを求めている。
自治体は、観光振興と地域安定のバランスを取る難しさに直面しており、今後の運用方針が注目される。
事業者が取るべき対応の流れ
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現状確認
自社施設が特区民泊制度に基づく営業かを確認する。 -
新規申請の可否判断
申請受付が可能な自治体であれば準備を進める。不可の場合は他制度(民泊新法・旅館業法)を検討する。 -
既存施設の対応
「従前どおり」運用できるが、苦情防止策(ゴミ出し・騒音・宿泊者管理)の徹底が求められる。 -
地域協議・調整
管理組合・近隣住民と情報を共有し、トラブル防止を図る。 -
長期運営計画の見直し
規制強化の動きを踏まえ、事業計画や運営モデルを再評価する。
FAQ:特区民泊の制度と今回の動きに関する質問
Q1:大阪市ではいつから新規申請ができなくなりますか?
A1:大阪市は2026年5月末から特区民泊の新規申請を停止する方針を示しています(報道:2025年10月)。
Q2:すでに認定を受けている施設は営業を続けられますか?
A2:大阪府の意向調査資料には「既存施設は従前どおり」と明記されており、運営の継続は可能です。
Q3:八尾市や寝屋川市も同じように停止しますか?
A3:八尾市は新規申請の全面停止を前提に国と協議を進めると公表しており、寝屋川市も終了の意向を示しています。
Q4:特区民泊と民泊新法の違いは何ですか?
A4:特区民泊は国家戦略特区を活用した旅館業法の特例で、営業日数の制限がありません。民泊新法(住宅宿泊事業法)は年間180日以内の営業制限があります。
Q5:今後、新たに民泊を始めたい場合はどうすればいいですか?
A5:自治体ごとの制度運用を確認し、旅館業許可や住宅宿泊事業の登録など別制度を検討することが必要です。
大阪府・大阪市の動向と制度の今後
制度の成熟が問われる「特区民泊」運営の分岐点
大阪府と大阪市の決定は、単なる一時的な規制強化ではなく、制度の成熟を促す転機として位置づけられる。特区民泊は訪日観光の急増期を背景に拡大してきたが、地域生活との摩擦が放置されれば、観光の持続性を損なう。
今回の一連の動きは、各自治体が「どこまで民泊を受け入れるか」を改めて考える契機になったといえる。大阪市のように新規を一時停止し、既存施設の運用改善を進める形は、制度を維持しながら社会的受容性を高める現実的な手法だ。
制度の目的が「地域と観光の共存」にある以上、事業者には運営品質を、行政には適正な管理体制を、住民には理解と協力を求める段階に入っている。特区民泊の将来は、数の拡大ではなく、地域に根ざした信頼の積み重ねの上にこそ築かれる。
