ACLエリートの新時代、川崎Fは欧州スター集うアル・アハリに挑んだ。敗れはしたが、終盤の猛攻、伊藤達哉の存在感、そしてピッチに残された涙は、確かにこの大会に“心の物語”を刻んだ。未来への一歩を感じさせた一戦。
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試合終了の笛が鳴った瞬間、川崎フロンターレの選手たちはその場に崩れた。
ACLエリート決勝、0−2の現実を前に、声もなく涙を流した。
完全アウェイ、中2日での3連戦。対するは、欧州の名手を揃えたアル・アハリ。
それでも彼らは、確かに90分間を闘いきった。心で闘い、姿勢で示し続けた。
✅ 見出し | 要点 |
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▶ 試合概要 | ACLエリート決勝で川崎Fはアル・アハリに0−2で敗れ準優勝 |
▶ 主な要因 | 強豪との一発勝負、中2日、アウェイの条件下での試合 |
▶ 見どころ | 伊藤達哉ら若手の奮闘と攻撃意欲、終盤の猛攻 |
▶ 感情軸 | 終了後、泣き崩れる選手たちの姿が感動を呼んだ |
なぜ敗戦が注目されたのか?
川崎FのACL準優勝は、単なる結果以上の意味を帯びていた。
それは、「期待」と「逆境」が交差する地点で生まれた熱量だった。
キング・アブドゥラー・スポーツシティという完全アウェイの地。
3試合目となるこの決勝に向け、彼らはC・ロナウド擁するアル・ナスルを打ち破ってきた。
体力も戦術も限界に近い中で、なお勝利を狙い、前を向いていた。
フィルミーノ、ケシエ、ガレーノ――世界を知る選手たちが立ちはだかる中で、
川崎Fは崩れず、焦らず、粘り強く戦い続けた。
後半、ボールは川崎Fの足元にあった。
伊藤達哉の鋭いミドル、際の積極的な仕掛け、山田の前への推進。
流れは確かに引き寄せていたが、ゴールという一点だけが遠かった。
采配も、細部まで神経が通っていた。
三浦の負傷に際の緊急投入。エリソンを下げ、山田を前線に置く決断。
家長と山本の交代によりテンポは加速し、終盤には山内が中盤の潤滑油となった。
攻める、走る、崩す――それでもゴールネットは揺れなかった。
得点を奪われた後も、川崎Fのラインは乱れなかった。
フィルミーノのゴール直後、涙をこらえた三浦がベンチで仲間を見つめ続けていた。
その姿がスクリーンに映し出されると、観客席からは拍手が送られた。
ゴールが遠い時間が続いた。それでも誰ひとり、歩く者はいなかった。
交代選手もベンチも、声を切らすことなく最後の一瞬まで鼓舞し続けた。
ACLエリートとは何か? 今大会の特殊性は?
ACLエリート――その響きの裏側には、大会の“変質”があった。
2024年から導入されたこの形式では、ベスト8以降がすべてサウジ開催。
「ファイナルズ」という言葉に置き換えられたそれは、
ホームアンドアウェイという均衡の原則を打ち破る一発勝負へと姿を変えていた。
資本の論理が導く大会――それは、間違いなくサッカーの未来像のひとつでもある。
だが、そこに適応できるかどうかは、選手の質だけでは語れない。
アル・ナスルにロナウド、アル・アハリにフィルミーノとケシエ。
名のある選手たちが集うサウジ勢の存在感は、想像以上だった。
その中で、川崎Fが示した「組織」と「積み上げ」は、むしろ異質だった。
今大会で川崎が示したのは、
資金力やスター性に頼らない戦い方が、一定の成果を上げ得るという証左だ。
ただし、それには代償も伴う。3連戦、中2日、回復の猶予なき舞台。
それが“制度としての勝敗”を分けた一因であったことも否めない。
AFCの新方針である「エリートカテゴリー」は、2024年から正式導入された制度だ。
目的は“アジア版チャンピオンズリーグ”の確立。
商業性と集客を高めるため、サウジをホストとする集中方式が採用された。
だが、各国クラブの体制や予算には開きがあり、今後の公平性が問われている。
Jリーグ勢の移動距離・準備期間と比べ、サウジ勢の地の利は否定できない。
この点を巡っては、AFC理事会でも改善案が議論されている。
川崎Fの今後に何を期待すべきか?
伊藤達哉は、迷わず撃った。
左足で、右足で、わずかに外れた2本のシュート。
だが、そこにこそ未来はあった。
家長がベンチに下がった後も、前への推進は止まらなかった。
際が左サイドをえぐり、山田が縦へ走る。中盤には大関と山内がリズムを生んだ。
若手の名前が、しっかりと記録に刻まれていく。
敗戦の先にあるもの。それは「結果」ではなく「継承」である。
ACLが変わるならば、Jリーグもまた変わらなければならない。
涙の敗戦とサウジマネー時代の入口
資本は、強い。
それを否定はしない。フィルミーノが笑えば、スタジアムは歓声に包まれる。
だが、歓声の裏側で、ひとつの涙が流れた。
川崎Fの敗戦は、「金で勝った」対「心で闘った」という単純な図式に還元できない。
むしろ、“心で闘った”ことが、今は勝利に届かないという冷酷さがあった。
だが、それでも立ち上がる選手たちがいる。
この構図の中で、再び挑む意思を持つ者たちがいる。
ならば我々は、次の試合もまた見たくなる。
敗戦とは、何かを終わらせるのではなく、始めるものなのだ。
FAQ
Q1. ACLエリートとは何ですか?
→ 2024年から始まった新制度で、従来のACLから選抜された上位大会。ファイナルズ形式でベスト8以降をサウジアラビアで実施。
Q2. 川崎フロンターレはACLでどれくらい実績があるの?
→ 過去最高はベスト4。今回の準優勝が歴代最高成績。
Q3. サウジ勢が強いのはなぜ?
→ 欧州のスター選手を高額年俸で招き、戦力が強化されているため。
Q4. 今後ACLエリートはどうなる?
→ 複数開催国方式や日程改善が検討されており、Jリーグ勢の戦い方にも影響があると見られている。
Q5. 伊藤達哉とはどんな選手?
→ 途中出場で2本の決定機を生んだアタッカー。今大会で評価を大きく高めた。